日本映画1920-1960年代の備忘録

1920年代の無声映画から1960年代前半の日本映画

泥だらけの青春   1954年 日活

監督 菅井一郎 脚本 新藤兼人 監修・4演出 吉村公三郎

出演 三國連太郎 乙羽信子 高杉早苗 山内明 柳谷寛 小杉勇 滝沢修

   加藤大介 十朱久雄 植村謙二郎 清水将夫 清水一郎 石黒達也

   三島雅夫 伊藤雄之助  下條正巳 岡譲二

 

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日活より

 

 

なんと菅井一郎監督作品。出演者が豪華でほとんど顔が映らないような役でも凄かった。菅井一郎の人脈だろうか。

 

ドサ周りをしている劇団一座。座員で主役を演じる加地(三國連太郎)と奈々子(乙羽信子)、そして里村(山内明)の3人はストリップを始めるという座長にはついてゆけず、東京へ戻る。奈々子はやはり役者を目指していた父親(大町文夫)の営む食堂兼飲み屋の三平を手伝い、そこを根城に加地と里村は映画のエキストラとして働くが生活は貧しい。

 

ある日、映画会社の北野(下條正巳)が新人のオーデションに応募しないかと加地に声をかける。なんとなく体裁が悪くて二の足を踏む加地だが奈々子にも勧められ、写真や履歴書を送るがそれを渡した北野の手違いでオーディションすら参加できなかった・・・。ところが映画会社の上層部に加地が目に留まり、新人でひともうけしたい映画会社が加地を採用。その相手役は人気女優の京極真弓(高杉早苗)で、会社の思惑通り大ヒット、加地は一躍有名人となり京極とも男女の仲になる。

映画人が集まるバーでも加地は人気者だ。同じバーで飲んでいた往年の二枚目俳優、坂上(岡譲二)は今は出演作品もないが挨拶にこない加地に生意気だと平手打ちをくらわすが、加地は用済みの俳優からそんな仕打ちをされても意に介さない。彼はもうトップスターなのだ。

 

里村と借りていたボロアパートを引き払い、加地は高級アパートへ引っ越してしまう。

そこへ里村が奈々子との結婚はどうするのだと訪問するが、加地はそんな約束はしていない・・・とケンモホロロの対応をする。奈々子はそのやり取りを部屋の外できいており、加地のことは諦めるのだった。

里村は、奈々子が加地に特別の思いを寄せていることをオーディションに送る履歴書を作る手伝いをする奈々子をみて感じていたのだ。

 

加地は高級車を買い、土地を買って家を建てる予定だが、自分の給料は安すぎると会社へ談判するも、取り合ってもらえない。そこで出演作品のボイコットをするが上層部は加地の代わりはいくらでもいるとわがままいっぱいの加地の代わりをみつけ加地はあっけなくお払い箱となってしまう。

 

加地はそれならと別の映画会社へ自分の売り込みに行く。すると雇ってもらえることとなったが、京極真弓を連れてくるという条件であった。

京極真弓の自宅へ行き、移籍しようと誘うが、彼女はスキャンダルなど起こしたら自分の将来はなくなる。この人気を保つためにもそんなことはできないと冷たく言われる。

彼女のほうが一枚も二枚も上手なのだ。

 

元の映画会社になんとかしてもらおうと加地の代わりにデビューした俳優の発表を開く料亭に訪問してみるがもう誰も相手にしてもらえず、京極真弓にも呆れられてしまった加地。

これまで自分をちやほやしてくれたバーでも女給は冷たい。そこへその新人をつれた映画会社の一行が現れると、今度は昔自分が「往年の二枚目俳優」からされたように暴行をくわえようとするがバーテンに殴られ、店からつまみ出されてしまう。

 

そこへ劇団で一緒だったらっぱの寛(柳谷寛)に発見されるが、先日、別の映画会社に売り込みに行った時に偶然あった里村は今はその会社で役者をやっており、奈々子と結婚するから結婚式に来てくれと言われたのだ。その夜が当日であった。突然現れた加地だが、自分は忙しいからと式場をあとにする。

 

そして加地はフラフラと街をさまようのだった・・・。

 

売れて有頂天になった男と堅実に俳優を目指した男の対比を描いた作品だけれど

なぜかインパクトというかなにかが足りない。

ただ、撮影での俳優陣と上層部、監督、スタッフの過ごし方や映画会社の上層部なんかのやり取り現実的な描写だろうと思う。

 

ほんのちょっとしかでなかった岡譲二、監督役でこれもただ寝転んでいる小杉勇

打合せする監督、清水将夫、脚本家の伊藤雄之助・・・別の映画会社の上層部の滝沢修と十朱久雄・・セリフも一言、二言だけ。

 

三國連太郎は松竹から東宝へ移籍後、五社協定を破って日活に出演した第一号の俳優とある(笑。

 

日活より