日本映画1920-1960年代の備忘録

1920年代の無声映画から1960年代前半の日本映画

背くらべ  1962年 松竹

監督 大槻義一 脚本 山田太一 企画 木下恵介

出演 乙羽信子 川津祐介 石川竜二 常田富士男 島かおり 三崎千恵子

   小林十九二 多々良純 中村是好 田中晋二 末永功

 

衛星劇場より

いかにも松竹ー木下恵介 路線の作品。脚本が木下恵介の弟子だった山田太一

労働争議の話をからめて一時間ちょっとでも納得なのはさすがに山田太一だと思った。

 

富士の麓で母(乙羽信子)と暮らす長男 貞夫(川津祐介)は弟で高校生の勉(石川竜二)にはなんとしても東京の大学へ行って欲しいと思っている。

工場の仕事帰りに弟がアルバイトで駅まで荷物運びをしているのを発見すると怒って兄弟げんかをしてしまう。

警察官だった父を自動車事故で亡くしている一家。勉は母や兄の負担になってまで東京の大学へ行く意味があるのか?と自問するのだが、兄はとにかく大学へ行くのだからアルバイトなどせずに勉強するのだと言うのだ。

 

母の仕事先の織物工場の一人娘、愛子(島かおり)は貞夫と付き合っているが、両親が密かに貞夫を婿養子にして工場を継がせようとしていることを知り、こんな田舎で一生おくりたくないと貞夫に東京へでて成功して欲しいと御注進。貞夫も本心では東京へ行きたいと思っている。

工場では係長になるはずと思われていた貞夫の先輩(末永功)が東京から来た別の人物が迎えられ、貞夫は東京の人間にはかなわないとがっかりしたり、怒ったり。

その夜、同僚の河村と飲みに行き、ぐでんぐでんに酔っぱらった貞夫を河村はお前が昇進しそこなったわけじゃないのに・・と呆れられる(笑。

 

ある日、疎遠だった父の弟で千住で工場を経営している勝田芝吉(多々良純)から東京の工場を手伝って欲しいと手紙が来る。母も行けというし、愛子も大賛成で意気揚々と東京へ。ところが経営者の芝吉と労働者の間のもめごとでスト決行中だった。

芝吉は貞夫に自分の片腕となってくれと労働者と対峙することになるが・・・昔から経理をまかせているという老人(中村是好)まで労働者側へつき、貞夫も良心の呵責に耐えかねて田舎へ帰ることにする。

 

しかし、田舎では休みで帰省したんだろうと思われ、貞夫は腐るばかり。同じ工場の同僚だった河村(常田富士男)に励まされるが心は晴れない。

そんな中、母が貞夫を織物工場で働けるように算段し、東京に行くからと婿養子の件を断られた愛子の両親(三崎千恵子と小林九十二)はまた婿養子の話ができると喜ぶ。

貞夫は貞夫で愛子からその話をきき、俺はここにずっといるんだから婿養子になっても良いようなことを言うと逆に愛子はそんな人は嫌いだと怒ってしまう。

 

そこへ叔父の工場の労働者だった北見(田中晋二)が訪ねてくる。あのあと工場をやめて品川の工場に勤めているが、君はいい人だったし、貞夫も一緒に働かないかという。敵対していた北見の申し出に素直になれない貞夫だった。

 

その晩、母は息子に命令があるという。

貞夫は東京で働くこと、勉は大学へ行くことだというのだ。

家族を思ってみんなが自分のやりたいことを無意識に封印していたが母の一言で

貞夫も勉も自分の未来をみつけることができたのだ!!

・・・みたいな。

 

舞台は富士吉田市でロケも行われていおり貴重な映像が残されている。

富士吉田駅って今は富士山駅と名前を変えたんですね。まぁ、わかりやすいけれど

勉は富士山のせいでこの土地ではなんにも採れない・・みたいなセリフがあります。

土壌のせいでしょうね。

 

松竹より