日本映画1920-1960年代の備忘録

1920年代の無声映画から1960年代前半の日本映画

六人姉妹  1959年 東映

監督 堀内 甲 脚本 堀内 甲 瀬藤 祝

出演 不忍郷子 稲葉義男 大森暁美 島津千鶴子 本間千代子 伊東正江 

   小畑町子 佐藤栄見子 内田礼子

 

 

当時の中流家庭なので食うや食わずではないけれど、それなりに慎ましい生活ぶり。

 

建設会社の課長である父(稲葉義男)は妻(不忍郷子)との間に六人の子供がいる。

全員女で、それが四女の睦子(伊東正江)の口から語られて始まる物語。

風景や一家が住む家が本当に昭和の心温まる作品。

 

話の軸は長女、節子(大森暁美)が大学へ行きたいというが、男の子だったら行かせるが女が大学へ行く必要がないという当時の常識を言う父。

近くで美容院を経営している父親の妹(内田礼子?)は高校3年の節子に縁談話をもってくる。それを知った節子は反発。

二女の和子(島津千鶴子)はそのおばさんの美容室へ学校帰りに寄って手伝ったりしている。

三女の紀子(本間千代子)は栄養士に興味がある。

四女、睦子(伊東正江)と五女、敦子(小畑町子)は遠足に行くので新しいバッグが欲しいと父にねだるが・・・

 

毎日家事に忙しい母、それを手伝う長女。母が過労で倒れたり、姉妹で喧嘩したりの今ではみられない大家族の日常。

姉の気持ちを父に訴える二女、和子。

父は長女を大学へ行かせたらその下の子供たちも皆大学へ行きたいというだろう、そんな経済力はないと妻にいうが、妻は二女も三女もこれからの女は手に職をもって自力で生きていかないといけないと思っているという。

そんな中家事に多忙な母が倒れてしまった。

節子は倒れた母に代わって妹、和子と家計を預かる。いくらかかったのか計算すると生活していくのにお金がかかると身をもって知った節子は大学へは行かない決心をするが、父は美容室を経営している妹から「男の子だったら大学へ行かせるというのだったら、節子を男だと思って大学へ行かせたら?」と言われ考え直す。

兄に意見する妹

その晩、節子に大学へ行っても良いと言おうと思っていたが、入浴中に風呂焚きをしていた節子から大学へは行かないと言われ・・このシーンの節子に思わず涙(笑。

 

稲葉義男・大森暁美

二女役 島津千鶴子・三女役 本間千代子

左 五女役 小畑町子・右 四女役 伊東正江

六女役 美保子役 佐藤栄見子・稲葉義男

母 不忍郷子

父の妹役 (多分)内田礼子(という人)

跡取りというと男子だった時代はその後もずっと続きました。私もふたり姉妹だったので当時(1980年代)通っていたお花の先生からなんで母が男の子を産まなかったのだ?と私に言われても・・・ということを言われた記憶があります。その当時のおばさんたちは今よりずっと上から目線の人が多数でした。今のおばさんなんて大人しいもんです(私w)。

思い起こせばヒドイことを平気で言える世の中でしたが、それが(男子を産む=跡取り)世の常識であったから仕方ないですね。

私の知人にもなんと五人姉妹がいて(彼女は末娘の五女)、次は男、次こそ男と思って産んだ母親って大変だったと思いました。

で、今はそんなことを面と向かっていう人はいなくなりましたがまだ心の中で思っているひとはいるでしょうね。

ですので当時でしたらこの母親は周り近所からいろんなことを言われて(男子を産まなかった)辛かったと想像できます。父親も会社で言われてたかも。

 

ところで舞台が栃木なのでとちぎの大きな商店街が映ります。歴史のある町らしく今ではアーケードはなくなりましたがマップで確認できました。

やはり昔ほど栄えてはいないようですが。

銀座通り

映画冒頭のとちぎの商店街

 

子役で今検索できるのは大森暁美と本間千代子だけでした。

大森暁美

 

路傍の石  1938年 日活

監督 田坂具隆 脚本 荒巻芳郎 原作 山本有三

出演 片山明彦 滝花久子 山本礼三郎 小杉勇 井染四郎 吉田一子 見明凡太郎

   江川宇礼雄 潮万太郎 沢村貞子 松平富美子 吉井莞象 三島鉄

   星美千子 青木虎夫 須田大三

 

