日本映画1920-1960年代の備忘録

1920年代の無声映画から1960年代前半の日本映画

男の歌 1962年 松竹

監督 高橋治 脚本 井手雅人 大河寿雄 

出演 吉田輝雄 杉浦直樹 菅原文太 初名美佐子 三井弘次 磯野道子 中村是好

   須賀不二男 浜村純 石黒達也 浅茅しのぶ 大杉莞児 左卜全 

   コロムビア・トップ  コロムビア・ライト 高宮敬二 

衛星劇場より

たまにチェックする好きなサイトで、笠智衆生誕120年、スカパーで「サラリーマン目白三平」など未DVD化作品の放映を知り、急遽スカパーに再度加入。

家のアンテナが古い(基本BSパラボラ)のでCSは映るものと映らないものがあるけれどかろうじて日本映画専門チャンネル東映チャンネル・衛星劇場はオッケーなのです。一番安い5チャンネルパックと衛星映画劇場を再度ネットで申し込んだ瞬間、すぐ映りました。5チャンネルパックでは日本映画専門、東映チャンネル、TBS2、テレ朝1、ディスカバリーを選びました。本当はTBSは1を見たいんですけど映らない(笑。

それぞれのチャンネル番組をネットでみながら録画予約していると、つけていた衛星劇場チャンネルで白黒の古そうな映画が映っていて吉田輝雄が大暴れ。予告でも宣伝しているのかと思っていたらなんとその映画が始まっており、慌ててそれも録画しました。

ですので始まりが録画されておらず、その後、出演者が菅原文太がいたので東映チャンネルだったのかと思っていたら、やはり衛星映画劇場の松竹作品でした。

別の日にまた再放映されるかと調べましたが、5月15日が最後の放映でした。

菅原文太wikiを読むと、新東宝に入社、ハンサムタワーズメンバー、吉田輝雄と松竹へ行ったが脇役に甘んじ、安藤昇のすすめで東映へ移籍とありました。

吉田輝雄東映というイメージのする俳優さんでしたが、新東宝が最初だったんですね。同じくヤクザの兄貴分役の高宮敬二もハンサムタワーズの一員だったそうで一緒に松竹にいったあとにこの作品ができたようです。やはり安藤昇の勧めでその後ふたりとも東映へ。

三井弘次・吉田輝雄

両親亡き後、父の友人だった町医者の北原(三井弘次)に引き取られた中村純三(吉田輝雄)だが、学校はやめ、今は秋田組のチンピラやくざになっている。町ではお決まりの「みかじめ料」集めに精をだす純三。怯える商店主を脅し、金を出さなければぶん殴る。映画冒頭のこのシーン、なかなか爽快(って言っていいのか?暴力なのにw)です。

そこへ二人組の男のひとりから殴られ、純三は簡単にノックアウト。もうひとりが「悪かったな」と言って、ボクシングの試合チケットを置いていく。

それは純三をノックアウトしたボクサー、並木(杉浦直樹)の試合で、もうひとりは彼のマネージャー三枝(菅原文太)であった。

並木の試合を見た純三はいたく感動し、自分もボクサーになりたいと並木のいる太洋拳を訪ねるが入門を一笑にふされ、それでも一途で強引な純三は並木の朝錬を待ち伏せ付いて行ったり・・。

純三は腕の入れ墨があり入れ墨のある人間はボクシングができないと言われ荒れる。理由を知った北村医師は彼の入れ墨を焼いて消す。

さらに組に所属している純三はヤクザ者はダメだというので組長に盃を返しに行くが、組長はボクサーがいれば鬼に金棒だと頓珍漢な答え。いや、組を辞めたいんですというと兄貴分の市村(高宮敬二)に脅され、あっさり「組を辞めたことにする」となる。

純三のキャラクターが結構面白くて、ボクシングはやりたいが、組もやめないことにしちゃう適当な男。さらに自信過剰で押しが強く、決して純情ではないのだ。

松竹映画にしては珍しい。

吉田輝雄菅原文太杉浦直樹

やっとジムへ入会させてもらい、大阪で試合が決まった。ところが車中、絡まれている二人連れ(それも不倫?を匂わせる中年男性(浜村純)と若い女)を助けたことによっておじゃんになる。なんと助けたカップルが純三のパンチをみてボクサーに違いないとあたりをつけ、大阪の試合会場までお礼にきたことでチンピラを殴ったことがわかったのだ。ここで繰り返し言われるのが、ボクシングはスポーツであるということだ。

