日本映画1920-1960年代の備忘録

1920年代の無声映画から1960年代前半の日本映画

ゼロの焦点  1961年 松竹

監督 野村芳太郎 脚本 橋本 忍 山田洋二 原作 松本清張

出演 久我美子 高千穂ひづる 有馬稲子 南原宏治 加藤嘉 穂積隆信 西村晃

           沢村貞子 十朱久雄 高橋とよ 磯野秋雄 織田政雄 桜むつ子

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あの時代だから作れたサスペンス。

 

一言でいうと二重生活を送っていた夫が、偽装自殺に見せかけて昔の女を捨てようとするが本当に死んでしまったという話。二人の女性は自分の夫が同一人物だとはもちろん知らない。

 

禎子(久我美子)は広告代理店に勤める鵜原憲一(南原宏治)とお見合いで結婚した。

金沢出張所の所長だった夫は結婚後は東京へ栄転したが、最後の引継ぎで後任の本多(穂積隆信)と金沢へ向かった。帰郷予定日を過ぎても音沙汰のない夫・・・東京本社でも予定通り金沢を発っているのに帰ってこないことを心配して上司とともに金沢へ向かう禎子。

 

会社の上得意である取引先を本多と訪ねると、受付に英語で外国人の相手をしている女性がいた。

彼女の英語は慣れていて、それを本多は「パンパン英語」のようだという・・・。

社長は自宅にいるというので室田(加藤嘉)宅へ。そこにはまだ若く美人な妻の佐知子(高千穂ひずる)がいたが二人とも鵜原のことを心配していた。

 

警察署も行き、身元不明者を調べてもらうが該当がない・・。

 

禎子が東京へ帰るのと行き違いに鵜原憲一の兄、宗太郎(西村晃)が金沢で憲一を探すが、青酸カリ中毒で死んでしまった・・・。同じ部屋から逃げ出した女とされる久子(有馬稲子)も崖から飛び降り死んだ・・・彼女は室田の会社で受付をしていた女であった。

 

禎子は結婚前に鵜原が何をしていたのか調べるうちに彼は広告代理店に勤める前に立川で警察官をしていたことがわかる。何も知らなかった禎子は驚きつつも夫は立川でパンパンの取り締まりをしていたとわかる。

そして当時、パンパンのうちのひとりが会社社長室田の夫人、佐知子(高千穂ひづる)であることを知る・・・。

 

高千穂ひづるというとお気楽でわがままな役を演じる女優さんというイメージがあった。しかしこの映画の高千穂ひずるの演技は特筆すべき。

特に久我美子の夫(南原宏治)を突き落としたとされる崖の上で禎子(久我美子)の追求に対して鬼気迫るヒステリックな高千穂ひづるは見ごたえ抜群で監督の演出の凄さを感じた。