滝花久子・片山明

山本有三原作。この物語は小学生の頃読んでいたく感動しました。

 

昭和13年、出演俳優もみな若く、特に山本礼三郎ってこんな顔だったんですね。江川宇礼雄無声映画時代とは違って体格もよくなり、やはり気づきませんでした。この頃が一番ハンサムだった?かも。番頭役の見明凡太郎もよーく見て納得。小杉勇はこんな感じ(笑。井染四郎が一番美男子でした。子役で青木富夫に似ている男の子は須田大三という子役でした。

山本礼三郎

江川宇礼雄

見明凡太郎

井染四郎

須田大三

明治中期、高等小学校に通う吾一(片山明彦)は成績も良く、中学へ行きたいと願うが父(山本礼三郎)は家におらず、母、おれん(滝花久子)が袋貼りの内職をしている。

同級生で呉服店伊勢屋の息子、麻太郎(三島鉄男)は勉強はできないが中学へ行く。

麻太郎の妹のおぬい(星美千子)は吾一を贔屓には優しい。

おぬい役はなんと星美千子で、確かに星美千子だ!東映でポッとでた中年の女優さんだとばかり思っていましたが、子どもの頃から芸能界にいたんですね。なんと1927年生まれで存命中。

星美千子

近所の書店店主、稲葉屋の黒子(井染四郎)は成績の良い吾一を中学に行かそうと支援を申し出るが、そこへ父が帰ってきて断ってしまう。吾一の父は元士族であるというプライドが許さないのだ。

片山明彦・星美千子

結局、吾一は同級生、麻太郎、妹のおぬいの伊勢屋へ奉公することになった。

するとどうだろう。あれだけ優しかったおぬいは態度が激変。毎日目まぐるしく働く吾一が使いで駅へ行くと、東京へ行くという吾一の恩師、矢野先生(小杉勇)と見送りに来た稲葉屋の黒子がいた。吾一は矢野先生に手紙をくださいと言って別れることとなる。

杉勇・井染四郎

中学へ行った伊勢屋の麻太郎だが、宿題ができず、吾一にやってもらう。そうこうするうちに無理が祟った吾一の母が亡くなる。

吾一は麻太郎が貸してくれた教科書で勉強に没頭してしまい、伊勢屋の主人から商売人には向かないからと店を出されてしまう。東京の縁者の元へ行くことになった吾一はそれでも胸をふくらませ東京へ。

ところが久美田住江(沢村貞子)の家では彼女や彼女の妹、加津子(松平富美子)から小僧呼ばわりされてこき使われる。

沢村貞子・松平富美子

その家に下宿している医学生が潮万太郎と江川宇礼雄

潮万太郎・片山明

下宿代をためている豪快な絵描きの熊方(江川宇礼雄)は吾一にポンチ絵をみせて勇気づける。

江川宇礼雄

吾一は勉強がしたくて住江に昼間働くので夜に中学へ行かせてもらえないか?と頼むが一笑にふされる。ランプ掃除していた吾一はランプを全て投げつけその家を飛び出すのだ!

がんばれ吾一!な物語ですが、山本有三は当時の時代背景に影響され、断筆し、未完のままとなった。

島鉄男・片山明

 

わが生涯のかゞやける日 1948年 松竹

監督 吉村公三郎 脚本 新藤兼人

出演 森雅之 山口淑子 滝沢修 宇野重吉 清水将夫 三井弘次 加藤嘉

   村田知栄子 逢初夢子 清水一郎 殿山泰司

山口淑子森雅之

俳優さんたちのメイクが凄くてまるで北野武監督の戦場のメリークリスマス坂本龍一メイクを思い出しました。

関係ないんですが、ここ最近、去年の8月に買った外付けのキーボードのnキーが反応したりしなかったりで先ほどアマゾンで別なもおを苦乳しました

↑ と、いった具合で 別なものを購入が→別なもおを苦乳になってます(;'∀')

先ほど新しいキーボードが置き配で届きました。昨日購入しもう到着。アマゾンありがとう!一応、6か月保証らしいのですが、あまり期待していないで目についた一番安いエレコムのキーボードにしました(前のはバッファロー)。まだキーボードに慣れてない(;^_^A。

