日本映画1920-1960年代の備忘録

1920年代の無声映画から1960年代前半の日本映画

青春を返せ  1963年 日活

監督 井田探 脚本 井田探 小山崎公朗

出演 芦川いずみ 長門裕之 高野由美 芦田伸介 大滝秀二 清水将夫 藤竜也

   田代みどり

 

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なんだか「その壁を砕け」をもっと安易に作ったような・・・警察の強引な取り調べで

自供をし、死刑判決を受けた男(長門裕之)はそれまで父がいない一家、母(高野由美)、妹(芦川いずみ)と職人ふたりを使い生きてきた。将来の結婚候補でまだ高校生の田代みどりと芦川いずみも仲が良く、芦川は高卒後?勤めた広告代理店勤めをし初めていて幸せに暮らしていた・・・ところへ、ある日、長門が訪れた先の未亡人とその子供が殺されていた。殺害時刻は午後11時過ぎなのだ。長門はその夜は10時半には家に帰っているのだが、途中で寄ったタバコ屋のおかみさんや、午後9時40分ごろに立ち寄った居酒屋の主人の証言、そして現場に残されていた凶器についていた指紋や長門が被害者宅の洋服生地からルミノール反応がでて、被害者が生地があまったからと長門にあげて、それをいづみちゃんがスカート生地としていたものからも同じルミノール反応がでていた。警察に連れていかれた長門は、警察の強引な取り調べ、寝かせてもらえないなどで調書にサインしてしまう。

 一瞬にして殺人犯になった長門はもちろん新聞記事となるが、それでもいづみちゃんは裁判になれば真実がわかるのだと兄を励ますのだ。

 

しかし、いづみちゃんがいた広告代理店は犯人の妹だというので体よくクビ?のような状態になる。いづみちゃんはまだ判決もでていない兄の妹だということで会社を辞めなければならないのかと部長にいうが、聞く耳ももたれない。

 

4年後・・・判決は死刑。。死刑判決の同じ日、母は自殺。

弁護士は大滝秀二だが、控訴してくださいといういづみちゃんに控訴手続きはするが自分には手に負えない・・・と言われてしまう。

いづみちゃんは仕事を探すのも兄が殺人犯だとわかると雇ってもらえず、身元にうるさくない新宿?のバーにいる。仕事をしながら、兄の無実を調べているのだ。

証言者のタバコ屋のおかみさんを訪ねると男の声がしたというだけでそれが長門の声だとはわからない・・・ということなのに、裁判では長門の声を聞いたと言っていたり、

居酒屋の主人の証言もたまたま居合わせた客が時間は午後11時半頃だと言ったからで自分は知らなかったのにやはり裁判で時間は11時半ころと証言していたことがわかった。

そのいあわせた客というのが藤竜也。(まだこの頃はいづみちゃんとは会ったばかり?笑)

そんなことがわかってきてますます兄は無罪だと思うのだが、遅刻して店に行くと

ママから馘と言われてしまう。遅刻や休みが多いせいだ。

そんないづみちゃんを見ているバーの客が芦田伸介で、店を後にするいづみちゃんを追いかけ、自ら知っているおでんや?へ職を世話して兄の無実の証拠集めのためのアドバイスをするのだ。

そこで芦田が敏腕弁護士の話をする。それが清水将夫なのだが、とにかく有名な先生なのでいづみちゃんが事務所へ行っても相手にされない。自宅へ行っても書生から追い返され、それでも先生の帰宅を待って話そうとするが機会が得られない。

すっかり意気消沈し、踏切へ飛び込もう(だったかな)とするいづみちゃんを芦田伸介は励ますのだ。芦田はスーパー?の万引きの警備員をしているが、実は元刑事で、自分があげた犯人が死刑になったが、その後真犯人が捕まり自分のやったことの重圧から刑事をやめた過去がある。だからいづみちゃんの力になりたいのだ。

 

その後、居酒屋で時間を店主に言った男、(今はご主人の 笑)藤竜也の職場を訪ねると藤は喧嘩腰でいづみちゃんの対応にあたる。しかし、いづみちゃんが藤の勤務時間を尋ねにまた会社を訪れるとなんと藤は会社を辞めていたのだ。

 

生地からでたというルミノール反応は芦田伸介の助言でバラの花でもルミノール反応がでるという。そこで生地を買ったという行商人の家をしるために行商姿をしている人へ聞いて歩き、やっと我孫子から来る人だとわかる。我孫子でも片っ端から行商のことを聞いて、やっと突き止めた家へ行くと・・・なんとそこではバラを栽培していたのだ!

 

 

いづみちゃんの粘り勝ちで清水将夫が弁護士になってくれることが決まり、後は退職している刑事を訪ねて強引な取り調べをしたと証言してくださいというのだが、その元刑事も自分にも生活がある。そんなことを証言したら今度は自分が新聞沙汰になり、家庭が崩壊してしまう・・・と追い出される。その帰り道、その元刑事の子供がタバコを買いに行った帰り道でトラックが!間一髪でいづみちゃんが男の子をかばったが、逆にいづみちゃんがトラックに轢かれて病院へ・・・(60年代は交通事故なんだよね 笑)

 

裁判の日、いづみちゃんが息子の命を守ってくれたことに感銘をうけた?のか、証言台にたった元刑事・・・最後の最後で「強引な取り調べをした」ことを証言するのだ。

といったように涙ぐましいいづみちゃんの努力が実り、(そして犯人は藤竜也だったのだが)長門は7年後、無罪を言い渡される。

しかし、その間、結婚するはずだった田代みどりは嫁にいってしまっている・・・

いづみちゃんもすでに20代半ばを過ぎている。

 

ところが、いづみちゃん、その事故が原因で死んじゃうのだ。無罪判決は受けたがまだ拘置所からでられない兄は特別にいづみちゃんのいる病院へ。そこで兄に抱かれてこときれるのだが、まぁ、本当に人が死ぬ時ってああいう死に方はしないからこの演出はどうよ?と思うのだけれど。

 

そんな物語。日活なのでどうしてもいづみちゃんのひたむきなかわいらしさ・・なのが前面にでてしまっている娯楽作品だ。

 

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日活のサイトより