監督・脚本・原作 成瀬巳喜男
出演 水久保澄子 磯野秋雄 吉川満子 飯田蝶子 河村黎吉 藤田陽子 突貫小僧
若水絹子 笠智衆 新井淳 富士龍子 小藤田正一 小林十九二 日守新一
江川宇礼雄 関口小太郎 若宮満
図書館で偶然目にした ジブリ・鈴木敏夫氏の「新・映画道楽 ちょい町哀歌」。パラパラめくったら川島雄三の欄があったので借りました。彼の若かりし頃に見た映画の話でした。
1960年代後半の映画斜陽時代がメインでしたので私の興味ある時代ではなかったんですがエロ・ヤクザを全面に押し出した1960年代後半~70年代前半の日本映画も彼の考察を読むと興味が湧いたものも多少あり、アマプラ無料なら渡哲也でも見ようかなとおもっています。監督なら増村保造、女優は安田道代(現 大楠道代)の大ファンらしく、
なにかの試写会で大楠道代との対談も収録されているのですが、これは単に一ファンのおじさんを大楠道代が軽くうけながしている感じがしておかしかったです。
無声映画の「君と別れて」は前に見ましたが、その時はアップされていた画像がひどく、記事にするためにもう一度見ようと探したらDVDからアップしていた方の動画がみつかり視聴。やっぱりビデオテープからより市販されているDVDのほうが画質が違い、字幕も鮮明でした。
「新・映画道楽」の鈴木敏夫氏も言っていますが、再度見直すと結構記憶違いも多く、
さらにいつ(どの年齢で)その作品を見たかによっても感想は変わってきますね。
また、結末もうろ覚えで、この作品がそうでした。
なんとなく水久保澄子が死ぬ?のかと思っていましたが、さにあらず。
大森新地の芸者、菊江(吉川満子)は中学生の一人息子、義雄(磯野秋雄)とアパートで暮らしている。後輩の照菊(水久保澄子)はよく菊江を訪ねて義雄とも仲が良い。
芸者稼業など誰もやりたくないが、義雄を育てていくには仕方がない。
ここで菊江が白髪をみつけて訪ねて来た照菊に抜いてもらう場面がある。こういうシーンで中年になった芸者の悲哀をなにげなく見せる成瀬巳喜男っていいなぁ。
そこへ義雄の同級生(小藤田正一)が訪ねてきて義雄が学校へ行っていないことがわかる。
母の悩みは尽きない。菊江はなんとなく自分の思いを伝えて欲しいと照菊に頼む。
照菊に言われれば義雄も素直に言うことをきいてくれるかもしれないと思う菊江なのだ。
当の義雄は不良の仲間と夜の蒲田周辺で恐喝やかっぱらいをしていた。
ある朝、母と喧嘩した義雄がアパートから飛び出すと照菊と出くわす。彼女は用があって実家へ行くので義雄も一緒に行かないかと誘われる。
移動の車内で照菊は義雄に自分たちはどう見えるだろう。兄妹?それとも恋人同士?なんてセリフ(字幕)がある。
照菊の家は父が働かず、妹(藤田陽子)・弟(突貫小僧)そしてまだ乳飲み子がおり
生活が苦しいので妹も芸者にしようと両親が言ってきている。帰ってきた照菊に置屋の女将に言ってくれたか?と訊く両親に照菊は妹は絶対に芸者なんかにはさせない。その分は自分がなんとかするというと父が激怒して喧嘩となる。
そのあと、義雄に「自分の親はこういう親なのだ。義雄さんは恵まれている。」という照菊。
照菊に触発されて不良と手を切る義雄だが、集まりに来ない義雄を呼び出し不良仲間は制裁を加える。しかし義雄はこれで手を切れると我慢する。そこへ照菊が駆けつけると
仲間のひとりが「お前の母なんか”みずてん”じゃないか」と言われ怒った義雄は万が一と思って持ってきたナイフを出す。不良も負けじとナイフで応戦。そしてそばにいた照菊が義雄をかばおうとして刺されてしまう。
このシーンは覚えていたので私は照菊がそのまま死んでしまい「君と別れて」なのかと思っていましたが・・
照菊を見舞う菊江と義雄。照菊は義雄に住み替えで遠い所へ行くことになったという。
妹を芸者にさせないためなのだ。いっそのこと死んでしまいたかったという照菊。
別れの日。品川駅のシーンはもう涙、涙、また涙でした(笑。
最後の最後でお互い好きだと告白し、照菊は私を忘れないでという。
もうね、泣きます!あの時代、一度別れたらもう会うこともなくライン交換もない。
ロケが大森新地と呼ばれたところで撮られたらしくグーグルマップで検索するのも楽しかったです。
水久保澄子は今でいうとアイドル系な顔をした女優さんですね。ほんとカワイイ。
ただその後は色々あって消息不明(没時不明)なのは悲しい。1916年大正5年生まれって私の祖母と同じ年ですが、まだ生きてますかね?(祖母はもちろんもう現存wしてません)