滝沢修

終戦前夜、ポツダム宣言を受け入れるべきだという軍?の重鎮、戸田光政を暗殺した青年将校、沼崎敬太(森雅之)は父を守ろうとした娘の節子(山口淑子)から切りつけられる。

終戦後3年経ち、 沼崎はは佐川(滝沢修)という男が経営する明星というキャバレーで手下として働いていた。彼はモルヒネ中毒にもなっており、薬をくれる佐川とは切っても切れない関係となった。佐川は戦後、愛国新聞という新聞社の社長でもあるがその陰で物資の横流しで儲けていた。

佐川のキャバレーに節子がホステスとしてやってきた。彼女は父の暗殺後、終戦となりすっかり変わっっていた。

キャバレーの女、みどり(逢初夢子)と初日早々取っ組み合いの喧嘩になる。

この時の節子(山口淑子)の蓮っ葉加減は半端ない。

山口淑子

逢初夢子

節子を気に入った佐川は愛人だった女(村田知栄子)をあっさり捨て、沼崎に節子に部屋に来るようにいいつける。村田知栄子は滝沢修に惚れていて純情な女。そんな役だったし若かったのでこれまでのイメージの村田知栄子ではなくて画質のせいもあってしばらくその女が村田知栄子だとは思っていなかった。

 

節子は佐川の言うことをきくとみせかけるが、言うことをきかない。

そんな節子に益々 佐川は燃えるのだ。

そして戦時中、検事だった義兄、平林(清水将夫)の就職先を佐川に頼むのだ。

平林は戦後、戦時中に苦しめられた民主主義の人間から憎まれ、いつも怯えて暮らしている。

そんな平林に佐川は経営する新聞社で経理の仕事をさせ、これで節子を自分の女にしようとするのだ。

このシーンで私は節子の本当の兄かと思ったけれど、平和主義者を父にもつ節子の兄が

権力をかさに着てヒドイことをした戦時中の検事だったのかと非常に不思議でしたが記事を書くためにあらすじを読むと義兄とあったので納得しました。

 

山口淑子森雅之

そんなある日、新聞記者の高倉(宇野重吉)が佐川を調べに彼のキャバレーへやってくる。そこで旧知の沼崎をみかけ、佐川の悪徳を暴くためだと沼崎にいう高倉。

宇野重吉森雅之

沼崎は佐川の命令で節子を佐川の別荘へ連れて行くが、ふたりは東京へ帰り、佐川のキャバレーで踊る。それを見た佐川・・・。

ところが沼崎は薬が切れ、佐川にクスリをくれと泣きつくと佐川は邪魔な平林と高倉を決闘させ、相討ちにしてなきものにすることを提案。クスリ欲しさにその条件をのむ沼崎がそこにいた・・。

クスリの恐ろしさが伝わるシーンでした。

清水将夫

三井弘次

佐川の手下のひとりにまだ毛がある若い殿山泰司がいました。三井弘次も手下のひとりですが、殿山泰司は一瞬映るくらいです。

殿山泰司

佐川は沼崎も手下(清水一郎)に襲わせるが、かすり傷程度で節子が面倒をみる。

その時ふと目にした沼崎の腕の傷・・・。

その後、モーレツなキスシーン!美男美女のキスシーンは美しかった。

見てからちょっと時間が経ってしまったのでうろ覚えですが、沼崎は決闘の最中に佐川を殺してしまう。

翌朝、節子と一緒に警察に自首。

 

こんな感じですが、戦時中に痛めつけられたのはもっぱら共産主義者じゃなかったんでしょうかね。まだ占領国日本時代の映画ですから、民主主義者(自由主義者?)が痛めつけられている風になっていますが、さすがに当時のGHQ共産主義が目の仇でしたから変えたんでしょうか。

佐川と一緒にいるインテリ風の加藤嘉はいまいち役どころがわからないけれど、佐川側であることはわかります。

加藤嘉

 

朱唇いまだ消えず  1949年 松竹

監督 渋谷 実 脚本 新藤兼人

出演 高杉早苗 佐分利信 久我美子 高橋トヨ 加藤嘉 杉村春子 清水一郎

   望月優子 三井弘次 佐田啓二

高杉早苗佐分利信

幼馴染だったふたりが再会し、男は妻子持ち、女は夫と死別して一人娘と母と暮らす銀座のバーのマダムとなっている。再び燃え上がる恋心に苦しむ男女!

