日本映画1920-1960年代の備忘録

1920年代の無声映画から1960年代前半の日本映画

女が階段を上る時  1960年 東宝

監督 成瀬巳喜男 脚本 菊島隆三

出演 高峰秀子 森雅之 仲代達矢 加藤大介 小沢栄太郎 団玲子 中村雁治郎

   淡路恵子 沢村貞子 賀原夏子 織田政雄 細川ちか子 中北千枝子

   多々良純 山茶花究 東郷晴子 千石規子

 

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アマゾンより

 

 

高峰秀子が衣装を担当した夜の銀座の人間模様。

日本のDVDが高かったのでアマゾンUSAで購入した。数年前に買ったのだがなんと封を開けてなかった(もったいなくて 笑)。リージョンが違うので専用のプレーヤーかリージョンフリーのプレーヤーが必要だが、私は日本で高いDVDはアメリカのアマゾンをチェックして購入することがある。これはよっぽど欲しかったのだろうと思う。

 

デコちゃん35,6歳の時の作品だ。設定では30才になる年齢。

夫を交通事故で無くした高峰秀子は銀座のスカウト、仲代達矢と共に今はバーの雇われマダムをしている。中国人?のオーナー山茶花究から売り上げが少ないと責められるが体を張ってまで(お色気で?)売上をあげようという考えはない高峰秀子。そんな彼女を銀座では珍しい女性だと心の中で慕う仲代達矢

店にいたホステス、淡路恵子が新しい店を持ったが、彼女は高峰の店の客を引っ張っていた。

 

高峰は仲代と共に細川ちか子がオーナーの店でマダムとなる。

 

ある日淡路と偶然会い、話をきくと彼女は借金で首が回らないから狂言自殺をするという。そうすれば借金返済の催促も少しは延ばせるのだ。ところがアルコールと睡眠薬を飲んだので本当に死んでしまった。通夜に行くと元高峰の店の客で(多分)淡路に出資した(もちろん肉体関係も)た経営コンサルタント?の小沢栄太郎の会社のものだという男が淡路の母、沢村貞子に借金の残を肩代わりしてくれと来るのだ。

 

その晩、小沢栄太郎が店に現れた。淡路のことで絡む高峰にマネージャーの仲代はプロならプロらしくしろと叱るのだった。

 

高峰も自分の店をもちたいと考えるようになる。大阪?の商人、中村雁治郎が店を持たせってやっても良いというが、やはり関係を迫られる。高峰はお客様に奉加帳をまわしてひとり10万円ずつ20人から集めれば自分の力で店がもてると希望に燃えるがなかなかうまくいかない。高峰は銀行の支店長、森雅之が好きなのだが、好きな人にお金の無心もなかなかできない・・・。

高峰が集金に行った帰り、お酒が飲めないのにひとりでやってくるプレス工場の社長の加藤大介とバッタリ会う。喫茶店で奉加帳のことを話すと加藤は協力するといってくれるが、あなたのような人は結婚して家庭に入るのが一番なんだが・・と言われる。

 

 

銀座でよく当たると評判の占い師、千石規子は高峰に近々良縁があると言われる。

なんとなく気になるが・・・。

 

面白くないことが続き、高峰はお酒を飲み過ぎて店で血を吐き、実家のある佃島で療養することになる。そこには役所に勤めていたが気が弱いために上司に言われるまま判を押し、それが犯罪になるので裁判をしている兄 織田政雄と小児麻痺の子供、そして母 賀原夏子がいる。兄嫁は兄が役所をクビになってから子供をおいて出て行ってしまった。そんな家族を高峰は月々仕送りをし、兄の裁判費用も用立てているのだ。

 

1か月ほどするとバーのオーナー細川ちかこがお見舞いにやってくるが、口にはしないが実際は早く店に出ろ・・・ということなのだ。

 

店でおもしろくないことがあり、帰ろうと外へでるとばったり加藤大介に会う。

送ってあげるというのでマンションまで送ってもらった。

そして加藤は突然高峰にプロポーズするのだ。彼は結婚を前提としない付き合いはできないので高峰に結婚を申し込んだ・・・。びっくりして言葉がない高峰。加藤は去っていく。

そこへ兄が息子の足の手術代を無心にやってくる・・・いつもいつもお金を無心される高峰は激高して出て行って!といっているとそこへ渡すのを忘れたと加藤大介が来る。

彼は高峰がつけていた「ブラックりりー」という香水を覚えていてプレゼントしてくれたのだ。思わず高峰は「帰らないで!」と言ってしまう。

 

翌日、ネクタイを選ぶ高峰がいる。店で加藤大介にそのネクタイをつけさせ、もう他人ではないのだから・・・という会話・・そして「私はプレス工場の奥さんになるのねぇ・・」と嬉しそうに言うのだ。

 

マンションで布団を干していると電話がなる。それは加藤大介の行方を尋ねる妻だと名乗る女性からだった・・・。足立あたりの加藤大介の住まいに行く高峰・・・「隣の車を借りたまま一週間も帰ってこない。自分の亭主は女性を騙すのがうまく、まさかあなたのようなきれいな人は騙されなかったでしょうね?」と気の毒そうにやつれた妻に言われ、首を横に振って否定するしかない高峰秀子・・・この時の彼女の表情がよいのだ。

 

その晩、なにかがふっきれた高峰の店に森雅之が芸者を連れてやってくる。

絡む高峰。芸者は怒って帰ってしまい、高峰はねだって森にナイトクラブへ連れて行ってもらう。しこたま飲んで森にマンションまで送ってもらった高峰・・・そして森と朝まで一緒に過ごす。幸せそうな高峰に森は大阪へ転勤になることを告げるのだ・・。

 

ひとり部屋で泣いていると仲代が来る。そして一緒になろうというが、高峰は同じ職業のものが一緒になってうまくいった試しがないと断る。

 

新橋?東京駅で、森雅之とその妻 東郷晴子は銀行の人達の見送りを受けている。

そこへ高峰が現れ、支店長からもらった株券を返しますといい、菓子折りと一緒に奥さんに渡す。森雅之は何とも言えない顔になる。この表情も良い。妻を目の前にした気まずい男の表情だ(笑。

 

車中、妻は森に「銀座のバーの人には見えないわね。上品で」みたいなことをいう。

 

そして高峰はまた今夜もバーの階段を上っていく・・・。

 

これから高峰はどうするのだろう?人それぞれいろいろ想像できる終わり方は

(何度もしつこい?)さすが成瀬巳喜男なのだ。