日本映画1920-1960年代の備忘録

1920年代の無声映画から1960年代前半の日本映画

わが恋は燃えぬ  1949年 松竹

監督 溝口健二 脚本 新藤兼人 依田義賢 原案 野田高梧

出演 田中絹代 菅井一郎 小沢栄太郎 水戸光子 三宅邦子 東野英治郎

   千田是也 沢村貞子 

 

自由民権運動に身を投じた女性の話。岡山の素封家の娘、田中絹代の恋人は幼馴染で自由党党員の小沢栄太郎だ。(若くて最初は誰だかわからなかった 笑)彼が東京へ帰る日、家で働く下男の娘、水戸光子も東京へ売られていくのだった。

 

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結婚を口にする小沢栄太郎

 

日頃から女性の自由、開放や平等のことを考えている田中絹代は、小沢のあとを追って東京へ。しかし、小沢はあまり喜ばないのだが、結婚するなら・・・と言い出される。田中は結婚は後にして自分ももっと勉強したいと言い、自由党党首、菅井一郎の計らいで党本部で働くことになった。

 政府は自由党をつぶそうと、小沢栄太郎を金でスパイにしていた。それに気づいた菅井は小沢をクビにする。田中絹代は小沢の裏切りが信じられなかったが、無理やり関係を持とうとする小沢には愛想をつかしてしまう。一方党首の菅井は平等精神に優れた人で田中は惹かれていく・・・そして菅井も・・・。

 

一方、売られていった水戸光子秩父にいた。強制的に働かされ、男達にゆうことを聞かないと暴行されてしまう。水戸は放火し、その騒ぎで助けに行った田中絹代もともども捕まってしまった。同じく自由党の党員たちも獄についた。

 

 

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東京からきた女性解放論者の三宅邦子

獄中、水戸光子の妊娠がわかるが看守にも暴行を受け、流産してしまう。赤ん坊の父親は水戸を買った人買いの男だが、水戸は赤ん坊を生みたかったと泣くのだ。

そんな彼女をみて田中は悲嘆にくれる。

 

 出所後、自分の家で水戸光子の面倒をみている田中の元へ、やはり獄に繋がれていた菅井一郎が帰ってきた。

ある日、田中が党本部で働いていると、水戸光子の亭主だという男が怒鳴り込んできた。話を聞くと、菅井一郎と関係をもったという。家へ帰ると、菅井が妾として家を持たせてやると水戸に言っているのが聞こえる。愕然とする田中。尊敬する菅井一郎は世間の男となにひとつ変わらないのだ。

 

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田中絹代と菅井一郎

 そして田中は決意する。女性の意識を変えなければ、世の中は変わらない。まず水戸光子のような女性に目を覚ましてもらいたい・・・

そして岡山へ帰って学校をつくる決心をするのだ。

 

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やっぱり出て行くのか?という菅井一郎

汽車に乗る田中を追いかけて水戸光子が自分も連れて行って欲しいとすがりつくのだった。

えーーー、田中絹代がいなくなったんだから菅井一郎と一緒になればよいのに!何この展開(笑。

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水戸光子田中絹代

この映画では散々な目にあうのが水戸光子。男の言いなりになってしまう女を演じている。やはり溝口健二だ!