あまり出来はよくない。新藤兼人脚本はとにかく時間が変なのだ。

朱唇ってルージュ?って読むんでしょうか。

 

母(高橋トヨ)の勧める男と結婚し、娘、君子(久我美子)をもうけた孝子(高杉早苗)だが夫とは死別し、今は銀座のクラブの雇われママをしている。

そんなある日、幼馴染で隣に住んでいた間宮利夫(佐分利信)と再会した。孝子も間宮も恋心を抱いていたが、間宮の父が外地に行くというので一家は引っ越していった。

孝子は母に間宮と結婚させてくれと頼むが母は反対し、彼女は17歳で君子の父となった人と結婚、死別したのだ。(このことは後半、母を責める孝子の言葉で語られる)

 

間宮も昔のことを思い出し、孝子のことが忘れられなくなる。友人(加藤嘉)に相談すると楽しくやればいいじゃないか、まるで中学生のようだなと笑われてしまう。

そんな友人には愛人がいるのだ。加藤嘉ってこういう役もしていたんですね。

佐分利信加藤嘉

孝子のバーのホステス(望月優子)は夫の死後、愛人がいたことがわかり、彼女は荒れる。そんな彼女をみて、間宮と会っていくと今後、自分も間宮の妻に対して同じようなことをするのだと心穏やかでなくなる孝子は間宮からの誘いを断るのだが、間宮は強引に孝子を歌舞伎や音楽会に誘うのだ。

望月優子

孝子は間宮に奥様に会いたいという。間宮家へ訪ねた孝子を間宮の妻(杉浦春子)とまだ幼い娘の恵美子は歓迎する。そんな姿にいたたまれず、孝子は間宮家を後にする。

これで間宮とのことは吹っ切れたと思う孝子だが、偶然、娘の君子が大学生風の男(佐田啓二)といるところを目にする。その晩、君子からその大学生と卒業後は結婚したいと言い出されるが肺病を患った男と(君子が嘘をついて孝子からもらったお金は彼の入院費だというシーンあり)一緒にすることはできないと猛反対。孝子の母はもう少し君子の言い分も聞いてやれというが、そこで孝子は過去に間宮との結婚を許さなかった母を責めるシーンがある。

三井弘次・高杉早苗

どうでもよくなった孝子はバーで酔う。孝子が立ちっぱなしで接客する演出ってどうよ?と思ったが、まぁお客さんの文句もないようなのでw。

そこへ亡き夫に愛人がいたと荒れていた待っちゃん(望月優子)が現れ、なんとこれから新婚旅行に行くのだと新しい夫を連れてくる(笑。

望月優子の夫役はなかなかハンサムであった。

よろしくという待っちゃん(望月優子)の夫

その晩酔った孝子のバーへ間宮が現れ、孝子はなんと熱海へ。銀座から熱海までのタクシー代っていったいいくらなのか?と庶民の私は気になったけれど、富豪となった間宮には関係ない話。

奥さんのことも子供のことも全て忘れて孝子は間宮と一晩過ごす決心をする。

この時の間宮は普通におっさん化していた。

高杉早苗佐分利信

高杉早苗佐分利信

ここで高杉早苗の入浴シーンがちょっと。しかし!東京から間宮の娘が熱を出したという知らせを受けた。間宮は悩む・・・。風呂からあがった孝子。

間宮は今夜は泊まって明日帰っても良いと言うが、孝子は東京へ帰ろうという。

 

バーのマダムである孝子を誘う間宮はなぜかいつも待ち合わせに夕方の5時というんだけど、その後、歌舞伎をみたり、音楽会へ行ったりでいつ孝子はバーで働いているのだろう?と疑問だったが、熱海へ行く晩はさらに時間軸がおかしくてバーで酔った孝子と踊りに行く間宮、その後ふたりはタクシーで熱海へ・・急遽東京へかえるのでまた駅までタクシーで行って東京行きの列車に乗るふたり。大船あたりではもう朝通勤時間?のような明るさ。ふたりは駅で一番列車を待ったのか?それとも夜行に間に合ったのか?

