日本映画1920-1960年代の備忘録

1920年代の無声映画から1960年代前半の日本映画

有りがたうさん  1936年 松竹

監督 清水宏 脚本 清水宏 原作 川端康成

出演 上原謙 桑野道子 築地まゆみ 二葉かほる 河村黎吉 忍節子 石山隆嗣

   水戸光子 久原良子 高松栄子

 

昭和11年のロードムービー!8年ほど前から動画にあっぷされていて数回視聴した。衛星劇場で放映されたので一応録画。この映画で初めて桑野道子を見たと思う。水戸光子

「大阪の宿」で知ったけれど若い水戸光子が旅芸人で出演。朝鮮の女の子を登場させ、

自分たちが作った道を歩けないのは悲しい・・・と言わせているところが泣ける。当時は偏見がすごかったに違いないが、さすがの清水宏だ。

なにせ上原謙のいい男ぶりが感動もの!

wikiより

  天城街道を行く路線バスの運転手(上原謙)は歩いている人や馬や牛を曳いている人に道を譲ってもらうたびに「ありがとう」というのでみんなからは「ありがとうさん」と呼ばれている。映画でも彼の本当の名前は一切でてこない。

バスにはいろいろな人が乗ってくる。

話は不景気で東京へ売られていく娘(築地まゆみ)とその母(二葉かほる)のことを基本としている。

下田?から乗り込む前に茶店のおかみさん(高松栄子)からどこへ行くのだ?と訊かれて娘が人に言えない商売にうられていくことがわかる。

 

各地を渡り歩く女(酌婦?)が桑野道子。彼女は前にもありがとうさんのバスに乗ったことがあるらしく、彼のすぐ後ろに座り、なれなれしくタバコをねだったりする。

ここで彼女はありがとうさんに気があるのがなんとなくわかる。

 

道中、歩く旅役者から言付けを頼まれたり、工事が終わって今度は長野の行くという朝鮮の娘からこの地で亡くなった父の墓に花を供えて欲しいと言われたり、ありがとうさんは人気者だ。ところどころコメディがちりばめられていて面白い。

 

ありがとうさんはお金が貯まったので中古の車を買って独立し、運転手(タクシー?)になろうと思っているが、行きずりの女(桑野道子)は道中、東京へ売られていく娘とありがとうさんの気持ちに気づき、彼にそのお金で娘を助けてやってくれという。

 

かくして帰りのバスには東京行きをやめて母と二人で村へ帰る娘がいるのだった・・・

 

ここで売られていく娘役の築地まゆみという女優さんはこの映画の翌年、急性肺炎で亡くなったとある。映画出演当時、1920年生まれの15,6歳であった。

築地まゆみ wikiより

 

 

桑野道子もまだ若く1915年生まれで20歳ほど。それにしてもあの貫禄というか大人なのはすごいな。

上原謙と若干20歳の桑野道子

朝鮮の娘役で久原良子という女優さん。

日本の着物を着てみたいという朝鮮の娘役 久原良子

母親役の二葉かほる・・・セリフ回しが昔っぽい(笑。なんていうか水谷八重子とか栗島すみ子なんかに通ずる口調。当時かなりの年配でなんと1871年生まれ!の65歳!52歳で松竹に入社とある。ビックリ。

 

途中、東京で花嫁支度の買い物をしてきたという親子とすれ違い、東京へ売られる娘と母は心中哀しい思いをする。

忍節子と河村黎吉

ありがとうさんと話す旅役者の水戸光子。乗客の髭の紳士(石山隆嗣)が顔を出して

早くバスをださせようとする。

右手前が水戸光子

水戸光子は可憐で1919年生まれで16,7歳。ルバング島から帰った小野田さんが水戸光子がすきな女性のタイプだと言ったとか。この映画では声も可愛い。