日本映画1920-1960年代の備忘録

1920年代の無声映画から1960年代前半の日本映画

外濠殺人事件   1960年 松竹

監督 池田博 脚本 植草圭之助 古川良範

出演 大木実 城山順子 永井達郎 織田政雄 大泉晃 諸角啓二郎

   千之赫子 福岡正剛

 

大木実と城山順子

深夜、飛び出してきた女をはねてしまったタクシードライバー・・・の苦悩なんだけど

なんていうか、なんていうか、サスペンス感があまりなくてそもそも題名が殺人事件なんだけど殺人じゃないような終わり方で納得できない物語(笑。

 

当時は轢かれたほうが怒鳴られるという今では考えられないストーリーなんだけど

これは結構筋としてはあるんで実際当時の歩行者はそんな目にあっていたんだろうと思う。1960年代はやたらと車に轢かれて死にました・・・って筋書多し。

 

橋の上でフラフラと飛び出してきた女、昌子(城山順子)を乗せてタクシードライバーの小田(大木実)ひとまず自分の部屋へ連れていく。昌子は家でしたらしく、夜が明けたら出ていくように言ってまた仕事へ出かける小田。一緒に住んでいる同僚の吉田(大泉晃)は昌子を野良猫呼ばわりするのだが、小田は行くところがないという彼女を結局追い出せない。

仕事へ出かける小田が部屋からいなくなったところで吉田は彼女を襲おうとする。

なにかおかしいと感じた小田が部屋へ戻り、なんとか阻止する。そしてなんだかよくわからないんだが、彼女に惹かれてきている小田は会社から前借して吉田に引っ越してくれと金を渡し、彼女を浅草へ連れて行って洋服や靴をやってやるのだ。

この時、同じ運転手で先輩の藤村(織田政雄)にも借金をして彼女と世帯をもつとか言っている小田・・・そもそも、彼女に結婚も申し込んでないしその描写もなく、いったいいつそういう風になったのか?

 

浅草で昌子は地回りの山口(諸角啓二郎)に見つけられてしまう。昌子の義理の兄が3万円の前借で昌子を飲み屋へ売り飛ばしたが昌子はそこから逃げた女だったのだ。

 

自分の過去を話せない昌子に小田は過去なんて関係ないのだ・・と晴れて昌子と一緒になる。

 

小田のアパートにチンピラ風情の男が立っている場面があり、すでに昌子の居場所は突き止められたと思われるのだが・・・山口は小田のタクシー会社で待ち伏せ、昌子の件で3万円を返せと脅す。会社からの借金もあってもうこれ以上借りられない小田は

乗客を乗せ、その乗客がお金をもっていると知ると強盗しようかと車を走らせたりするがどうしてもできない。

期限の日、一万円しかできなかった小田は3日後に残りを払うと約束する。

田舎へ行っても貧乏な家で用立てられず、母からもらった餅を手に東京へ戻ると

外濠通りで停車したタクシーの運転手から乗りませんか?と声を掛けられる。

 

フラフラとタクシーに乗り込み、「金を貸してくれないか?」という小田の様子に恐怖を覚えた運転手は逃げようとするが小田はペンチで殴りつけ車内の金をもってアパートへ帰る。何も知らない妻の昌子に金を渡し、そとを見ると刑事らしき男が数人立っている・・・。母からもらった餅を包み紙ごと車内の残したので小田の犯行だと分かったのだ(これも疑問だが・・・そんなにすぐに?)

 

仕事に行くと言ってアパートをでて逮捕された小田に刑事は「被害者は助かりそうだ」

と告げる・・・

え=================!

助かりそうなら殺人事件って題名なに?(笑。

追い詰められて同じタクシー運転手を襲うのはわかるけどこれ殺人がメインじゃない。

 

役者の演技は城山順子以外はなかなかよくて「雲助」と呼ばれていたタクシー運転手の人柄や口調がよく描画れていた。

今はずいぶん違ってきたけど、バブルのころまではタクシー運転手ってあまり評判は良くなかった記憶がある。1960年当時なら尚更だと思う。

大木実も織田政雄も言葉遣いは荒く、トンネルと言われる空車のまま乗客を乗せてそれがばれて会社をクビになる男なんかがいた。大木実もやはりトンネルがばれて最後はクビになっちゃうんだけど。

深夜の通りでトンネルをしている運転手の調査する人が立ってたりして、これ本当にあったんだろう・・と思う。

 

小田(大木実)が逮捕されたら、残された昌子は居所も知られているし、小田は山口に一万円しか返していないからまた連れ去られてしまうんじゃないだろうか・・・と観客の私が心配していまうなんとも残念な結末を予想・・・

 

松竹より