それにしても忙しすぎないか?監督は撮っていてなんとも思わないのか??

酔った孝子のバーはすでに結構な客がいて時間的には8時ごろ?その後、ダンスへ行き、9時過ぎとしても熱海到着って11時くらい?孝子も間宮も悩んだり口説いたりの時間がなさすぎだと思う。

何もなかったがこれでよかったのだと思う孝子は君子に卒業したらその学生と結婚しなさいという。

一方家に帰った間宮は娘の病状がたいしたことはないと知り安堵。そして良心の呵責からか妻を裏切っていたことを告白(裏切ってないんだけど心ということ?)。妻は知っていましたという(ひゃ~~~~~~)。

隣の八重ちゃん時代の高杉早苗はまだ16歳くらいで顔はふっくらしていたが大人(当時30歳くらい)になってシャープな顔立ちに。かたやまだ17,8歳の久我美子の顔はふっくら。その後、元々細い彼女もドンドンしまった顔立ちになった。

 

高杉早苗という女優さんはあの歌舞伎役者で世間を騒がせた市川猿之助の祖母に当たる人で猿之助の父の母だ。いとこの市川中車で俳優でもある香川照之の父、猿翁は彼女の長男だ。彼女が生きていたらどう思うだろうか。

 

バーが銀座にあったという設定なので三越の前(歌舞伎座方面)にあった地下鉄出入り口からでてくる高杉早苗のシーンがある。今はもうこの出入り口はないが「秋立ちぬ(1960年)」の時もこの出入り口がでてくる。

 

孝子と間宮が会うシーンは迎賓館赤坂離宮内部の噴水前で撮影したようで、当時「銀座カンカン娘」でも同じ噴水のシーンがあって結構撮影許可されていたのかもしれない。

この大きな木も迎賓館の敷地の中にあったようだけれど見事です。

 

迎賓館の噴水

家庭画報より

 

愛怨峡  1937年 新興キネマ

監督 溝口健二 脚本 依田義賢 溝口健二

出演 山路ふみ子 河津清三郎 清水将夫 菅井一郎 浦辺粂子 三枡豊 明春江

   加藤精一 田中春男 野辺かほる 田中筆子

清水将夫山路ふみ子

動画にアップされているけれど画質がひどくてみていて疲れた作品。なんとアマプラで視聴できるので再度見直し。多少画質は良いかな??程度で、どうもフィルムが酷いところはカットしてあるようで話が??な部分がありましたが、若い清水将夫河津清三郎が不鮮明でも見れます。その他、田中筆子(声で気づく)、浦辺粂子(これも声で気づく)の出演があり、また菅井一郎はいつもの安定な演技です。

 

信州の老舗旅館の若旦那、謙吉(清水将夫)は東京の大学を卒業した。父、安造(三枡豊)はまた東京へ行きたいという息子に帰ってくるという約束で東京の大学へ行かせてやったのだと反対する。

孤児のおふみ(山路ふみ子)はその旅館で女中をしているが、いつの頃からか、謙吉と相思相愛の仲となった。

ある日、旅の一座が旅館へ逗留することになったが、旅館の主人に呼ばれたおふみはそこで伯父だという一座の座長、村上藤兵衛(加藤精一)とひきあわされる。

亡き母は旅回りをしていた女だがおふみは伯父から言わせるとどこの誰だかわからない男との間にできた娘だという。伯父はおふみにこのまま旅回り一座に加わるように言う。

その晩、おふみは謙吉に必死で伯父さんは自分を売るのもいとわない男だからすぐ二人で東京へ行こうと煮え切らない謙吉を説得しふたりで汽車へ飛び乗る。

加藤精一・山路ふみ子・奥が三枡豊

東京に行った二人は謙吉の友人夫婦の部屋へ居候するが、謙吉は毎日何もせず、おふみは必死で仕事探しに出歩く。早く出て行って欲しい友人の妻(野辺かほる)は夫(田中春男)を急かして謙吉に言ってもらおうとするが頼りない夫は言うことができず、「もっと居てくれても良いのだよ」と言ったりするのがオカシイ。

