日本映画1920-1960年代の備忘録

1920年代の無声映画から1960年代前半の日本映画

洲崎パラダイス赤信号  1956年 日活

監督 川島雄三 脚本 井出俊郎 寺田信義 原作 芝木好子

出演 新珠三千代 轟夕起子 三橋達也 河津清三郎 芦川いづみ 田中筆子 

   植村謙二郎 小沢昭一 山田禅二 芝あをみ 牧真介 桂典子

 

6月4日まで日活のユーチューブチャンネルで無料公開している。

私はDVDをもっているが、昨夜みて映像が格段に良くなっていることに驚いた。

私のもHDリマスター版なんだけれど・・、アマゾンでの購入履歴が2012年となっているから8年も前に買ったんだ。

 

川島雄三というと「幕末太陽伝」 が有名だけれど、私はこの「洲崎パラダイス赤信号」が最高峰だと思っている。

好きすぎて(笑、芝木好子の原作も読んだ。

原作通りではなくて全く同じなのは登場人物の名前のみ。

映画と原作とどちらが好きかと訊かれたら、映画と答える。

 

さらに洲崎(東陽町)まで行って写真に収めた。でもそれは一眼レフで撮ったもので、だからDVDを買ったのは8年前だけれど、それより前1990年?頃にBS放送(wowwow)で観て感動し(もちろんビデオで録画も)、その後行ったんだと思う。

 

当時、この映画の登場人物で知っていたのは新珠三千代三橋達也くらいで三橋達也はテレビでも活躍していた中年男性だった(印象)けれどキザ?な役が多くて私は興味なかった。

だけれど、この映画を観て見方が変わった。

新珠三千代は私が小学生の時のテレビドラマ、細腕繁盛記で富士真奈美からいじめられるが耐える女のイメージしかない新珠が勝気で三橋を翻弄しさらに河津といい仲になり・・の役柄にはビックリしたが、その演技がぴったりはまっていてこんな役もしていたんだと思った。

 

轟夕起子はこの映画で初めて見て、古い邦画を見るようになってからはおなじみの顔だけれど赤線の橋のたもとで飲み屋を営む女、二人の幼い息子を抱え、女と逃げた亭主の帰りを待っている・・・役をこれまたうまく演じている。

 

轟の夫の植村謙二郎もこの映画が初見だったけれど、セリフが棒読み一歩手前(笑であんまりうまくなかった。

「稲妻」のほうがまだ良かったけれど、褒めるほどでもない。

ただ、稲妻は1952年だけどこれは1956年だから・・上達しててもいいはずなのだが(笑。

 

河津清三郎は役にピッタリ。神田のラジオ商で小金持ち、赤線にスク―ターで通う中年男。雨の夜、新珠と寿司屋で飲んで弁天座という旅役者一座の小屋で2本煙草に火をつけて(それも酔っ払いながら)新珠に渡すしぐさなんてすごい。

 

田中筆子はどこかで観たことがある人だとはおもったけれど、この映画で初めて名前を知った。

「こんな若い子の隣に座らせられて客を取らなきゃならない私の身になってよ・・」

などと、これも酔っぱらって愚痴をこぼす赤線の年増を演じていたがうまかった。

こんな人、いるかもね・・・と思わせるところ。

 

山田禅二の「娘とおなじような年の女、はるみ にうつつをぬかして通ってくる」(徳子弁=轟夕起子)大工?のちょい役だけれどこの映画でやはり初めて知った。

幕末太陽伝でもちょっとでてくる。

 

小沢昭一はそばや「だまされ屋」の出前持ち、三橋達也に先輩面して教える時に肩をちょっといからす具合とか、三橋の愛人、新珠を見かけると「ドナルドダッグ」のマネする音を口にして、あーこんな人、その当時いそうだようね!感満載でこれも最高(笑。

 

ロケーションとセットでの映像がうまく組み合わされていてその切り替えもうまいし、

新珠が「千草」の2階から川をみる場面での光の使い方も最高。

新珠のペラペラな着物からパトロンとなった河津に日本橋で(多分三越?)で買わせた着物とのコントラストも良い。

グチャグチャな髪形からセットして女っぷりがあがったところとか(笑。

 

かなり映像がきれいだったので「千草」の壁に貼ってあったカレンダーの月がクリアに見えた。

私はこの映画は梅雨の最中(6月)に始まり、梅雨が明けた夏(7月末)までの期間だろうと思っていたが、新珠と三橋が千草に転がり込んだのはカレンダーだと5月だった。

 

だから最初の勝鬨橋の場面から新珠が三橋を捨てて?神田の河津が借りたアパートへ去るのは5月の梅雨前?で、その後三橋が真面目に働くようになり、轟の夫が追いかけて来た元愛人に刺されて殺されてしまうのは梅雨の真っただ中・・ということか。

その晩、やはり三橋を忘れられずに洲崎に来た新珠は派出所で泣き崩れる轟と介抱する三橋をみつけ・・・新珠の表情がここでも最高で(笑、

 

場面は切り替わり晴天のなか店の横の貸しボートの通路で轟の子供たちとその友達がチャンバラごっこをしている。殺された父に買ってもらったおもちゃの刀。

明らかに梅雨明け。

見せには河津が来ている。

「あんたもたいへんだったね。でも元から帰ってこなかったと思えばきが楽になる。

・・・・ところで・・・」と新珠が来なかったか?と轟に聞く。

この間がやはり最高でとりあえず轟を思いやっているようなことを言うが実は新珠の行方を聞きに来てる感がわかってこれだけのセリフでこんな感じをだせるのはすごい。(笑

 

子猫をだいた大阪弁若い女が「女中入用」の張り紙をみて千草に入ってくる。

桂典子という人らしいが、なんと新珠の実妹だというwikiより。

最初、千草の出入りする若いトラック運転手が毎日通って他の客をとられないようにして千草に就職口を頼みにきた時に一緒にきた女性かと思ったけれど、どちらだかわからない。ツイッターのあがっている新珠と一緒の写真をみてもどちらだかわからない。

どなたか教えてください(笑。

衆議院議員小宮山泰子氏の母親だが、ツイッターの写真、確かに娘に似ている。

娘より細いが(笑。

 

「またくる」と言って河津が去る。「ほんとうにまた来るかどうかわからない」とあるのは芝木好子の小説だが、ここではそのことは描かれていない。

 

子供が泥だらけで泣きながら裏からきて「とうちゃんに買ってもらった刀を川に流しちゃった」と言いに来る。世話をやく轟。

 

洲崎橋では芦川いづみが物思いにふける。彼女はそばやの店員だが、なにかと三橋の世話を焼き(多分)好きだったのだろう。その下を流れる川を子供の刀が流れていく。

 

勝鬨橋。新珠と三橋はまたふたりで逃げて来た。

「どこいく?」「次はあんたが決めてよ。あんたの行くところならどこにでもついて行くから・・・」と新珠。

二人の足元がうつされる。ぼろい靴の男と素足に下駄ばきの女。

 

今度は反対方面(銀座?)へ行くバスに飛び乗るふたり・・。

 

毎年、この時期(雨が多くなり梅雨まじか)になると観たくなる映画です。

雰囲気最高です。

 

https://www.youtube.com/watch?v=HFnkAW9TcTo&t=3s