日本映画1920-1960年代の備忘録

1920年代の無声映画から1960年代前半の日本映画

現代人 1952年 松竹

監督 渋谷実 脚本 猪俣勝人

出演 池部良 山田五十鈴 山村聰 小林トシ子 多々良純 望月優子

   高野由美

 

ずっと見たかった映画。もしDVDがあれば購入したいと思っていたが・・・

買わなくてよかった・・・とも思った映画(笑。

 

国土省建設局?の課長、山村聰は病弱な妻を(多分 結核)療養させ、一人娘

小林トシ子と女中と暮らしている。

なにかも物入りな彼は部下とともに建設業者、多々良純から賄賂をもらい、

銀座の女、多々良が影で糸を引く山田五十鈴を愛人に持っているが後ろめたい気持ちをもちながら日々過ごしている。

その部下が左遷させられ、次の部下が池部良だが、山村は自分の娘と結婚させてもいいかと考え、多々良に池部を紹介して欲しいと懇願されるが、池部だけは汚職に手を染めてほしくないのでなにかと都合をつけて断るが、勝手に池部へ接近した多々良から池部はすんなり賄賂を受け取る。

そのあっさりさは見ていてびっくり(笑。

 

池部の家は高架の下につくられた家で、父は「赤本」作り、兄と嫁、赤ん坊、そしてまだ小さい弟、母と暮らしている。

父からは「要領よく生きていけ」と言われ、積極的に多々良の会社に有利な入札を行い、多々良に気に入られる。

 

そんなことを知らない父、山村聰は、家にいる娘、小林トシ子と池部を引き合わせる。

池部は魅かれるが、小林はどうだかよくわからない。

 

ある日、池部と共に療養している母、高野由美のもとへ行った小林トシ子は、

池部に自分の望みは母がよくなって、父と三人、世界一幸せな生活を送ることだと言う。それを聞いた池部は、まず山田五十鈴山村聰を別れさせようと、あえて山村と寝て別れさせる。その後、自分と山田とも多々良からもらった小切手5万円を渡して手切れ金だと渡し、山田は「坊やにうまいことやられた」と自分を笑う。

 

多々良と手を切らせるためにある夜、山田のバーへ行くと多々良がいる。

池部もかなり酔っていて、翌朝起きると、多々良が床で血を流して死んでいる。

 

焦る池部は上で寝ている山田を起こし、あんたと自分さえ黙っていれば山村は罪に問われないというと山田も快諾する。

その足で職場へ戻り、みなが出勤する前に山村の部屋にある証拠になりそうな書類を探そうとするが、鍵がかかっていて開けられない。

そこでガソリンをまいて放火する。

 

裁判で、放火、殺人、汚職の罪を背負った池部。そんな池部のもとへ山村と小林トシ子が面会に来る。山村も自首しようと考えていることをいうが、池部は面会で事件のことを言ってはいけないなどといい自分ひとりが罪をかぶるつもりだ。

小林トシ子は私はあなたが好きだったと言われ、ひとり牢屋に戻った池部は非常に満足する・・・。

 

話の筋からすると、池部は「現代人」で、すなわち情に流されず、うまく世渡りする若者の代表?のようだが、もしそうなら、多々良殺しでもあっさり捕まるのではなくて

例えば、山田と共謀して多々良の死体をビルの屋上から投げて投身に見せかけ、罪からうまいこと逃げ、世間でもうまくやっていく・・・ほうが「現代人」の主旨からいったら妥当かと思うけれど、多分、犯人が捕まらずにうまいことやっていくという筋書きの映画が上映できないらしいから無理か(笑。

 

牢屋で小林から好意を示されたあと、私なら「え~~~!しまった!」と思い、死刑(池部がそう思っている)になるのはとても後悔すると思うけれど、池部は小林の好意がわかって満足・・・なだけってどうーゆーことか???偽善すぎる(笑。

 

山田五十鈴はこの映画ではショートカットだが、これには理由がある。

川本三郎の「君うるわしく」のインタビューで、監督の渋谷実は山田のことが嫌いで、

「あんな芸者みたいな女優は、現代のバーのマダムはできないでしょう」と言ったらしく、しかし監督の妻がそんなことはないと言ってくれたので出演できた。

だけれど、宣伝写真を撮ってみせると他の女優の名前をあげ、「水谷八重子みたいだ」

「山根寿子にそっくりだ」などと15日間言われ続けたという。

それで山田五十鈴が考えて「私、これしかできません」と監督にきった頭を見せたら、

「あんな長い髪切ったのか」といって態度が変わり、自分のシーンがどんどん増えていったという。

山田が自分の髪を洗う場面も監督が増やしたそうな。

 

クレジットの望月優子は池部と小林が訪れる温泉宿?の女中で、なんでわざわざ望月優子を起用したのかわからない。

お茶を運んで小林が怒って宿をあとにすると、芸者呼びましょうか?いい子がいるから・・・などというだけ。

ただ、この女中役、望月優子にぴったりでした(笑。