清水将夫田中春男

夫をパパちゃんと呼ぶ妻(野辺かほる)って。

野辺かほる

業を煮やして妻は謙吉の実家である信州へ手紙を書き、父親が迎えに来る。

野辺かほる・三枡豊

おふみは同じアパートに住む流しの芳太郎(河津清三郎)の助けでウェイトレスの職を得て帰るとなんと謙吉は姿を消していた。

その時、おふみは謙吉の子を身ごもっていたのだ!悲しみに暮れるおふみだが芳太郎は警察に逮捕され刑事に連れていかれてしまう。

月日が流れ、生まれた男の子を謙太郎と名付けたおふみは養育を生業としている女(浦辺粂子)を通して赤ん坊を預けるが、(以下空想)レストランはクビとなり養育費のためにカフェの女給として働いて2年が経った。

浦辺粂子

芳太郎は刑務所から出所してまたアコーディオンを弾いている。ある晩、カフェに行くとそこにはすっかり変わったおふみがいた!

河津清三郎山路ふみ子・菅井一郎

その晩、羽振りの良い客(菅井一郎)の誘いで女給たちと料亭へ行ったおふみと芳太郎だが、なんとその客は払いをせずに先に帰ってしまうハプニング(笑。

(その後、セリフがよく聞き取れず、いきなりベンチのシーン)

二人が夜のベンチで話していると、おふみの伯父さん、藤兵衛と会う。そこで一座に誘われ、おふみは芳太郎と夫婦漫才をするようになる。なんと伯父さんがおふみの息子を連れ戻し、おふみは謙太郎を連れて全国を旅することになった。

河津清三郎山路ふみ子

なんだか突然伯父さんが良い人になっていて、なにかカットされてるのだろうと思う。

あれだけおふみが嫌っていた伯父さんですが以降、良い人なんです。

旅回りはいつも順調ではなく、信州へ着くころには一座は旅館へ泊るお金もなかった。

楽屋で寝泊まりする一座だが、舞台を見に来た謙吉の姿がそこにあった!

旅の途中、謙太郎が熱をだしており、謙吉は自分の旅館へ泊るように藤兵衛へいう。

おふみと芳太郎が舞台に立っている間に謙太郎は謙吉に連れられ医者に診てもらっているがそれに気づいたおふみは怒りにふるえ、謙太郎を抱きかかえ外へでようとする。

しかし、そんな寒空に赤ん坊を連れ出したら・・・と言われ、謙吉の好意に甘えることとなったおふみ。

 

両親は隠居して松本へ引っ込んだという謙吉はなんと、おふみにプロポーズ!

ところがおふみはもう騙されない。すると謙吉は謙太郎だけでも引き取りたいというがおふみは納得できない。しかし、心の中では旅回りの一座で育てられる謙太郎の行く末も不安なのだ・・。

 

芳太郎はなんだか寅さんみたいな男で、ワザと謙吉を恐喝しナイフをちらつかせる。

怒ったおふみは警察を呼んで芳太郎は逮捕され、おふみは謙吉の嫁となった。

ハッピーエンドかと思いきや、溝口健二監督だから絶対そうはいかない(笑。

 

謙吉が女を家に入れているという噂をきいて謙吉の父がやってくる。おふみをみて一緒にいたいなら宿屋は任せられないから二人で出ていけと言われるとまた優柔不断は謙吉は父に何も言えなくなってしまう。

おふみはそのまま謙太郎を抱くと・・・

最後はまたおふみと芳太郎が漫才をしているシーンで終わる。

 

いつまでも父には逆らえない謙吉でした。

山路ふみ子

よいシーンだなと思ったのは赤ん坊を預けたおばさんが行ってしまうシーン。

赤ちゃんを追う山路ふみ子

あかちゃんとの別れを待っているおばさん。タバコを吸っている

 

君と別れて 1933年 松竹蒲田

監督・脚本・原作 成瀬巳喜男

出演 水久保澄子 磯野秋雄 吉川満子 飯田蝶子 河村黎吉 藤田陽子 突貫小僧

   若水絹子 笠智衆 新井淳 富士龍子 小藤田正一 小林十九二 日守新一

   江川宇礼雄 関口小太郎 若宮満

 

水久保澄子

図書館で偶然目にした ジブリ鈴木敏夫氏の「新・映画道楽 ちょい町哀歌」。パラパラめくったら川島雄三の欄があったので借りました。彼の若かりし頃に見た映画の話でした。

