日本映画1920-1960年代の備忘録

1920年代の無声映画から1960年代前半の日本映画

キクとイサム   1959年 松竹

監督 今井正 脚本 水木洋子

出演 北林谷栄 高橋恵美子 奥の山ジョージ 織田政雄 殿山泰司 岸輝子

   滝沢修 三井弘次 三國連太郎 高原駿雄 荒木道子 宮口精二 

   三島雅夫 多々良純 東野英治郎 賀原夏子 長岡輝子 中村是好

   田中邦衛 清村耕次 朝比奈愛子

 

もう、好きな役者がたくさん出ている映画!

もうずいぶん昔に見た。その後、数回見ている。

私は今井正監督作品ではこの「キクとイサム」が最高峰だと思う。

混血児の話だが、ところどころに地味なギャグがあって暗くて重い話だが考えさせられながら楽しめる。

 

北林谷栄扮するおばぁさんの家にいる(なんと当時48才!)福島?近辺の山間の村で、死んだ自分の娘が残したふたりの混血児の話だ。

 

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町へでると好奇な眼にさらされる

キクは11才。イサムは9才?女ゴリラと同級生から呼ばれる姉、祖母から白いごはんを食べると肌が白くなるときいて一生懸命食べたりする。だんだん自分は他の日本人とは違うのだと気づいていくのだ・・・町へ出ると周囲の人から奇異な目で見られる、同級生からはくろんぼと言われる・・・救いなのは隣に住む若夫婦や近所の人達が心配しながらも普通に接してくれるところ。

弟のイサムは結局アメリカ人の養子となり村を去るのだが、そのことを話していた時に

イサムにアメリカに行きたいか?ときくと彼は素直に嬉しそうな顔をして行きたいという。それを聞いたおばさん、岸輝子が「行ったらもう帰ってくるんじゃないぞ」と真顔で言うのが可笑しかった(笑。イサムはまだ養子になることを知らないので無邪気なものだ。

この岸輝子、役では40過ぎて子供に恵まれた女で、ある日子守をキクに頼んだらキクが赤ん坊を町から来たトラックの荷台に置き、同級生と喧嘩している間にトラックが走り出してしまう。通りががかった担任の荒木道子に将来は手に職をもってお金を稼がなければならない、何になりたいのか?と訊かれると、彼女は「お嫁さんになりたい」という。大人としてみれば彼女は将来結婚できないかもしれないから自立の道を考えろと言っているのだが、そうも言えず・・・そしてキクはなんで私だけそんなことを言われるのだという。。

家に帰るとおばさんがいる。赤ん坊はどうした?と聞くおばさんにキクは「帰ってこなかったか?」というとおばさんはあきれ顔で「赤ん坊がひとりで帰ってくるわけない」

となり(ここもおもしろい)キクは大慌て。

ただ、この時のおばさん、怒ってはいるのだが意地悪な怒り方じゃないんだよね。

そこが良い。

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岸輝子がなかなかいい味のおばさん役

 そして駐在の東野英治郎登場!手に負えなければ施設があるという。

そこは混血児だけを集めた施設のことだ。(エリザベスサンダースホームのこと?)若夫婦の会話からわかる。

 以下出演者

 

三井弘次 安売りだよという移動屋台の雑貨売り。最高!

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キクが10円の髪飾りを手にする。10円じゃ買えないぜという三井弘次

 

宮口精二 町の医者。患者に言わせると診療科目はたくさんあるが、診てくれる先生は一人だから混んでいる・・と言われちゃう(笑。ノンクレジットで患者役、小林十九二。

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診療所の待合室の小林十九二。〇〇きてます(笑

 

多々良純 見世物小屋の呼び込み。キクがいるとみんながキクに注目して商売にならないと追っ払う。

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商売の邪魔だという多々良純

 

殿山泰司 キクの家に蚕を買いに来る親方?

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殿山泰司

織田政雄  イサムの担任

 

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イサムがアメリカへ行く。駅まで見送りにきた担任 織田政雄

滝沢修  混血児をアメリカへ養子にだす事業をしている人?イサムとキクの写真を撮る。イサムはチューインガムにつられて写真を撮るが、キクは恥ずかしがって下を向いてしまい、結局祖母からキクの写真をもらう。

 

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滝沢修に写真を撮ってもらうイサム達

三島雅夫  旅回り一座の座長。

中村是好  旅回りの役者

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キクのタップダンスを面白がる三島雅夫中村是好

荒木道子 キクの担任

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キクに将来何になりたいのか尋ねる担任の荒木道子

 

三國連太郎 赤ん坊がいなくなった騒動に便乗してキクの写真を撮ろうと押しかける新聞記者。祖母の剣幕で逃げ出す。

高原駿雄 同、カメラマン。

 

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写真撮らしてよと迫る三國連太郎高原駿雄

賀原夏子 霊媒師。キクは尼寺へ・・・と勘違いさせる?予言(笑。

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賀原夏子霊媒師に「やっぱり尼寺でやんすか?」と問いかける

なんと祭りの若い衆で田中邦衛の姿が!キクやイサムをみて「見ろ、煎餅喰ってやがる」という。

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見ろ、煎餅喰ってやがる・・・という田中邦衛

そして戸田春子が!

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イサムの悪さをみて将来はどうなるんだろう?という戸田春子

清村耕次 朝比奈愛子  隣に住む若夫婦 キクとイサムのことを親身になって考えてくれる

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イサムのアメリカ行きで言い合いになる 

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若妻はアメリカのお金持ちの家へ行った方が幸せだ、自分だって行くという

 

人々の偏見や子供達のなにげない言葉(黒いからくろんぼと言ってどうして悪いのだ?本当のことだべ・・という同級生)、当時からすると衝撃的な映画だったんだろうと思う。今見てもすごい映画を作ったなぁと感じる。

 それにしても役者陣が良い!