日本映画1920-1960年代の備忘録

1920年代の無声映画から1960年代前半の日本映画

なつかしの顔  1941年 東宝

監督 成瀬巳喜男 原作・脚本 成瀬巳喜男

出演 花井蘭子 馬野都留子

 

昭和16年の作品。34分ほどしかないけれどとても良くできている。

農村に暮らす花井蘭子の出征した夫が街の映画のニュース映像に出ているというので

母(馬野都留子)がまず見に行く。街までは遠い。節約するために歩いていると知り合いの荷車に乗せてもらったりする。なんともほのぼの。

愉しみにいた息子の顔は、息子が映っていたのかいなかったのか結局わからずじまい。

次に花井蘭子が見に行くが、義理の弟(といってもまだ子供)が模型飛行機を欲しがっていたのを思い出し、映画をみずにそれを買う。

足をくじいて家で寝ていた義弟と母には映画をみてきたという。

義弟も兄の姿をみたいけれど、足をくじいているので街までは行けない。

そして義理の姉が自分のために飛行機を買ったので映画はみていなかったことを知り、

癇癪をおこす。

 

そんな中、学校の先生がその映画ニュースを村で上映することになったと言いに来る。

今度は家族みんな兄をみれると思うと嬉しく思う弟だった。

そんなふうに映画は終わる。

戦時中、男はみんな兵隊にとられ、村にいるのは子供と女と老人ばかりな時代の話だ。

これは戦争映画(高揚)だろうか?今見れば微妙だけれど、軍が許可したのだからそうだろう。

戦地に行った息子を一目見たい母の涙はぐっとくる。

たった34分だけど短さを感じさせない。時間不足で意味不明なところが全くない映画。

出演者は花井蘭子しか知らない。