日本映画1920-1960年代の備忘録

1920年代の無声映画から1960年代前半の日本映画

秋津温泉  1962年 松竹

監督 吉田喜重 脚本 吉田喜重 原作 藤原審爾

出演 岡田茉莉子 長門裕之 日高澄子 吉川満子 東野英治郎 小夜福子

   殿山泰司 宇野重吉 中村雅子

 

岡田茉莉子が17才から34才までの女性を演じた。

さすがに国民的美少女だった岡田茉莉子は当時29才だったけど、17才の少女でも全く違和感がなかった。だんだん成熟した女性になるけどれほんとにメイクとか衣装が考えられていておかしいところがない。

 

昭和20年、東京の大学生周作(長門裕之)は故郷に帰るが実家は焼け落ち、岡山に疎開している叔母を頼って汽車に乗る。秋津温泉で女中をしているという民(日高澄子)と乗り合わせたが周作は結核に侵されていて具合が悪くなってしまう。民は自分の勤める秋津温泉の旅館へ周作を連れて帰る。

死んでしまいたいと思う周作をその旅館の娘、新子(岡田茉莉子)は彼の病気を治すのだと面倒を見る。

散歩できるようにまでなった周作だがある日、新子を誘い、心中しようとするが

新子は途中で可笑しくなって笑ってしまう。彼女は生命力いっぱいの明るく無邪気な娘だった。一緒に笑ってしまった周作はその後、岡山で物書きを目指す。同じ文学志望(宇野重吉)の妹、晴枝(中村雅子)と結婚し、娘をもうけるも生活は荒んでいる。

 

ある日、また秋津温泉へ足を運んだ周作。新子の母(小夜福子)はすでに亡く、新子が旅館を継いでいた。彼女は縁談話を断りいまだに独身。

 

また月日が流れ、周作と新子は関係をもってしまう。

 

その後、周作は東京の出版社へ就職した。ビルの中のたばこ屋の女の子(芳村真理)を土曜日にどこか行こうと誘う周作が描かれていて、彼はぼちぼち遊んでいるらしいことがわかる。

 

新子は旅館を手放すことになり、近くのお寺の離れで暮らすつもりだが昔と違い

影のある女性となっている。

そのお寺の孫娘から昔心中しようとしたことあるんだって?と聞かれ「昔のことで忘れてしまった」と答える新子の表情がよい。

お寺のおばぁさんが吉川満子だった(懐かしい)。

 

岡山で取材を命じられた周作は秋津温泉へ行く。新子の住む離れも明日になれば明け渡さなければならない。

翌朝、新子は周作を送って湯元バス停?へ行く途中に「死んで、一緒に死んで」と周作に飛び掛かるが周作におさえられてしまう。

一人残った新子は手首を切り川まで下りて死んでしまう。慌てて駆け付けた周作は新子を抱きかかえてなんで死んだんだと泣くのだ。

 

君の名はの真知子とは違い、新子ははっきりした意見を言う女性。そして若い時は死にたいと暗かった周作が年齢が上がるにつれ変わっていくのに新子が希望をなくして死んでしまうのはなんだか切ない。

 

離れで周作に17才で出会って17年経った・・・と愚痴ともつかないことを言う新子の表情が怖かった。

映像美っていうのだろうか、吉田喜重監督のこの映画凝っていてよかったし、当時津山駅ホームが写っている。

 

ヤフー映画より