日本映画1920-1960年代の備忘録

1920年代の無声映画から1960年代前半の日本映画

洲崎パラダイス赤信号 追記 1956年 日活

無料でみられるのも本日まで。

好きすぎるので(笑 昨日は2回見てしまった・・。今日は夕方に一度、今夜またもう一度みます・・。

 

とにかくこの映画は今の時期にみるのが良いです。季節が同じでしとしと雨が降り出したり、雲が重く垂れこめてたり・・・。

 

今回はびっくりしたところとか疑問点とか謎なところを覚書として書きます。

 

最初のシーン。

確か芝木好子の小説の書き出しは「宿屋の払いを終えると・・・」かなんかだった。

原本がないのでなんともいえないけれど。

 

蔦枝(新珠三千代)がタバコを買いおつりをもらう。受け渡しの手しか映っていない。

よろよろ(笑 のお札をだして硬貨のおつりを一枚づつ手に収める。

100円札?なのだろうか。

 

そして義治(三橋達也)が待つ勝鬨橋上だが、なんとあの晴海通りを横断するのだ!

トラックや車が行きかう大通りをペラペラの着物を着た蔦枝が渡るシーンはどうやって撮ったのだろうか?朝早いロケ?

 

煙草を渡すと蔦枝がどこか行くあてはないかと尋ねるが、義治はそんなあてがあったらこんなところにはいないという。

「どうせ俺なんか死んじゃえばいいんだ」という義治に「二言目には死ぬ死ぬって、人間死ぬまで生きるのに。」という蔦枝に「どこへでも好きな所へ行けばよい」という。

 

それを聞いた蔦枝、橋の欄干に肩ひじついた顔を義治のほうへ向け、「ほんとに?」

と言うが、その時の蔦枝の顔が良い。というか新珠三千代の顔の演技がすばらしい!

意地悪く、冷笑している顔。

 

「じゃ。」と言って歩き出す蔦枝をみた義治が急に弱気な頼りない男になるところも良い。

 

北砂町行きのバスの飛び乗り(画像がクリアでバス停の字がよく見えた)、蔦枝は混雑しているバス内を人を押し分け後ろのほうへ行く。草野球?の帰りなのか二人の男性が話している間に割り込み座る蔦枝。

おどおどする義治。

 

洲崎弁天町で突然バスを降りる蔦枝、どんどん歩く蔦枝の後を追う義治。

「洲崎パラダイス」という大きなアーチの看板の橋の袂で立ち止まる。

蔦枝の表情が見事。

 

「あんただってここがどんなところだが知ってんでしょ?」という蔦枝に

「そんなところへ行くとまた元のおまえに戻ってしまうじゃないか」

という義治のセリフで蔦枝の過去がわかる。

 

日も暮れかけ、雲が垂れ込めた橋の袂に立つ蔦枝、義治は疲れて座り込んでしまう。

 

ふと蔦枝が目をやった視線の先には「女中入用」の張り紙をした古びた小さな飲み屋「千草」があって、おかみさんの徳子(轟夕起子)がちょうど外の明かりをつけ、店に引っ込むところだった。

「お昼も食べてなかった・・」と独り言のように蔦枝は言って、フラフラと千草へ入る。

「いらっしゃい、何あげます?」と徳子に聞かれ、

「そうねぇ・・・おビールもらおうかしら?」とずるがしこい顔をしながら言う蔦枝に

お金もないのにビールを頼むことにびっくりする義治だ。

 

徳子にふたりで働けるようなところはないか、私達、今夜行くところもないという蔦枝に徳子が「ふたり一緒じゃね」というと口についたビールの泡をふきながら蔦枝が「別々ならあるんですか?」と訊く。徳子が「うちもいることはいるんだけど・・・」といって奥の台所へ引っ込むとそれを追って蔦枝が私を使って欲しいと頼む。

徳子は「突然そんなこと言われても・・・こんな店でも2日か3日に一度使ってくれっていうこが来るけれど長続きしない」という。

蔦枝の「なぜ?」という疑問に徳子が「みんなあの特飲街への足掛かりでくるから」

というと、笑いながら「それなら心配ない。だってあんなやっかいな男(ヒトと読んでください 笑)と一緒なんだから。」と言う。

それを聞いてカウンターでひとりムっとする義治。

 

女のほうが図々しくて生活力旺盛、生命力旺盛(笑。

 

芝木好子の小説では徳子は冷たい、ちょっと意地悪な女性だったけれど、轟夕起子扮するこの映画の徳子は轟のふっくらした外見?もあって人の好いおばさん・・(失礼)風だ。私はこの映画をみてから小説を読んだので映画のイメージが強く心に残っていて小説のほうは想像が膨らまなかった。小説だと徳子の外見は細い?記憶がある。

 

徳子が義治に前は何をしていたのか聞くと、蔦枝がそれを引き取って「帳付けなんですよ、木場あたりにそんな仕事ないでしょうか?」という。

義治は無言で皿のピーナツ?柿ピーだかを手にとるほうに気を取られていると突然蔦枝が「あんたもおかみさんにお願いしなさい!」と義治の手を叩く。義治の手からピーナツ?柿ピーがこぼれてばらまかれる・・・という演出も最高!(笑。

 

大人三人がそんな話をしているところへ徳子の息子ふたりが帰ってくる場面がある。

この息子ふたりは観ているほうが飽きないようにうまいところで登場する。

最初はお腹をすかせて帰ってきて、蔦枝と話している場面が少し中断される。

「今日のごはん、なぁに?」と訊く息子。

「と ろ ろ」と答える徳子。

徳子には息子がふたりいるとここでわかる。

 

松竹の某大監督(笑 だと観客を笑わせよう、笑わせよう、あるいは泣かせよう泣かせようという意図がすごくてやたらと役者にオーバーな演技をさせたりするが、

見習ってほしい(笑。

 

続く・・(え。