日本映画1920-1960年代の備忘録

1920年代の無声映画から1960年代前半の日本映画

鐘の鳴る丘 隆太の巻  1948年 松竹

監督 佐々木啓祐 脚本 斎藤良輔 原作 菊田一夫

出演 佐田啓二 笠智衆 飯田蝶子 英百合子 菅井一応 高杉妙子

   

戦後、親兄弟親戚を亡くしたり行方不明になったりして誰も頼る人がいない子供が浮浪児と呼ばれていた。そんな時代の3部作のうちの最初の作。

子役がたくさん出てくるが、みんなの演技力が凄くてびっくり(笑。

 

隆太を演じた男の子は後に俳優になったのだろうな・・・と思い検索しても見当たらず・・・

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隆太役の野坂頼明氏

が、なんとこの記事が見つかった

www.zakzak.co.jp

彼は大学を卒業後、大手鉄鋼メーカーに就職した。2017年のこの記事で彼は82歳と紹介されている。

映画に出たのは演劇好きな小学校の時の担任の先生に頼まれたからだという。

当時14歳。役と同じ年だ。

写真を比べると確かに面影が・・・(笑。

 

戦争から復員した修平(佐田啓二)。信州の叔父の家にいた弟、修吉が感化院から脱走して行方不明になっていることを知り、東京へ出て弟を探す。

弟が感化院へ送られたのは、叔父が言うことをきかない弟に手を焼いたからだが、

この叔父さん・・・佐田啓二と弟ふたりの存在をそもそも嫌っている・・らしいことがわかる。

 

新橋駅へ降り立って道行く男性にこの辺に浮浪児がいるところはないかと尋ねると、

あそこにもここにも、浮浪児は沢山いる・・と言われる。

 

カメラがパンしてそういった子供たちを映す。

 

集まって煙草を吸っている子供達に弟の名前を言って「知らないか?」と尋ねるが

子供達はそれよりエンタ(タバコ?)をくれとねだる。

そうしているうちに修平は道に置いたカバンを盗られ、追いかけて捕まえたのが

隆太という浮浪児だった。

 

一方、佐田啓二の弟、修吉も東京にいた。隆太のせいで警察署に一晩留置されることになった佐田啓二に謝ろうと道端で待つ隆太・・・そこへ修吉と一緒に脱走した男の子、二人が何をしているのだ?と話しかける。

ここでのふたりの言い合いが可愛そう。

隆太はいい兄さんだというと、修吉はお前の本当の兄さんじゃないだろう。俺には本当の兄さんがいて凄くいい兄さんなんだ!と言うのだ・・

遠くから聞こえる汽車の汽笛を聞いて、翌日、修吉は兄、修平のことを思い出し・・・子分と一緒に汽車に潜り込むが、、途中、車掌にみつかってしまい、なんと信州ではなく青森へ向かう汽車に乗っていた・・・捕まったらまた感化院へ送り返されると修吉は汽車の窓から飛び降りる。一緒の子は捕まってしまい、そのまま汽車は走り去っていく。

 

飛び降りて足を負傷した修吉を親切に医者へ連れて行ってくれた男・・・笠智衆

彼は修吉に同情し、自分と一緒に来ないか?と誘う。

なぜか笠は宿屋を転々としていて、ある夜、突然刑事が来る。

笠は流れながら泥棒をしている男だったのだ・・・。

 

一緒に逃げようという笠智衆だが、修吉はおじさんが泥棒ならいやだ・・・と言うと

笠は財布と自分が泥棒になったきっかけを話し、もし苦しくなって人のものを盗ろうと思ったkら、これをみて思い出せ・・・そうしないと俺のようになる・・・と初めて盗んだ小さいナイフをペンダントにしたものを修吉の首へかけてやるのだった・・。

 

ところが、笠はトラックで逃げる途中に運転を誤り道路に投げ出されて死んでしまう。。一人になった修吉。

 

東京では一緒に信州へ行って君たちのような子供が住めるところを作らないか?と修平は隆太を誘い、一緒に信州へ。しかし、叔父は浮浪児をつれてくるなんてけしからん・・と激怒するのだった。

仕方なく自分の土地で家を作ろうとしている”丘”へ行くが、隆太はそれを気にしていなくなってしまう。。

隆太を探して駅前の派出所へ行くと、警官から、今朝、町長宅に浮浪児の泥棒は入ったらしいが、町長が被害届をださなかった・・・ということを聞く。

あわてて町長(菅井一郎)宅へ行くと、町長は盗まれたのは「ごはん」で、子供がごはんを食べていただけだから・・・と笑っていた。

ところがその子供は、隆太を追って信州までやってきた仲間の浮浪児のひとりだった。

 

町長には一人娘がいて、心優しい彼女は、すぐにでも修平とその子たちの家を建てられるために小さい小屋をつくる手配をする。

そこへ隆太が帰ってきた。。

小屋ができれば生活できるが、修平の叔父が手をまわして町のみんなに食料を修平たちに売らないようにジャマをする。

困っていると、隆太を森で助けた山案内人の息子で同じ隆太という子が父に話、隣町から食用を調達できるようにしてくれた。

修平は安心して弟を探しに東京へ・・・

 

一方、修吉はまた東京へでてきて、今度こそはお金を貯めて信州行きの切符を買うのだと銀座で靴磨きをしている。彼の足は汽車から飛び降りたせいでビッコ(今はこんな言い方はできないのだろうか)になっていた。

ところが、ここは自分たちの縄張りだから、タバコを買え、という別な浮浪児にからまれる。自分はタバコは吸えないからいらないと言っても聞いてもらえず、兄貴分?であるチンピラに殴られる・・・ふと道をみると丁度都電に乗るところの兄、修平が目に入る・・・にいさん!と呼ぶが修平は気づかない。さらに呼んでも気づかず都電は行ってしまう・・・

さぁどうなる?どうなる?で隆太の巻は終。

 

修平と修吉のスレ違いは、なんだか「君の名は」を思い出した(笑。

 

セリフが多すぎて、そこまでセリフで言わせなくても(特に子役)、意味はくみ取れるよね・・と思うシーンがしばしあったけれど、子供もみるならこのくらい言わせないとわからないのかもしれない。子供に対しての教育的な映画(泥棒はいけない・・とか嘘はいけない・・・とか)と大人の偏見もいけない(浮浪児に対して)という映画でもあった。

 

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築地本願寺を背景に 佐田啓二