日本映画1920-1960年代の備忘録

1920年代の無声映画から1960年代前半の日本映画

おヤエのもぐり医者  1959年 10月 日活

監督 春原政久 脚本 高橋二三

出演 若水ヤヱ子 待田京介 森川信 坊屋三郎 藤村有弘 世志凡太 雨宮節子  

   小泉郁之助 神戸瓢介 石丘伸吾

www.nikkatsu.com

おヤエシリーズ第7弾。第6弾は未見ですが、このお話、なんだか川口松太郎の人情噺のようで傑作でした。おヤエシリーズは全て見ていませんが多分ダントツな出来ではないでしょうか。

アマゾンプライムビデオより

 ネットニュースで「脳外科医 竹田くん」という医療マンガに実際の主人公がいると読んだ。なんと実在の"竹田くん"の手術を受けた患者は高確率で死亡、後遺症に苦しんでいるという。そのマンガの筋はまるで誰かが実在の竹田くんのやらかしていることをリークしているとしか思えないくらい同じストーリーのようだという。

そういえば、数年前にも普通なら選択しない腹腔鏡による手術をドンドンやって短期間に8名(だったかな)の患者を死亡させた医師がいたな。調べればネットに本名がでてきていまだに医師を続けているのだが、なんだかなぁ・・と思います。

 

 

 隅田川に面したスラム街で開業している若水医院。老院長の若水はもっぱら娘のヤヱ子に診察させているが、彼女は医師免許はなく看護婦の資格しかもっていない。

外科、内科、眼科・・なんでも診療する彼女の腕がよくて、近隣の住人で待合室はいつもいっぱいだ。

ところが老院長が突然亡くなってしまう。これまでは医師免許のある父がいたから診察していたヤヱ子だが、医師不在となってヤヱ子は医院をたたむ決心をする。

しかし、近隣の貧しい患者たちはヤヱ子に診て欲しいというが、医師法違反で逮捕されてしまうというヤヱ子・・・。

ある日、チンドン屋クラリネット吹きが盲腸になり、若水医院へ担ぎ込まれる。

ヤヱ子は断るが、苦しんでいる患者を診て、これが最後だと手術をすることになった。

ところが助手を誰もやろうとしない。

そこへ、食い詰めて親子心中しようとフグのはらわたを食べて寝込んだ徳さん(森川信)と小学生の娘、えみ子の往診先で新しく越してきたという男性と知り合ったが、彼が偶然医院を訪ねてきて自分が助手をするという。

若林(待田京介)というその男性はテキパキと助手を務め、無事手術は成功した。

 

ただそれから、ヤヱ子は警察に知れたらと不安な毎日を過ごすことになる。

それでも住人は診察にやってくる。彼女が捕まらないように警察がくるとみんなで撃退したりするのだ。

ある日、チンドン屋一行が若林を街で目撃。なんと彼は警察の人だとわかる。

もう絶対に患者は診ないというヤヱ子だが、彼女が保証人となり職がない徳さんをチンドン屋クラリネット吹きとして雇ってもらったが、昔事故で悪くした足がまた悪くなり仕事だできなくなった。慌てて徳さんをヤヱ子の医院へ運ぶ。そうこうしているとチンドン屋に宣伝を頼んだ肉屋のおやじが仕事をしていないので怒鳴り込んでくる。

ヤヱ子は徳さんとチンドン屋のために不承不承、足の手術をすることになるが、そこへ警察関係者だとわかった若林がやってきた。慌てて手術台の下へ隠れるヤヱ子。両脇には助手となったチンドン屋のおやじ(坊屋三郎)と女形の長さん(神戸瓢介)がいる。

様子をみて若林はすぐなんとかしなければと自分が執刀し、無事終わった。

手術台の下に隠れたヤヱ子はそこからメスとかガーゼとかを若林に渡すところは面白い。

まだ徳さんは歩けずにいる。チンドン屋のおやじはクラリネット吹きがいないと仕事にならないというのでヤヱ子は徳さんの代わりにピエロの扮装でチンドン屋となってクラリネットを吹く羽目に(笑。

ある日、徳さんの娘が同級生だという男の子を医院へ連れてくる。その子の父は中央警察署の部長(小泉郁之助)だというのでヤヱ子は慌ててもうその男の子を連れてきちゃいけないよというのだが、授業参観の日、えみ子が作文を披露する。そこにはヤヱ子のことが書かれていて、子供なので医師法違反の意味もわからず、私もヤヱ子みたいに将来は医師法違反するような人間になりたいとみんなの前で発表。そこには授業参観に来ていた男の子の父の警察署の部長もいた。

 

医院にお腹の大きかった女が赤ちゃんを抱いてやってきた。出産したんだという。

可愛い赤ちゃんだとヤヱ子が抱いているとなんと刑事がやってくる。ビックリするヤヱ子だが逮捕されたのは女のほうだった。

女は赤ちゃんはヤヱ子にやると言い残し連行されてしまい、ヤヱ子は赤ん坊の面倒をみることになった。

そこへヤヱ子に世話になったから・・とチンドン屋一同、徳さん、屑や(世志凡太)などが贈り物をもって現れ、祝賀会(なんの?W)を催していると、いつも巡回にくる制服のお巡りさんがやってきてヤヱ子に話があると申し訳なさそうにいう。

 

その意味を察したヤヱ子は支度をして医師法違反で牢屋へ。そこには先日連行された赤ちゃんの母である女がいた。

笑うと可愛いんだよというヤヱ子にそんなに気に入ったらあげるよという女。

そこへ外からチンドン屋の一行の気配。

女の背中にのって鉄格子から外を見ると、足が治った徳さんが赤ん坊を背負ってクラリネットを吹いている。喜ぶヤヱ子。

女にも見せると女も自分の子供の笑顔をみて涙。

 

ヤヱ子の窮状を知った若林はなんと警察の監察医でヤヱ子が手術した時は医師免許のある自分も助手として同席したのだから医師法違反ではない・・ととりなし、晴れてヤヱ子は自由の身となった。

日活より

映画冒頭、どこかの運河から撮ったらしく、遠めに東京タワーが映っていたのでロケ地が品川?芝浦?浜松町あたりかと思いましたが、やたらと運河や川が多い。

さらにチンドン屋はまだ橋がなかった佃の渡しに行ったりで日活のロケ地を見たら

墨田区周辺と佃の渡しとありました。ただ、全て隅田川近辺ではないような風景もあって謎です。

このガスタンクと木橋を渡るチンドン屋のショットは好きです。

釈放されて警察署からでてきたヤヱ子を迎えるチンドン屋一同

若水ヤエ子のドタバタが好きでない方もこれは楽しめるのではないでしょうか。

60分に満たない作品だし、アマプラで無料ですからおすすめします。

 

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