日本映画1920-1960年代の備忘録

1920年代の無声映画から1960年代前半の日本映画

にあんちゃん 1959年 日活

監督 今村昌平 脚本 今村昌平 池田一朗 原作 安本末子

出演 長門裕之 吉行和子 二谷英明 穂積隆信 松尾嘉代 小沢昭一

   北林谷栄 沖村武(子役) 前田暁子(子役)大滝秀二 芦田伸介

   殿山泰司 西村晃 山内明 浜村純 山岡久乃 賀原夏子

 

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文部大臣賞を受賞したこの映画、なぜか今村昌平は健全な映画を撮ってしまったと反省したという(笑。

私は今村昌平監督のなかでこの映画が一番、二番目は豚と軍艦だと思うのだが。

 

炭鉱で暮らす4人兄妹の物語。原作の本は読んだことはないけれど、日記に忠実でありつつ、炭鉱の労働争議問題などかちりばめられていてすごーくよくできていると思う。

極貧の兄妹たちの泣く場面はあまりないが、思わず泣いてしまう。

過去に2,3度見たけれど、アマゾンプライムで無料視聴♪再び。

 

子役選びもよくて、特に末子役の女の子が素朴ででもちゃんと演技していてそして不自然じゃない。にあんちゃん役の男の子も最高。そして長女の松尾嘉代の初々しいこと。

なんとこの映画がデビュー作だという。

 

だが、今回一番印象的だったのが末子の通う小学校の担任の先生の穂積隆信

 

吉行和子の一本気でいつもプリプリ怒っている保健師とは対照的で、のんびり飄々としているが、炭鉱の人々のことをよく知っている。

 

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なんばまた怒っとるのですか?と吉行和子に問いかける穂積。

 

末子が学校を休み始めたのは、教科書を買うお金がなかったからだが、吉行和子は身体の具合が悪いという末子を医者に診せる。医者はなんでもないというがそれでも食い下がる吉行。診察を終えた待合室で、穂積扮する先生が、末子に教科書を渡す・・・学校に来るんだよというとにっこり笑ってうなずく末子。穂積は末子が学校を休んだ理由をちゃんと知っていた。吉行が診察室からでてきてそれに気づく・・・。

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末子に教科書を渡し明日から学校へ来れるなという穂積。

このシーン忘れられないくらい感動した(笑。

 

ある晩、吉行を来週の水曜に遊びに行かないかと誘う穂積だが体よく断られる。

吉行には婚約者がいる。

結局吉行は島を離れ、結婚することになるのだがその引っ越しを手伝う穂積。

フラれてしつこいわけでもなく、唐津には誰と行くのです?と吉行に聞かれるが行かないとフラれたことを普通に認める穂積(笑。

 

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吉行の引っ越し荷物を船に乗せ、別れをいう

子供の描き方もよくて 

子供達が預けられた家を飛び出し、島へ帰る途中、農業用?のため池で水遊びをする。

子供だから思わず遊んでしまう・・なんて場面も自然で良かった。

 

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水を飲んだ後、おもしろくなって水に飛び込む兄妹

 

 

 

ところどころシリアスな話とおもしろい話が混ざっていてとにかく飽きない。

 

ところで今村昌平のDVDは「豚と軍艦」以外、案外と高値で、このDVDも(もちろん中古)で3万円(安くて 笑)、高いと10万円超えで売っていた。当然買えない(笑。

DVDコレクションもでているがそれも高値で、今村昌平の映画は万人向きではないからあまり売れないせいか時間が経つとそれがかえって希少価値となるなぁ・・。

 

大滝秀二はどこで出ているのかと思ったら、にあんちゃんが夏休みにさかな運びをしたところの主人役で、賃金を渡す場面で登場したのだがその時は気づかなかった。

 

今村昌平 ナンバーワン映画=にあんちゃん

川島雄三          洲崎パラダイス赤信号

 

なにかのインタビューで今村昌平が一番参考にした?か教えられた?かの監督をきかれ

なぜか小津安二郎と答えた記事を読んだけれど、え?川島雄三じゃなくて?と思った。

あれは今村昌平のブラックジョークなのか・・・。

 

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にあんちゃん