日本映画1920-1960年代の備忘録

1920年代の無声映画から1960年代前半の日本映画

警視庁物語 不在証明  1961年 東映

監督 島津昇一 脚本 長谷川公之

出演 神田隆 堀雄二 千葉真一 小沢栄太郎 八代万智子 花沢徳衛 山本麟一

   須藤健 佐原広二 大村文武 英百合子 波島進 織田政雄 中村是好

   小宮光江 

 

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東映チャンネルより

待ち遠しかった一か月。ついに警視庁物語の不在証明(アリバイ)を見る。

 

官庁の支所で夜、守衛が殺された。時計は9時15分でとまっていた。

重要参考人は3人。その日、残業をしていた資材課の係長、小沢栄太郎とその部下、波島進、そして大村文武だ。

冒頭、どうも大村らしい人物が暗闇に隠れていてその目が映し出される。

これじゃ、犯人は大村文武では・・・と思ったが容疑者は二転三転。

 

翌朝、出勤してきた女子職員が消防へ連絡していると係長の小沢栄太郎が出勤してくる。

彼はおもむろに金庫を開け、職員に警察へ連絡するように言い、さらに金庫に誰も近づけないように言う。

 

神田隆以下、刑事がやってくる。千葉真一が若い刑事として初登場。可愛い(笑。

 

小沢栄太郎に金庫の中身をきいても金庫の中には金銭は入っていないという。

一体犯人は何を盗りたかったのだろう。

 

残業した3人の足取りを追うと、7時半頃役所をあとにした3人は江戸銀という飲み屋へ。8時10分頃、小沢栄太郎はタクシーで家へ帰り、波島と大村は大村の恋人、小宮光江の待つ喫茶店へ。彼らのことを心配した波島だが、小宮と大村は結婚のことで悩んでおり、腹をたてた大村は席からたって出て行っていしまう。

ひとり残された小宮を元気づけようと喫茶店の前にあるパール座でショーを観ようと強引に波島は誘う。ショーの終わる10時半まで二人はそこにいるのだ。

 

刑事は大村文武の家の事情を知ることになる。彼は病気がちは母親と二人暮らしでだが

大家に借金30万円があり、また立ち退きで借家を追い出されそうなのだ。

一番犯人に近い男だった。

 

実は金庫の中には業者からの賄賂、30万円が入っていたが、最初はみなそのことを言わない。

 

ここで小沢栄太郎の嘘もわかる。小沢栄太郎はその後、まっすぐ家には帰っていなかった。犯行時間9時前後のアリバイが不明だ。実は小沢は元役所の職員である女性と付き合っており、その夜はその女性のアパートで逢引をしていた。彼女は父親、中村是好と二人暮らしだが、小沢が来る夜は父親に酒でも飲んで来いといって外出させていた。

 

だんだん小沢も犯人かもしれない・・と思わせる。

 

ところが、その夜の9時15分ごろ、タクシーで役所へ行った人間が目撃されていた。

大村文武だった。やっぱり大村か!とか思わせる。

恋人の小宮光江は警視庁高輪警察署を訪ね、拘留されている大村を訪ねる。私から訊いてみたいと申し出たのだ。小宮は犯人は大村だと思っていたが、大村は違うと言い、更に恋人に疑われていることも激怒して小山光江を帰らせる。

 

資材課の課長、織田政雄が家に20万円分の商品券(なにか違う言い方をしていた)が届いたと刑事に伝える。彼はもうすぐ定年だが一介の職員が20万円(今の価値ならいくらだろう)も包んでくるのはオカシイという。その職員は波島だという。

 

タクシー運転手を探し出し、男を下したのは本当に9時15分か?と訊くと、正確ではないけれど、そのあとすぐに別の客を乗せてパール座で降ろしたのが9時25分だからだいたい10分くらい前だという。

 

パール座・・・と訊いて波島のことを思い出す刑事。

小宮光江は二人で8時50分から10時半までいたと証言していたが、途中、混んでいた劇場で小宮一人を座らせて波島はパール座を抜け出すこともできたはずだ!!

 

でここで一気に事件が急展開。なんと完全犯罪を目論んだ人のよさそうな波島の仕業だとわかる。

 

この劇場を抜け出し、また何食わぬ顔で劇場に戻るというトリックはなにか他の映画でもみたような気がしたがなかなかだった。

 

最後の終わり方がまた良い。

犯人でないことが証明され、大村文武は釈放される。外には恋人の小宮光江が待っていたが、大村は彼女の存在に気づくがそのまま何も言わずに行ってしまう。彼女もまた別な方向へ去る。なんだか大人な映画だった。

 

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楽天より

尚、監督の島津昇一は島津保次郎の息子だということだ。