日本映画1920-1960年代の備忘録

1920年代の無声映画から1960年代前半の日本映画

朱唇いまだ消えず  1949年 松竹

監督 渋谷 実 脚本 新藤兼人

出演 高杉早苗 佐分利信 久我美子 高橋トヨ 加藤嘉 杉村春子 清水一郎

   望月優子 三井弘次 佐田啓二

高杉早苗佐分利信

幼馴染だったふたりが再会し、男は妻子持ち、女は夫と死別して一人娘と母と暮らす銀座のバーのマダムとなっている。再び燃え上がる恋心に苦しむ男女!

あまり出来はよくない。新藤兼人脚本はとにかく時間が変なのだ。

朱唇ってルージュ?って読むんでしょうか。

 

母(高橋トヨ)の勧める男と結婚し、娘、君子(久我美子)をもうけた孝子(高杉早苗)だが夫とは死別し、今は銀座のクラブの雇われママをしている。

そんなある日、幼馴染で隣に住んでいた間宮利夫(佐分利信)と再会した。孝子も間宮も恋心を抱いていたが、間宮の父が外地に行くというので一家は引っ越していった。

孝子は母に間宮と結婚させてくれと頼むが母は反対し、彼女は17歳で君子の父となった人と結婚、死別したのだ。(このことは後半、母を責める孝子の言葉で語られる)

 

間宮も昔のことを思い出し、孝子のことが忘れられなくなる。友人(加藤嘉)に相談すると楽しくやればいいじゃないか、まるで中学生のようだなと笑われてしまう。

そんな友人には愛人がいるのだ。加藤嘉ってこういう役もしていたんですね。

佐分利信加藤嘉

孝子のバーのホステス(望月優子)は夫の死後、愛人がいたことがわかり、彼女は荒れる。そんな彼女をみて、間宮と会っていくと今後、自分も間宮の妻に対して同じようなことをするのだと心穏やかでなくなる孝子は間宮からの誘いを断るのだが、間宮は強引に孝子を歌舞伎や音楽会に誘うのだ。

望月優子

孝子は間宮に奥様に会いたいという。間宮家へ訪ねた孝子を間宮の妻(杉浦春子)とまだ幼い娘の恵美子は歓迎する。そんな姿にいたたまれず、孝子は間宮家を後にする。

これで間宮とのことは吹っ切れたと思う孝子だが、偶然、娘の君子が大学生風の男(佐田啓二)といるところを目にする。その晩、君子からその大学生と卒業後は結婚したいと言い出されるが肺病を患った男と(君子が嘘をついて孝子からもらったお金は彼の入院費だというシーンあり)一緒にすることはできないと猛反対。孝子の母はもう少し君子の言い分も聞いてやれというが、そこで孝子は過去に間宮との結婚を許さなかった母を責めるシーンがある。

三井弘次・高杉早苗

どうでもよくなった孝子はバーで酔う。孝子が立ちっぱなしで接客する演出ってどうよ?と思ったが、まぁお客さんの文句もないようなのでw。

そこへ亡き夫に愛人がいたと荒れていた待っちゃん(望月優子)が現れ、なんとこれから新婚旅行に行くのだと新しい夫を連れてくる(笑。

望月優子の夫役はなかなかハンサムであった。

よろしくという待っちゃん(望月優子)の夫

その晩酔った孝子のバーへ間宮が現れ、孝子はなんと熱海へ。銀座から熱海までのタクシー代っていったいいくらなのか?と庶民の私は気になったけれど、富豪となった間宮には関係ない話。

奥さんのことも子供のことも全て忘れて孝子は間宮と一晩過ごす決心をする。

この時の間宮は普通におっさん化していた。

高杉早苗佐分利信

高杉早苗佐分利信

ここで高杉早苗の入浴シーンがちょっと。しかし!東京から間宮の娘が熱を出したという知らせを受けた。間宮は悩む・・・。風呂からあがった孝子。

間宮は今夜は泊まって明日帰っても良いと言うが、孝子は東京へ帰ろうという。

 

バーのマダムである孝子を誘う間宮はなぜかいつも待ち合わせに夕方の5時というんだけど、その後、歌舞伎をみたり、音楽会へ行ったりでいつ孝子はバーで働いているのだろう?と疑問だったが、熱海へ行く晩はさらに時間軸がおかしくてバーで酔った孝子と踊りに行く間宮、その後ふたりはタクシーで熱海へ・・急遽東京へかえるのでまた駅までタクシーで行って東京行きの列車に乗るふたり。大船あたりではもう朝通勤時間?のような明るさ。ふたりは駅で一番列車を待ったのか?それとも夜行に間に合ったのか?

それにしても忙しすぎないか?監督は撮っていてなんとも思わないのか??

酔った孝子のバーはすでに結構な客がいて時間的には8時ごろ?その後、ダンスへ行き、9時過ぎとしても熱海到着って11時くらい?孝子も間宮も悩んだり口説いたりの時間がなさすぎだと思う。

何もなかったがこれでよかったのだと思う孝子は君子に卒業したらその学生と結婚しなさいという。

一方家に帰った間宮は娘の病状がたいしたことはないと知り安堵。そして良心の呵責からか妻を裏切っていたことを告白(裏切ってないんだけど心ということ?)。妻は知っていましたという(ひゃ~~~~~~)。

隣の八重ちゃん時代の高杉早苗はまだ16歳くらいで顔はふっくらしていたが大人(当時30歳くらい)になってシャープな顔立ちに。かたやまだ17,8歳の久我美子の顔はふっくら。その後、元々細い彼女もドンドンしまった顔立ちになった。

 

高杉早苗という女優さんはあの歌舞伎役者で世間を騒がせた市川猿之助の祖母に当たる人で猿之助の父の母だ。いとこの市川中車で俳優でもある香川照之の父、猿翁は彼女の長男だ。彼女が生きていたらどう思うだろうか。

 

バーが銀座にあったという設定なので三越の前(歌舞伎座方面)にあった地下鉄出入り口からでてくる高杉早苗のシーンがある。今はもうこの出入り口はないが「秋立ちぬ(1960年)」の時もこの出入り口がでてくる。

 

孝子と間宮が会うシーンは迎賓館赤坂離宮内部の噴水前で撮影したようで、当時「銀座カンカン娘」でも同じ噴水のシーンがあって結構撮影許可されていたのかもしれない。

この大きな木も迎賓館の敷地の中にあったようだけれど見事です。

 

迎賓館の噴水

家庭画報より