日本映画1920-1960年代の備忘録

1920年代の無声映画から1960年代前半の日本映画

母 1963年 近代映画社

監督 新藤兼人 脚本 新藤兼人

出演 乙羽信子 杉村春子 殿山泰司 小川真由美 高橋幸治 宮口精二 佐藤慶

   加藤武

 

逆境の中、愛に目覚めた女の物語・・・らしいが、杉村春子の乳房(もちろん代わりの人だろうが)アップは必要だったのか?(笑。

この乳房アップで、私は乙羽の母を演じた杉村春子の男性関係でもあるのかと思ったが

メインは乙羽の2番目の夫の息子の突然の病を軸にした母の愛の話だった。

それと共に弟で大学生だったが、なぜか大学を辞めて姉のため?にバーで働く高橋幸二。シスコン気味なのだが苦しい家計のなか大学に行かせている杉村春子にはどうも反抗的。どうして大学を辞めたのか・・・勝手に想像して・・みたいな(笑。

 

そもそも、100分越えの映画だけれど、回想シーンが長いのでもっと短くできると思う。弟が疎開先で姉の乙羽に意地悪をするのだが、それは姉が好きだからこそ・・のようだ。その時の乙羽は女学生姿だったが、違和感がなかった。

 

舞台は広島なので原爆ドームがでてくる。今と違って周囲の柵は厳重ではなくて弟が原爆ドーム内部で喧嘩するシーンはセットなのかロケなのかわからないが普通に入れたような感じ。

 

物語

一度目の夫の戦死で実家に戻った乙羽は2度目の夫と出会い息子を生んだが、その夫は働かず女を作って乙羽は子供を連れて実家へ戻った。実家の母は警察官の妻だったが

その夫が警察官の地位を捨てて別の女と今は九州に住んでおり、実家といっても海沿いの一間か二間きりの粗末な家だ。

長男は他で家をもち、弟は大学生。

ある日、乙羽の子供が病に倒れる。岡山の先生に手術してもらえれば助かるかもしれないと母に借金を申し込むが、断られる。逆に母はもういちど嫁に行って夫となった人に出してもらえと勝手に乙羽の結婚をすすめる。それが朝鮮人殿山泰司で娘が一人いて妻は出て行ってしまった男だ。家で細々と印刷?工場?をやっている。

息子が助かるならと嫁に行った乙羽だが、どうしても夫を好きになれないのだ。

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乙羽信子杉村春子

しかし、手術代などで30万円のお金をだしてもらった乙羽。息子の目がまた見えなくなり、今度は手術もできず、医者からは好きなことをやらせなさいと言われてしまう。

ずっと学校へ行けなかった息子のために盲学校へ入学させる。夫、殿山泰司はそんな時でも優しく送り迎えをしたり、乙羽が息子を迎えに行くために車の運転の練習をさせたりするのだ。

息子がオルガンを欲しいと言い出すが、これ以上金銭的に迷惑を掛けられないと思った乙羽は実家の母に借金を申し込むがまた冷たく拒否される。

それを聞いた弟は大学を辞めてバーに勤め、そこのマダム、小川真由美といい仲になる。そしてお金を借りてその金を姉に渡すのだ。

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小川真由美

喜び勇んでオルガンを買い、家で喧嘩をしないで交代で弾くのよ・・と子供達にいう乙羽。一緒に歌を歌う。そこへ殿山が帰ってくる。オルガンをみて事情を聞く。乙羽は勝手に買ってすみませんと謝るが、殿山は良かったなぁと子供に言うのだ。

 

だんだん殿山の愛情に気づく乙羽。

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点字を読む

 

弟がバーへ行くと小川との関係がばれたのか小川の男(ヤクザ?)に殴られる。

夜、弟がバーに忍び込むと2階で小川と男が寝ている。そして男を包丁で刺し殺すのだが、弟も返り討ちにあって死んでしまう。

・・・なんで弟が男を殺そうとしたのかもいまいち不明・・・。

 

遺骨をもって嘆く母・・・

って、いうか殺人者だよね?弟も・・・それ警察で問題にならなかったのか謎。

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高橋幸治

 

そして乙羽の息子も死んでしまう。

 

乙羽は殿山との子供を身ごもる・・・。

「私ができるのは子供を産むことだ」

え・・・(笑。

時代を感じる。じゃぁ子供を産まない女はなんなんだ?と今は炎上必死。

 

ただ殿山泰司杉村春子の演技は素晴らしい。

でもこの脚本はねぇ・・・溝口健二なら絶対ボツです(笑。