1960年代後半の映画斜陽時代がメインでしたので私の興味ある時代ではなかったんですがエロ・ヤクザを全面に押し出した1960年代後半~70年代前半の日本映画も彼の考察を読むと興味が湧いたものも多少あり、アマプラ無料なら渡哲也でも見ようかなとおもっています。監督なら増村保造、女優は安田道代(現 大楠道代)の大ファンらしく、

なにかの試写会で大楠道代との対談も収録されているのですが、これは単に一ファンのおじさんを大楠道代が軽くうけながしている感じがしておかしかったです。

 

無声映画の「君と別れて」は前に見ましたが、その時はアップされていた画像がひどく、記事にするためにもう一度見ようと探したらDVDからアップしていた方の動画がみつかり視聴。やっぱりビデオテープからより市販されているDVDのほうが画質が違い、字幕も鮮明でした。

「新・映画道楽」の鈴木敏夫氏も言っていますが、再度見直すと結構記憶違いも多く、

さらにいつ(どの年齢で)その作品を見たかによっても感想は変わってきますね。

また、結末もうろ覚えで、この作品がそうでした。

なんとなく水久保澄子が死ぬ?のかと思っていましたが、さにあらず。

 

磯野秋雄

大森新地の芸者、菊江(吉川満子)は中学生の一人息子、義雄(磯野秋雄)とアパートで暮らしている。後輩の照菊(水久保澄子)はよく菊江を訪ねて義雄とも仲が良い。

芸者稼業など誰もやりたくないが、義雄を育てていくには仕方がない。

ここで菊江が白髪をみつけて訪ねて来た照菊に抜いてもらう場面がある。こういうシーンで中年になった芸者の悲哀をなにげなく見せる成瀬巳喜男っていいなぁ。

 

そこへ義雄の同級生(小藤田正一)が訪ねてきて義雄が学校へ行っていないことがわかる。

小藤田正一

母の悩みは尽きない。菊江はなんとなく自分の思いを伝えて欲しいと照菊に頼む。

照菊に言われれば義雄も素直に言うことをきいてくれるかもしれないと思う菊江なのだ。

当の義雄は不良の仲間と夜の蒲田周辺で恐喝やかっぱらいをしていた。

ある朝、母と喧嘩した義雄がアパートから飛び出すと照菊と出くわす。彼女は用があって実家へ行くので義雄も一緒に行かないかと誘われる。

移動の車内で照菊は義雄に自分たちはどう見えるだろう。兄妹?それとも恋人同士?なんてセリフ(字幕)がある。

 

照菊の家は父が働かず、妹(藤田陽子)・弟(突貫小僧)そしてまだ乳飲み子がおり

生活が苦しいので妹も芸者にしようと両親が言ってきている。帰ってきた照菊に置屋の女将に言ってくれたか?と訊く両親に照菊は妹は絶対に芸者なんかにはさせない。その分は自分がなんとかするというと父が激怒して喧嘩となる。

そのあと、義雄に「自分の親はこういう親なのだ。義雄さんは恵まれている。」という照菊。

 

照菊に触発されて不良と手を切る義雄だが、集まりに来ない義雄を呼び出し不良仲間は制裁を加える。しかし義雄はこれで手を切れると我慢する。そこへ照菊が駆けつけると

仲間のひとりが「お前の母なんか”みずてん”じゃないか」と言われ怒った義雄は万が一と思って持ってきたナイフを出す。不良も負けじとナイフで応戦。そしてそばにいた照菊が義雄をかばおうとして刺されてしまう。

このシーンは覚えていたので私は照菊がそのまま死んでしまい「君と別れて」なのかと思っていましたが・・

 

磯野秋雄・水久保澄子

照菊を見舞う菊江と義雄。照菊は義雄に住み替えで遠い所へ行くことになったという。

妹を芸者にさせないためなのだ。いっそのこと死んでしまいたかったという照菊。

 

別れの日。品川駅のシーンはもう涙、涙、また涙でした(笑。

 

最後の最後でお互い好きだと告白し、照菊は私を忘れないでという。

もうね、泣きます!あの時代、一度別れたらもう会うこともなくライン交換もない。

 

