日本映画1920-1960年代の備忘録

1920年代の無声映画から1960年代前半の日本映画

お六櫛 1935年 第一映画社

監督・脚本 伊藤大輔 原作 正木不如丘

出演 月田一郎 山田五十鈴 歌川絹枝 中野英治 夏川大二郎 中村是好 

   中村順一郎 松本泰輔 芝田新 

山田五十鈴

 信州、蓼科山山麓の村。馬吉(月田一郎)の父は村が共同で管理している山の割り当て分の草刈りをさぼり、山火事を出してしまう。その結果、父は出奔し、家はかたむいた。

馬吉は身体が弱く、他の男衆のように働けないが、妹のおろく(歌川絹枝)と繭を売ったりしてなんとか生活している。

村の若い男、太吉(夏川大二郎)はおろく(歌川絹枝)の元を訪れて二人で楽しそうに喋ったりするが、兄の馬吉はなんだか気に入らない。

 

東京から絵描きがやってきた。彼は村の有力者の家に泊まることになっていたが、その家の娘のおきぬ(山田五十鈴)と偶然、馬車に乗り合わせた。

 

今年も村の衆で山の草刈りの時期がやってきた。馬吉は毎日働くが、持ち場が山頂に近く、家に帰ると倒れこむ。そんなある日、どうにも疲れた馬吉は草刈りをさぼる。翌日も、その翌日も。ところがある晩、出奔した父がやってきて、身体の弱い馬吉のために夜、持ち場の草刈りをするとおろくに言う。馬吉には黙っていてくれという父の言いつけを守るおろく。

しばらくして、馬吉は朗らかに家に帰りおろくに草は全部刈って仕事が終わったと報告し、ふたりで喜ぶのだが。

 

年に一度、薬売りが村にやってくる。兄のために薬を買うおろくにその薬売り(中野英治)はお六櫛をお礼だといって渡す。

歌川絹枝

月田一郎

夏川大二郎

おきぬの家にもやってきた薬売りの男は、おきぬにある話をする。

それは毎晩、お六櫛を買いに来る雪女の話で、村の男たちがその女の後をつけるが女は消えてしまった。ところが翌晩もやはり櫛を買いに来た。

その女に魅入られた少年が女の後をつけていくと、女は振り向いてこう言った。

「あなたは私を探して歩かねばなりません。諸国の村々、町々へ、お六櫛を配りながら・・私を探して、お約束。」そう言って女は少年にお六櫛を渡し、「きっとよ。ね。忘れないでね。」といって消えてしまった。

その少年は女の言った通り、旅から旅へ歩いています。諸国を歩き、幻の女を追い求め、お六櫛を配りながら・・・。そしてある村で夢幻に描き続けた娘さんに出会いました・・・という男。彼こそ、その少年であった。

その薬売りの愛の告白?を聞いたおきぬはその晩、姿を消す。

今でいう家出をしたのだ。

村ではおきぬがいなくなったと大騒ぎになったが、それを聞いたおろくは心当たりがあった。彼女は柏屋という町の宿屋にいるに違いないというのだ。

なぜわかったのか・・・その薬売りはおろくにも柏屋で待っているという書付けを櫛と一緒に渡していたのだ!

中野英治

この人、「スケコマシ」だったのだ!純粋無垢で世間を知らない村の娘を何人騙したのだろう!!その男の話にじっと耳を傾ける山田五十鈴の表情がよい。

山田五十鈴

間一髪、危ないところをおろくが迎えに来て一緒に村へ帰る。

村へ近づくとなんだか山が明るい。火がでたのか?おろくは家に帰って兄の馬吉に山火事だろうか?というと、馬吉は涙ながらに実は草は刈っていなかったという。

しかし、おろくは父が内緒で割り当てられた場所の草刈りは済ませてあるから自分たちのせいではないというが、そこへ太吉がやってきて、馬吉の父は間違えて他人の割り当ての草刈りをしていたのだとわかる。

結局、馬吉は父と同じに村から逃げ出さざるおえなくなった・・・。

この妹と兄の別れの場面で当時の観客の涙をさそったのかもしれないが、演出が私には古すぎ、おろくの歌川絹枝にセリフも「あっ!えっ!ううぅ!」等、大げさで独特なセリフ回しが鼻についてちょっとイライラしました。

やはり印象的だったのが、薬売りの話の場面で、これがなかったら☆ひとつな作品でした。

あーいった男って昔からいたんでしょうね。

今よりもっと娘さんは騙されやすかったでしょう。

この映画が封切られた昭和10年。確か成瀬巳喜男の映画冒頭、浅草六区が映し出され、そこに「お六櫛」の幟があります。ちょうど上映中だったんでしょう。

しみじみ古い作品だと思います。

 

 

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