中央公論社から発行された大船撮影所前で長年に渡って(昭和11年から48年までの37年間)経営されていた山本若菜という人の思い出話です。
彼女の父がサラリーマンを辞めて始めた食堂だそうで、松竹の監督、女優、男優さんがたくさんでてきます。
最初、図書館で借りましたが、あまりにも面白いので古本の単行本を購入しました。
え?
と思ったのは佐野周二はいつも若菜さんのお尻を触って入ってくるのだそうです。
川島雄三監督も一時その食堂の2階に間借りしていて、その時に今村昌平がやはり部屋を貸してほしいと言ってきたそうです。断ってもずかずかと2階に上がり、とうとう妹の部屋に居候。
また若菜さんは織田作が嫌いだったそうです。
戦前戦後を通して、監督や女優さんを間近に見て来た人のお話は興味深いですね。
絶版になっていたそうですが、2000年に文庫が発売されました。
単行本にしようか文庫にしようか迷いましたが、やはり単行本にしたのはもっぱら活字が大きいから(笑。
しかし、撮影所の人、お金払わないのですね・・・。彼女はいつもそのことで資金繰りに苦しんでいます。昭和48年にやめる時のことは最初の「はしがきにかえて」に書いてあります。撮影所も小さくなるし、幸いその土地を買ってくれるデベロッパーの存在と借金がなくなったことで彼女は母親と自分の行く末を考えます。
これは廃業して10年ほど経ったときに書かれたエッセイをまとめた本です。
それにしてもよく覚えているものだと感心しました。
ただ彼女が語ったことを婦人公論のライターが書いたのではと思います。