なんか喧嘩が強くなりたいとボクシングをやりたがる当時の若者に対しての教育的映画でもある(笑。

ひとり安宿に帰る純三の元に酒屋の娘、光子(初名美佐子)が東京からやってくる。

純三の試合がないと知ってどうしたのだ?と詰め寄る気の強い娘。彼女のキャラは不真面目で適当な純三を叱咤鼓舞する。この初名美佐子という女優さん、目力が強くなかなかの美人だが、数作の映画出演で行方不明。

誰かに似ている感じ・・。

吉田輝雄・初名美佐子

久保菜穂子とか小山明子系な美人。ネットに写真がないのでここでアップしときますw

初名美佐子

初名美佐子・吉田輝雄

純三はジムへ行かなくなり、また秋田組でみかじめ料をとるために大暴れ。

すると親分(須賀不二男)から別なジムが純三を欲しがっているから行けと言われるが

純三はボクシングはやりたくない等と自分勝手なことを言い出す。苦笑する親分とアニキの市村。純三、親分からやたら苦笑される生意気ぶりが面白い。

しかし北村医師や光子の応援で太洋拳へ戻り最初からやり直すことになった。

やはりボクシングが好きなのだ。そして太洋拳というジムも好きなのだ。

しかし、純三はまだ秋田組の組員。試合で順調に勝ち進んだ純三。あとは決勝を残すのみとなったが、秋田組に呼び出される。私でも予想できたが、八百長で負けろという指示だった。

普通なら断ってその後ぼこぼこにされながらも・・な展開だがなんと純三、あっさり承諾(ここで私も苦笑。吉田輝雄がそんなキャラをうまく演じていた。

その後、演出のせいかどちらとも想像がつく展開となる。

1.純三は相手からボコボコに打ちのめされる・・のは負ける気満々だった

2.親分に約束したのは口だけで、実は勝つ気満々だったが予想に反してボコボコにされてしまう

の2通りが考えられて、しかもそのボコボコ加減が凄くて太洋拳側もタオルを投る??かと思われるところでラウンド終了。

戻った純三は並木に「タオルは投げないでくれ、そうすると俺は相手が言った通り負けることになるんだ」という。なんのことかわからない並木は茫然としたままゴングがなる。

ところがその後、純三は相手をノックアウトし優勝を勝ち取る!

試合を見ていた秋田組組長とアニキは憮然とし、純三を応援していた光子一同は大歓声。

試合後、並木に八百長を持ち掛けられていたこともあっさり告白しちゃう純三。

光子とふたりの帰り道。

当然のことながら市村以下組員が純三を待ち構え、焼きをいれるのだがこれで組からも抜け出せると純三は殴られるままになる。

皆が待つ優勝祝賀の席に光子が肩を貸した純三が現れ倒れこむ。何があったのだ?と訊く並木に「どぶにはまった(溝だったか?)」と言うだけだった。

しばらくして、並木が引退を表明、記者から太洋拳の次期ホープを訊かれると純三がスパークリングしているところが映って終了する。

 

最後はありきたりの終わり方だったが、八百長をするのか?しないのか?のシーンでは私は殴られ続けてそのまま死んでしまうのでは?な淡い期待というか哀しい終わり方をするのではないかと想像してしまいました。

あるいは市村達に殴られてそのまま死んでしまうとか。

そっちのほうが物語としては適当、いい加減、軽薄だった純三に涙しちゃって吉田輝雄の代表作のひとつになったのでは?と脚本家みたいなことを思いました。

 

追加

ハンサムタワーズ高宮敬二が映っているYouTube見かけました。アップされたのが11年前です。それでもさすがにハンサムタワーズの一員だったのでなかなかな男前です。

1933年生まれで11年前の映像だとすると80歳。いつの映像だかわからないんですが70代後半であることは確か。身長、180センチあるそうです。

高宮敬二