日本映画1920-1960年代の備忘録

1920年代の無声映画から1960年代前半の日本映画

銀座化粧  1951年  新東宝

監督 成瀬巳喜男  脚本 岸松雄 原作 井上友一

出演 田中絹代 花井蘭子 香川京子 三島雅夫 清川玉枝 柳永二郎 東野英治郎

   田中春男 小杉義男 堀雄二

 

何度みてもおもしろい映画。話の筋よりも当時の銀座界隈や埋め立てられる前の川や橋がでてくるので(笑。

 

小学校1年生?になる息子のいる田中絹代は銀座のバー、ベラミに勤めている。住まいは長唄の師匠をしている清川玉枝、なにをしているかわからない(笑 柳永二郎夫婦の2階の間借りだ。

バーには市川?から通う妹の香川京子もいるが、田中絹代は香川に悪い虫がつかないように同じバーの女たちの誘いを代わって断ったりする。

ここで??なのは香川は田中のことをおねえさんと呼ぶが、別な会話で「うちの弟」をいう場面があって、それを田中が聞いているのだが、香川の弟なら田中にとっても弟なはずだけど、どうもそのあとのセリフでも???ではっきりしない。結局最後まで田中は本当の香川の姉なのかわからなかった(笑。

 

田中のいるバーの経営がおもわしくなく、バーのマダムから20万円ばかり都合つかないか?と相談された田中。

バーでの田中はちいママ?のような立場にみえる。

 

戦争前に同じバー?勤めの花井蘭子は今はパトロン、小杉義男に家を一軒もたせてもらっている。田中はその20万円を借りれるかもしれないと訪ねると、田中を見初めて世話をしたい東野英治郎の妾にならないかと言われる。

田中も「考えておく・・」とまぁ嫌でもなさそうな返事。

田中には戦前羽振りの良かった三島雅夫がいたが戦後の三島は田中に金の無心をしにきたりする。断り切れずに三島に200円?くらい渡す田中に、花井蘭子はまだ義理立てをしているなどというが、田中はそんなことはないなどという場面がある。

 

東野英治郎なら20万円を用立ててもらえるかもと思った田中は東野と明石橋で待ち合わせる。喫茶店に入るお金がもったいないと東野は自分が経営する会社の倉庫が近くにあるからそこで話そうと連れていくが、そこで東野のせまられた田中、バカにするなと逃げだす。

 

ある日、花井が訪ねてきて疎開中にであったその疎開先の地主の次男坊が東京にでてくる。「こころの恋人」なんだが、小杉が大阪に行くまでの2日間、田中に東京を案内してほしいと頼みに来る。

田中は色々な人に頼りにされ、断らない性格。しぶしぶ引き受けるがその青年堀雄二は

花井蘭子がいうように素敵な青年だった。

花井は疎開先で堀には自分は戦争未亡人だと言っており、旅館で田中を紹介した時も

女学校をでてピアノを教えている・・などという。

 

堀と共に銀座を案内したり、夜は星の話をしたり、翌日、堀を連れて上野の博物館などへ行く。いちど旅館に帰ってすっかり堀を気に入った田中は「子供は好きですか?」とか「子供のいる女性と一緒になることはどう思うか?」などと訊くと、堀は「子供がいれば妻はいらないくらい子供が好きです」とか「僕はこだわりませんね。」と返され、すっかりいい気分になる。

 

堀はもっと滞在する予定だったが田舎から電報が来たので明日帰ることを告げる。

夜は新橋演舞場で観劇の切符を花井から渡された田中。残念がっているとそこへ香川京子がやってくる。田中の息子が昼から帰ってこないという。

実は田中は息子を動物園に連れていく約束をしながら堀と上野に行ったのだった。

慌てる田中は香川にあの男性と演舞場へ行って欲しいと切符を渡す。

乗り気でない香川に「あの人はいい人だから大丈夫」という。

 

息子は近所の人に釣り?に誘われていた。

 

香川京子と堀雄二、旅館に帰って話をする。若い者同士、すっかり意気投合しているのがわかる。

 

翌朝、堀を送ろうと旅館を訪ねるとそこへ花井蘭子がいて「朝いちばんで発ったって」とふくれっ面でいう。

帰りしな、「なんだか若い女が来て一晩泊まったらしい・・・」と田中に告げる。

その若いおんなといのは香川のことだとすぐわかり、家へ帰ると香川がやってきた。

堀を駅まで送ったという。

 

一晩泊まったことを怒る田中に「なにもしていない」と香川は言うが、田中は信じない。

ところが・・・堀と将来を約束した・・などときくと、よかったね・・・という。

結局、自分ではなく香川を選んだ堀の行動は正しいのだ(笑。

 

三島雅夫がまた訪ねてくる。もう関係はないが来るとお金を渡してしまっていた田中の態度は違って「何の用?お金ならないわよ」と言う。

「それじゃ、さよなら・・・」とすごすご帰る三島・・。

 

亀井橋を銀座へ向かって歩く田中。今日も銀座へ稼ぎに行く。

 

成瀬巳喜男の映画は必ずお金のことがついて回る。

そしてハッピーエンドでもない。

でも、なんだかじーんとなる。