日本映画1920-1960年代の備忘録

1920年代の無声映画から1960年代前半の日本映画

一輪咲いても花は花 葛西善蔵とおせい 古川智映子  2003年 津軽書房

いつだったか日経新聞の文学散歩で葛西善蔵が紹介されていた。

小説が書けない、書けないと言って酒ばかり飲んでいた作家であるという。

あまりにも真剣に?書こうとしていたので?長編は書けず、結局短編ばかり残したらしいが、彼が鎌倉の下宿先の寺にいた時、そこへ3食賄いの料理を運んだ寺の門前にあった茶屋の娘との出来事を書いた「おせい」のことも少し紹介されていた。

すでに著作権外らしく、アマゾンで無料で読める。

 

私はその「おせい」のモデルとなったハナという女性のことを知りたいと思い、検索するとこの本に行き当たった。

早速、図書館で予約。

 

ノンフィクションってやはり面白い。そういえば高峰秀子も小説よりノンフィクションが好きだったらしい。(斎藤明美氏の本で)なんだかわかる気がする。若い頃は小説をたくさん読んだが、今はなにを読んでも「結局 作り事 笑」ただ、古い邦画を見るようになってその映画の原作本は読む。これは映画と原作の違いを思いながら読むのでおもしろい。それだけだ((;^_^A

 

びっくりなのは、ハナのほうが積極的だったこと。

そして、どんな目に合っても葛西を愛していたこと。

す、す、す、すごい。

 

葛西善蔵昭和3年、わずか41歳で没するが、死に際はみんなに囲まれ大往生!

へー、稼ぎ以上にお酒を飲んで、妻子に迷惑をかけ、その義理の父にも自分の借金のしりぬぐいをさせて、あげくに愛人をつくってさらに子供もつくった 男が布団の上で死ねたんだ(笑。

 

この本には葛西の本妻のこともしばし出てくるが、なんだかやっぱり可哀そうです。

いくら葛西の書く小説など興味がなかったからと言っても青森で子供を育て上げ、

父には葛西のことで迷惑をかけてあげくにハナの存在を知るもわざわざハナを擁護するような手紙を書いたり・・・妻がこの本に直接出てくる場面はないけれど、色白の美人でしかも実家はお金持ち、女学校もでている。

 

ハナのほうは葛西善蔵の妻としてずーっと葛西のそばにいて最後も看取ってネットによると2004年に没したという。年老いてからは認知症になってしまったらしい。