水久保澄子・吉川満子

ロケが大森新地と呼ばれたところで撮られたらしくグーグルマップで検索するのも楽しかったです。

 

水久保澄子は今でいうとアイドル系な顔をした女優さんですね。ほんとカワイイ。

ただその後は色々あって消息不明(没時不明)なのは悲しい。1916年大正5年生まれって私の祖母と同じ年ですが、まだ生きてますかね?(祖母はもちろんもう現存wしてません)

水久保澄子

 

女人哀愁 1937年 P.C.L

監督 成瀬巳喜男 脚本 成瀬巳喜男 田中千禾夫

出演 入江たか子 佐伯秀男 北沢彪 堤眞佐子 清川玉枝 御橋公 澤蘭子 

   大川平八郎 水上玲子 伊東薫 神田千鶴子

佐伯秀男・入江たか子

女人哀愁の記事は2回目です。このあたりの入江たか子は超売れっ子で一番輝いていたように感じます。前の記事では入江たか子の義妹のひとりが森川まさみって書いたんですけど、澤蘭子という人でした(;^_^A

澤蘭子 

上原謙・森川まさみ

 

もうひとりの義妹役の水上玲子という人は水上怜子ともあり、wikiにはないが結構な出演作がある。

水上玲子・入江たか子

河野広子(入江たか子)は銀座で働く女性。父は亡く、年老いた(といってもまだ若いが)母とまだ中学生の弟(伊東薫)と暮らしている。

いとこの北村良介(佐伯秀男)と仲が良く、良介の妹で高校生のよし子(堤眞佐子)はよく広子の家へ遊びにくる。

 

佐伯秀男・入江たか子

広子に縁談が持ち上がり良介に相談する広子。広子はみんなから自分の意見をはっきり言わない古い女だと言われることが気に食わないが、この結婚はうまくやっていけると思っている。

入江たか子北沢彪

婚家は夫、堀江新一(北沢彪)、義父(御橋公)、義母(清川玉枝)、義妹の洋子(澤蘭子)、道子(水上玲子)、小学生の義弟、お手伝いの女性がいる。

新一は会社の仲間から美人な奥さんをもらったと言われ、ワザと飲みに出かけて夜遅くに帰る生活を繰り返す。まるでそれを楽しむかのように(怒)。

義父母や義妹、義弟を手伝い、広子は忙しい毎日を送っているが義母はよくできた嫁だと思う。しかし義妹の道子はなんでもかんでも広子に頼む、わがまま満開な娘。

洋子は敏雄(大川平八郎)と暮らすようになるが、郊外の豪華な家で暮らしたいなどと敏雄を困らせる。自分のサラリーではとてもそんな生活はできないが洋子が好きな敏雄はなんとかしようとする。

しかしそんな貧乏暮らしが嫌になったのか洋子はまた戻ってくる。そこへ諦めきれない敏雄が訪ねてくるが洋子は会うのを拒否し兄で広子の夫、新一も一緒になって敏雄を追い返す。まぁこれは敏雄はストーカーになってますけど。

 

久しぶりに外出した広子は銀座でいとこの良介と会うがそこを新一の会社の同僚に目撃される。家には敏雄から電話があり、洋子に上野のホテルにいることを伝えてくれと言われた広子。彼女は敏雄の気持ちがわかるが、なんと敏雄は洋子のために会社の金を持ち逃げ?使い込み?していたのがわかる。

慌てて家に帰る新一は広子が銀座で男と会っていたのを責める。そして敏雄の居場所を教えろ、警察へ連絡するのだというが広子は頑として口を割らない。

そこで新一はそれなら出ていけというと広子の必殺の一言!が気持ちいい(笑。

堀江家の両親が広子に感謝しているというのも自分が便利に使えるからだと言う広子(拍手)。そして新一からは愛を感じられない。脅し文句で出ていけといった新一の態度の軟化がオカシイ。

日本髪姿の入江たか子

また働くという広子!未来は明るい。

1937年というと昭和12年で、こういった女性はほぼ皆無だったからこのような作品ができたんでしょう。入江たか子が働いていたのは今も銀座の同じ場所にある教文館

教文館内部のロケだと思われる

当時の女性観客からは応援された作品でしょうね♪♪