日本映画1920-1960年代の備忘録

1920年代の無声映画から1960年代前半の日本映画

にごりえ その2 1953年 松竹

にごりえの一番目の物語

よく考えると、なんてことない話なのだが、見た人が色々想像できる話。

さすが今井正

 

十三夜

 

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丹阿弥谷津子

 商家に嫁に行った丹阿弥谷津子が車で夜実家へ帰ってくる。

今夜は十三夜。父が迎え出て喜んで家へあげると座敷にはお月見の用意がしてある。

母が座布団をすすめる。綺麗な着物が汚れるから・・・という言葉とその家の様子で貧乏であることがわかるが、丹阿弥の弟は丹阿弥の夫の計らいで夜学で学んでいるらしい。

台所でお茶の用意をする母の元へ娘のほうから出向く。母は奥様がこんな台所に来てはいけない・・・というと、娘が泣き出す・・・。

夫が自分の出が貧しいということを責め、また外に女性がいる・・・辛くてやりきれない・・・この家へ戻りたいという。

 

母と泣きながら座敷へ戻る。父は縁側で月をみているが、父に娘が離縁してこの家へ戻りたい、どうか置いてくださいと頼む。母も娘に同情し、向こうの方から娘が欲しい、といって嫁にやったのに貧乏な家の娘だから・・・などと責めるのは酷い、こんなことではいずれ丹阿弥の幼子も母を馬鹿にするようになると悔しがって泣く。

 

ふたりの話をきいた父は静かに切り出す。

 

一人息子を置いて離縁するとその子は婚家の子供になる。この家で辛抱するというが、

どうせ辛抱するなら息子のいる婚家で辛抱したほうがよい。この家に戻ったら戻ったで息子にはもう会えないのだ・・という。

 

娘は・・・婚家に帰る。

 

夜学から弟が帰ってくる。母が車を呼んでくれという。

 

駒形まで・・・行く途中のさみしい通りで突然車夫がなんだか面倒になったからここで降りてくれ、お代はいらないと言い出す。

丹阿弥はびっくしてこんなところで降ろされては困る、せめて次の車が見つかるところまで乗せてくれというが、車夫はしゃがみ込んで煙草を吸おうとする。

困った丹阿弥は頼みながら車を降りる・・・せめて広小路まで乗せてくださいとふと車夫の顔をみると、彼は丹阿弥の幼馴染であった。

 

もしや・・・と訊くと車夫は丹阿弥であったことに気づく。

ふたりの会話から車夫は小川町のタバコ屋の評判の良い息子であることがわかる。

車夫は噂であなたが大家の奥様になったこを知り、一度お目にかかりたいと思っていたが、自分は不良になってしまい、親が結婚すれば真っ当になるかもともらった嫁は実家に帰しました・・・という。そして子供はチフスで死んだ・・・。

車夫の妻は病気かなにかで実家に帰っているのかときいた丹阿弥に車夫は離縁しました

という。。黙ってしまう丹阿弥。

 

丹阿弥は車を降りてふたりで広小路まで歩く・・・。

 

広小路へ着く・・・。

 

そこまでみると二人は昔淡い恋心があったのではないかと思わせるのだ。

 

さすが今井正(2度目 笑)

 

何事もなく(もちろん昔好きだったなどと言うこともなく)二人は別れる。

 

余韻が良い。

 

さすが今井正(3度目)。

 

ここでも丹阿弥のあの高い声、大家へ嫁いで奥様といわれている女性にピッタリな人選!

かたや車夫の芥川比呂志の痩せ方といい、あの顔つきといい、これも落ちぶれて車夫をやっている男にぴったり!

 

駒形の婚家に帰る丹阿弥、反対へ去る車夫・・・

 

その後そうするのか、どうなるのか、想像がふくらむ物語でした。

 

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ここでお別れします・・・といって別々の道へ別れるふたり・・