日本映画1920-1960年代の備忘録

1920年代の無声映画から1960年代前半の日本映画

影の車  1970年 松竹

監督 野村芳太郎 脚本 橋本忍 原作 松本清張

出演 加藤剛 岩下志麻 小川真由美 岩崎加根子 野村昭子 滝田裕介 永井智雄

   芦田伸介

www.shochiku.co.jp

岩下志麻加藤剛

 

過去に秘密がある男。

ある日、生まれ故郷、千葉の千倉の幼馴染、泰子(岩下志麻)から帰りのバスで声をかけられた浜島幸雄(加藤剛)。彼は結婚し、ニュータウンの団地に越してきてずいぶん経つが、泰子も近くに住んでいた。偶然の再会を喜ぶ幸雄は家に帰って妻、啓子(小川真由美)にそのことを言うが、フラワーアレンジメントを教えている啓子は団地の集まりにも忙しく、あまり興味はない素振り。

翌日、幸雄は最寄り駅から団地へ帰るバスを待つ。もしかしたら泰子とまた同じバスになるのを期待していたりする。そしてやはり泰子は同じバスだった。車中、話が弾み、よかったら家へ寄っていきませんか?と彼女から誘われた幸雄は戸惑いながらも団地より手前の停留所で降りた。泰子の家はバス停からは15分ほど歩き、途中暗い林の中も通った平屋の今でいうぽつんと一軒家だった。これから新興住宅地として発展していきそうだが泰子の家の周辺はまだ寂しい。

泰子には小学一年の一人息子、健一がいた。彼女の夫は4年前に亡くなったという。今は保険の外交をして暮らしているという泰子。彼女の手料理をご馳走になり、幸雄は千倉時代を思い出す。

小川真由美

幸雄の家はいつも啓子の生徒や団地の女性達が来て、幸雄は落ち着かない。女たちはおしゃべりに夢中。ある土曜日、幸雄は散歩して歯医者に行くと言って家を出てその足で泰子の家へ向かう。団地から直接歩いても15分くらいの距離だ。

 

二人の仲はドンドン深まり、ある日一線を超える。当然の成り行きかもしれない。

残業だと言って泰子の家で夕飯を食べるようになり、泰子の息子、健一にも懐いて欲しいと幸雄はお土産を買ったり、宿題をみてやったりする。泰子は幸福だ。幸雄の紹介で大口の保険も決まった。一人でいるのか好きな健一も幸雄に懐いている。

 

ある日、幸雄は妻には出張だと言って土、日に泰子の家へ泊る。

幸雄は健一を見て自分の子供時代を思い出すのだ。

幸雄も母子家庭で母(岩崎加根子)と二人で暮らしていた。そこへよく伯父さん(滝田裕介)が訪ねて来た。幸雄は子供心になんだか面白くない。ところが毎回母は大喜びで伯父さんを迎えるのだ。ただ、たったひとつだけ伯父さんの好きなところがあった。それは幸雄を釣りに連れて行ってくれることだった。

岩場で釣りをする伯父さん、彼の身体には落ちないように縄が巻いてあり、岩場の上に括り付けてあった。そこには6歳の幸雄がいた・・・。

 

岩崎加根子・滝田裕介

 

今の自分はあの時の伯父さんのようだ。泰子の息子、健一に懐かれようと必死な自分・・しかし、ふとした瞬間にその男の子から殺気を感じる時がある・・・。

 

松本清張が得意な自分で自分の墓穴を掘ってしまう男の物語。

1970年の制作なので出てくる商店街や黄緑一色だった山手線が懐かしかったです。

幸雄が住んでいたニュータウンの団地は今や高齢者だらけの限界ニュータウンになっているのかもしれないですね。54年も経ちましたから。

 

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