日本映画1920-1960年代の備忘録

1920年代の無声映画から1960年代前半の日本映画

あらくれ   1957年 東宝

監督 成瀬巳喜男 脚本 水木洋子 原作 徳田秋声

出演 高峰秀子 上原謙 森雅之 加藤大介 三浦光子 志村喬 清川玉枝 宮口精二

   東野英治郎 岸輝子 坂本武 仲代達矢 賀原夏子 中北千枝子 出雲八重子

   田中春男 千石規子 中村是好 沢村貞子 高堂国典 丹阿弥谷津子

   沢村いき雄

 

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wikiより

 

デコちゃん続きます。

2時間の長い映画だけれど全く飽きさせない。大正初期のひとりの女性の人生。

当時高峰秀子は33才だが、役の上では20代。だが、デコちゃんの童顔も相まって

無理な感じはしない。

 

幼い頃養女に出された高峰秀子はその養女先の息子との結婚の日逃げ出した過去がある。その後、酒屋の養子で家付き娘だった妻を亡くした上原謙の後妻となるが、上原は高峰の着物の着方や化粧などけなしてばかり。上原の幼馴染の三浦光子の嫁ぎ先で高峰の愚痴をこぼすが、三浦と上原はできてしまい、その後夫である田中春男と離縁させられる。

ある日、高峰が妊娠を告げると「誰の子だかわからない、子供はこっちで育てるから出ていけ云々」と言われ、喧嘩のあげく高峰は階段から落ちて流産してしまう。

 

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最初の夫 上原謙

 

結局婚家をでた高峰は兄で風来坊の宮口精二に連れられ、雪深い(新潟?)田舎町の旅館に博打のカタで置いてきぼりにされ女中として働くが、その家の跡継ぎで妻が肺病で別居している森雅之とねんごろになる。義理の母の清川玉枝は人の口も気になるし、森の妻の家に知れたら面倒だからと親戚筋の山深いところにある旅館に行くように言われる。この清川玉枝、別にいじわるでもなんでもない。精米所の旦那、志村喬とはいい仲だ。森雅之は家で本を読んでいる大人しい男で、丸眼鏡姿の森雅之は初めて見た。

 

 

ところが娘が男の慰み者になっていると聞いた父、東野英治郎が東京へ帰るのだと迎えに来る。その夜、酔っぱらって森雅之と喧嘩した高峰。起きてみると屏風が壊れている。森は「女の酔っ払いなど初めて見た」と呆れていた。自分が恥ずかしくなり高峰は父と東京へ帰ることになる。

 

行くところがない高峰は伯母さん、沢村貞子の内職を手伝う。そこへ出入りの洋服の仕立て職人、加藤大介に誘われ、ミシンの工場で働く。

ふたりで納品に行った帰り道、高峰が加藤を誘って独立することになり、テーラーを始めたが、夏がくると注文が入ってこなくなって店は畳むことになる。

ふたりはよく喧嘩して雇った職人もあきれ顔だった。

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工場勤めの時、品物が返され困る加藤大介に高峰秀子は自分が行ってくると・・

ふたりは別々に暮らすことにし、お金を貯めなが、高峰はミシンを一台月賦で購入することができた。そして根津?あたりにもう一度テーラーを開業。

高峰のがんばりでテーラーは繁盛するが、男勝りの高峰。加藤大介は近所のおばさん、賀原夏子の世話で今はすきやき屋の女中をしている三浦光子と引き合わせ白山に一軒もたせる算段をする。

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なにもかも高峰とは正反対なおんな、三浦光子。高峰は2度も亭主を寝取られることになる

 

新しい職人 仲代達矢が店にやってきて「旦那のこの型は古い」と新しい型で仕事を任されるようになる。

 

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洋装で店の宣伝活動に精をだすデコちゃん、新しい職人の仲代達矢・・二人はその後・・

 

金の無心にきた兄から旅館の旦那が寝込んでいるらしいと聞いた高峰。早速旅館を訪ねると彼はもう死んでいた・・・。今は元気になって戻ってきた妻、千石規子に嫌みを言われ、墓参りにいった高峰は前に森から借りたお金を返すつもりで来たのだが、一緒についてきてくれた旅館の番頭にあげてしまい、「これでいいでしょ?」と墓石に問う。

なんかこの場面、泣けてしまった(笑。

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東京へでてきた森雅之と会う

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森の位牌の前で「女中にまで知らせなくてもいいと思った」という妻の千石規子

 

 

高峰が家を空けることを知った加藤大介は早々に三浦光子のいる白山へ向かおうと人力車に乗るが、すぐに帰ってきた高峰がたまたまそこへ遭遇し、三浦の家で立ち回り(笑。

逃げ出す加藤大介。高峰は三浦に「あんなのくれてやる!」と雨のなかを歩きだす。

町の雑貨屋で傘を買い、電話を借りて店へ電話する高峰。

仲代に店を閉めて温泉でも行って新しい店の相談をしよう。ついてはあんたに店を任せるから・・・という。ついでに丁稚も連れておいで、ステーションで待ってるから・・

と言い、傘をさして歩きだす・・・

 

おおお!この終わり方どうだ!さすが成瀬巳喜男

 

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雨の中歩く

 

文芸作品だが、ところどころ大人なセリフがある。ストーリーは同じだが水木洋子が大幅に脚本を展開し、当時は成人映画に指定されたとwikiにある。まぁ成人映画っていっても今からしたらそんな場面はひとつもない(笑。

実は私は高峰秀子の喋り方や声はあまり好きではないけれど、この映画ではそのフテクサレ感が活かされていた(笑。喧嘩したり言い争ったり、ムッとしたり、この映画そんな場面がすごく多いのだ。

 

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こんないい笑顔もあります。森雅之の墓前でお金を番頭へあげてしまう。「あんた、これでいいわね?」と問いかける