監督 川頭義郎 脚本 楠田芳子
出演 若尾文子 明石潮 佐田啓二 東野英治郎 杉田弘子 石濱明 田村高廣
岸輝子 夏川静江
川頭義郎監督、主演が若尾文子だったので大映で川頭義郎が監督したかとおもいきや、松竹作品でした。まだ五社協定がなかった頃ですかね。
川頭義郎監督は2022年に亡くなった俳優の川津祐介の兄で木下恵介の助監督だった。同じころ、デコちゃんの夫となった松山善三も木下恵介の下助監督をしており、デコちゃんの記述で木下監督が二人を結婚相手として話をもってきたという。
川頭監督の家は資産家でお金持ちであるからデコちゃんは裕福とはいえないサラリーマンの家の松山善三を選んだという。なんで?と思ったけれど、想像するに資産家(お金持ち)は将来、事業に失敗したりするかもしれない、散々親族に食い物にされたデコちゃんはそうなるとまた自分が一族を養わなければならない・・・と考えた?のかもしれない。お金持ちは嫌いらしい。しかしその記述以外で川頭監督のことは一切でてこず、道を歩く松山善三氏を撮影帰りのデコちゃんの車で駅まで送っていったのが初めての出会い・・といったことだけだ。この川頭、松山ふたりの結婚候補の話が本当で、もし、デコちゃんが川頭監督と結婚しても彼は46歳という若さで亡くなるのでデコちゃんの人生はまた違ったものになっていたかもしれない。人間、どんな人と出会うかは重要です。
川頭監督の写真はみつけられませんが、川津祐介のお兄さんならやはり男前であったと思われます。松山善三氏同様、彼も木下恵介氏の流れを受け継いだよい作品を残した人ですが、亡くなるのが早すぎました。
浜松で楽器の組み立てをしている志津子(若尾文子)は事務職の磯部雄二(石濱朗)とお互い好意をもっている。志津子の父、多吉(明石潮)は信金勤めだったが金を持ち逃げし、監獄へ入った。そして母はそれを苦にして幼い志津子と17才の息子、信也(佐田啓二)を残して自殺し、志津子は多吉の弟で理髪店に婿として入った春吉(東野英治郎)叔父さんの元で育ててもらったのだ。監獄からでた父はその後、旅役者に身を落としたが、豊橋の興行があるついでに浜松の志津子から小遣いをもらいに来る。
明石潮
父の後ろには女がいたが、志津子は父に金を渡す。
ある日、磯部から誘われて彼の家へ行った志津子だが、大きな農家の磯部の家からは歓迎されない。皆、志津子がどういう娘なのか知っているからだ。
磯部は母や兄が反対しても志津子と一緒になりたいというが、志津子はどうしてよいかわからない。
そんなある日、叔母さん(岸輝子)が見合い話をもってくる。磯部が好きな志津子はこれも返事ができない。心配した叔父の春吉は嫌なら断っても良いというが、苦労して育ててくれた叔父夫婦に反抗もできず、自分を殺す志津子だった。
叔父夫婦は娘の口から志津子は磯部という男と付き合っているらしいことを訊く。春吉はその男と結婚させたら?というが叔母は磯部の家が承知しないと知っている。
この作品、ごもっとも!なセリフが二つあった。
春吉が志津子に磯部が好きなら磯部と一緒になったっていいだんというと、
叔母さんが「人間は好きだのへちまだのってそれだけで生きてるんじゃないものね。一年も経ちゃぁ親の元へも行けんような嫁さんをもらったって、後悔する」というセリフ。
それにしても、叔父さんの家で遠慮しながら育った志津子が親兄弟の反対する磯部と結婚しても同じく肩身が狭いだけのような気がする。好きであっても、姑や義兄からの意地悪に耐えられるのか?私ならやめとく(笑。
結局、志津子は見合いをする。相手はお寺の住職の甥の守(田村高廣)であった。
なかなか気のよさそうな男だったが、志津子はそこでも決めかねる。
しかし、叔母のあの一言で、磯部に別れを告げに行き、守と結婚する決心を固める。
磯部を訪ねた志津子だが磯部は不在で2時間も外で待っていた。その間、家にもあげず。お茶もださなかった母に帰った磯部は激怒するが志津子から別れを告げられた磯部は海岸で拾った貝殻を志津子へ渡す。
風来坊の志津子の兄、信也は志津子が結婚するときいて喜ぶが相手は磯部とは違う男だと知り、結婚をぶっ壊してやる!と守を訪ねる。
しかし、守は信也と志津子の母の遺骨を守の亡き両親の墓の隣に持ってくるつもりだと言う。守の優しさがわかった信也はそのまま何も言わず飲み屋の女(杉田弘子)とその場を去る。
杉田弘子
金に忙しい多吉は、弟の春吉を訪ねるが、そこで娘の志津子の結婚を知る。行った先の住所は東京・・・。
東京で暮らす志津子だが、磯部からもらった貝殻を眺めてしまう。
志津子の誕生日、銀座の楽器店へ行った守と志津子の前に浜松から出張できた磯部が現れる。
ここでまた何かがおこるわけでもないが、志津子って守の愛を感じないのか??なんだかイライラする。ずっと暗い表情だからだ。
その晩、守から志津子へ小さな鏡台がプレゼントされる。意を決したように志津子は磯部とのことを言おうとすると(これが志津子が暗かった理由か?)、守はさえぎるようにこう言うのだ。
「僕はね、誰にも愛されたことも愛したこともない人をお嫁さんにしようと思ったことはないんだ」
わ~~~田村高廣!ステキ!私、田村三兄弟では長男の田村高廣が一番好きです!♡
志津子はそこで初めて自分の気持ちを口にする。そして磯部からもらった貝殻を海に投げてきて欲しいという。それも砂浜じゃなくて誰にも拾われない遠くの海だという志津子(ここで涙)。
守の提案で浜松へ二人で帰った日はお祭りだった。鬼にやりでついてもらうと丈夫になるという言い伝えがあり、祭り見物している二人の前に子供にはやされながら鬼がやってくる。ところが、二人を目にした鬼が・・・
最後のシーンは非常によい。