日本映画1920-1960年代の備忘録

1920年代の無声映画から1960年代前半の日本映画

どっこい生きている  1951年 新星映画社・前進座

監督 今井正 脚本 岩佐氏寿 平田兼三 今井正

出演 河原崎長十郎 中村翫右衛門 河原崎しづ江 飯田蝶子 木村功 岸旗江

 

昔、テレビでみてどうしても欲しくてDVDを購入した映画。数年観ていなかったので午後再視聴♪ 定価4000円くらいした高いDVD。今井正監督のDVDは高いけれど欲しいのがもうひとつある・・・「キクとイサム」だ。

私は2年ほど前、そのキクとイサムのイサム役の男性(奥の山ジョージ)と電車に乗り合わせたことがあった。彼が乗ってきたのは埼京線の十条だった。なんでわかったかというとその数日前にネットで「イサム」少年のこと調べていて成人した写真、そして時は流れ、姉の役をやった「キク」(高橋恵美子)もシンガーとなって彼女の舞台へ登壇した時の写真を見ていたからだ。

 車内は結構混んでいて所用を終えて赤羽駅から埼京線に乗った私は新宿へ進行方向左側のドア付近に立っていた。そこへ彼が乗ってきたのだ。池袋に着いて彼が降りる時に私は足を踏まれた・・・英語で謝られた(笑。

その間、私は彼に話しかけようかどうしようか迷っていたが、結局はなしかけられなかった。確か彼は歌手になってレコードを出したりしたようなのでその時もどこかで歌っていたのかもしれない。・・・と書いてWIKIをみると2018年4月26日付の赤旗新聞によると彼はずっと滋賀県草津に住んでおり70才で新聞配達に従事しているとある。

彼と遭遇したのは2019年4月なのだが・・。彼が手に持っていたのはガラケーだった。なんとなく十条に住んでいるのか?と思ったのだが、これが事実だとするとなにかの用事で東京へ出て来たのだろうか。

 

さて、この映画、極貧、極貧、また極貧。

河原崎長十郎は毎朝職業安定所へ通い日雇い仕事に従事しているが定員いっぱいで仕事にあぶれる時もある。家は掘っ立て小屋だがそこも立ち退きを迫られており、妻、河原崎しづ江は内職をしているが小学生の息子と娘を食べさせるにはおっつかない。

 

家は取り壊され、妻は子供を連れて田舎の姉のところへ行く。

原崎木賃宿に泊まりながらこれからどうしようか考えるのだ。

 

ある日、旋盤工募集の紙が電柱に貼ってあるのをみつけ、徴用工で旋盤工の経験がある彼は雇われることとなった。晴れて月給取りになったが月給をもらうまでの間、お金がない・・・それで雇い主に前借りを頼むのだが、やんわり断られる。それを聞いていた雇い主の女房に気味悪がれ、お金でも持って逃げられたら大変だから雇うのを断れ・・となる。そんなことも知らず、前借は諦め、かねてからの知り合いの木村功を訪ねる。

木村の住む寮?も一間に脳溢血で倒れ体の不自由な父、姉とその子供、妹がおりここも貧乏暮らしだ。河原崎の窮状を知って、同じ日雇いの飯田蝶子に話すと彼女は寮の人間を集め、月給日には返すという約束でみんなから400円ほどを集めてくれた。

喜んで金を懐に木賃宿へ帰るとここでも顔見知りの中村翫右衛門が就職祝いだと酒をおごってくれるのだ。ところが河原崎は飲み過ぎてしまい、木賃宿の人間にからんだあげく(以外と酒癖が悪い 笑)寝てしまう。

 朝、起きてみると懐の金が消えている。盗まれた!と騒ぐ河原崎だが宿主はお前が悪いと取り合ってくれない。

それでも旋盤工として雇ってくれた会社に出勤すると親会社から注文がなくなったからという理由で雇うのはやめたと言われる・・・。自分が前借したいと言ったのが原因でしょう?と詰め寄るが相手にされない。

 

木賃宿にも泊まれず、一晩歩きとおした河原崎は、木村の寮を訪れるがあいにく木村は留守だった。飯田蝶子に会って実は金を盗まれた・・・というと飯田は「また金を借りようとここに来たのか!」と激怒。寮のみんなから責められ木村は言い訳もできずその場を後にする・・・。

 

もうこの映画、男性版溝口健二みたいな展開(笑。

 

木賃宿へ戻るも金がなければ泊められないと言われる。

翌日、日雇い仕事もあぶれ、歩いていると中村翫右衛門がちょっと金になることがあるのだ・・・といって爆撃を受けた住居跡へ行き、そこの水道管を売ることを持ちかける。背に腹は代えられない。水道管と取り出した途端に裏からその家の管理人?元住人が現れ必死で逃げる。なんとか逃げ帰り、先に逃げた中村翫右衛門がいないかと木賃宿へ戻ると警察官がいた・・・。てっきりさっきの泥棒のことかと観念して上野署へ行くと、無賃乗車して警察に保護された妻と子供二人がいた・・。

田舎へ行ったはいいが、姉のところも4帖半一間に6人家族の乞食同然の暮らしだったのだ。

 

木賃宿へ戻ると中村翫右衛門が帰ってきて河原崎に金を渡す。盗んだ水道管を売って金に換えたのだ。

その金で河原崎木賃宿の個室へ移り、ごちそうを持ってこさせる。そして明日はいいところへ連れて行ってやると子供たちを喜ばすのだが、妻の河原崎しづ江はそんなお金があるのなら渡してくださいという。

 

翌朝、河原崎一家は遊園地にいた。子供達は楽しそうに乗り物に乗っている。

持っている金を使いきって親子心中しようと決心して来たのだ。

妻はもう一日待ってくださいというが河原崎は承知しない。

 

子供とブランコを漕ぐ河原崎・・・一心不乱に漕いでいる。

もう、その場面で涙涙なんですぅ♪。

悲しい場面をブランコを漕ぐということで十分表現できてます!

子供がびっくりするくらい大きくなる弧を描く河原崎ののったブランコ・・・

 

日が暮れてきた・・・子供達を呼んでさぁ死のう(と思っている)としている河原崎だが、子供がもっと遊びたいと言う。そしてボート乗り場の先で遊んでいるうちに湖に落ちてしまった息子。人々の子供が落ちた!の声・・・とっさに湖に入り子供の元へいく河原崎・・・抱きかかえまた戻ってくる・・・その顔はこれからも生きるのだという表情をしている。

 

追加  飯田蝶子の歯が・・・ない(笑。右上の歯がずらずらない)

    主役の河原崎長十郎は太りやすい体質で、他の出演者はやせていて問題はなかったが彼だけは太目でこれでは失業者にみえない・・ちょっと違うとキャメラマンが言っていたという(DVD付属のパンフレットより)

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