日本映画1920-1960年代の備忘録

1920年代の無声映画から1960年代前半の日本映画

命の港 1944年 東宝

監督 渡辺邦男 脚本 山形雄策

出演 長谷川一夫 竹久千恵子 山根寿子 月田一郎 井上正夫

 

戦争末期の国策映画ですが、戦意高揚より日本人の一致団結力の凄さに圧倒される。

同時に長谷川一夫と山根寿子の恋の行方もあって国策色はずいぶん和らいでいて今でも普通に観れる。作品の出演者が上記しかわからないけれど、他に三島雅夫下條正巳田中春男原ひさ子も登場。

 

この記事では若いふたりの恋愛模様について書きます。

沖中士の小野(長谷川一夫)は荷役の班を任されている男。一刻も早く前線で待っている軍に物資を届けるため日夜頑張っている。

荷役会社を一代で築いた社長(井上正夫)の娘、ゆみ子は結婚適齢期だが、父からの縁談話に結婚する気はないようだ。そしてゆみ子と小野に噂が立つ。小野には同じ沖中士の父(三島雅夫)をもつ綾(山根寿子)がいる。周りはさかんに綾に社長の娘と小野のことをいうので綾は疑心暗鬼になってしまうが、小野は周りがなんと言おうと気にしないと言う。

原ひさ子・山根寿子

そんなある日、輸送船に乗っているゆみ子の幼馴染(かな?)(月田一郎)が社長を訪ねてくる。陸にあがったので父親の墓参りをするというが、案内された応接間で綾からゆみ子に縁談があるときくと彼の顔はけわしくなった。

月田一郎

 

小野は彼が来ていると知り、ゆみ子さんと会っていくのだろうと訊くと会わずにいくという。ゆみ子とその彼はお互い好意があるが言い出せないのだ。

慌ててゆみ子を呼びに行くが夜まで行方がわからない。そうこうしているうちに彼は列車にのって行ってしまう。

長谷川一夫・月田一郎

なにかと相談事を小野に持ち掛けるゆみ子をみて、社長はゆみ子が小野を好きだと勘違いしてしまう。小野なら男気もあってお眼鏡にかなうが、なんとゆみ子が好きなのは輸送船の幼馴染であることが最後にわかる。

港を目指していた輸送船は敵艦から攻撃をうけたが、ゆみ子の幼馴染の活躍で無事港へ着くことができた。そこには荷役が待っている。船の荷物を今度は列車で輸送するのだ!幼馴染の活躍を知った社長は、(多分)ゆみ子との結婚を許すのであろう。

井上正夫

 

話の途中に朝鮮労働者がでてくるシーンがある。朝鮮でお嫁さんをもらいまた荷役で働く男を囲む和気あいあいなシーン(撮られたのは戦争中です)をみると彼らが日本の強制労働で奴隷のように働かされたばかりではないような気がする。

お嫁さんと帰ってきた朝鮮労働者のシーン

彼は朝鮮からお土産までもってくる。そして社長は日本にいる朝鮮の同僚(下條正巳)にも朝鮮へ帰って嫁さんをもらってこいというのだ。

下條正巳

話はズレますが、10年以上前、図書館で従軍慰安婦のことを書いた本を借りたことがあります。そこには九州から満州へ渡った女性達のことが書いてあり、日本人売春婦と共にその彼女たちをお姉さんと呼ぶ同じく日本で売春をしていた朝鮮人女性のことがでてきます。従軍慰安婦になると稼げるからだそうです。兵隊相手ですがちゃんと対価をもらっており、納得づくて行っているという記述でした。

その後、従軍慰安婦のことでかなり騒がれたんですが、嫌々行った人ばかりじゃないよね・・と思ってしまいました。その書籍をもう一度読もうと借りにいきましたがもうありませんでした。借りた時はそれほど気にすることもなかったので本の題名も忘れ、誰が書いたのかも忘れてしまったので探しようもありません。他国の非難が激しかったので公的な図書館ではそういった(日本を擁護するような記述のある)本はもうお目にかかれないのかもしれません。

 

竹久千恵子が長谷川一夫の亡き兄のお嫁さん、義姉役で出ています。

竹久千恵子で思い出すのは入江たか子と高田稔コンビで高田稔と将来を約束した入江たか子の産んだ赤ちゃんを高田稔と結婚した竹久千恵子が引き取るという残酷な話で、その役柄からかなんとなく嫌いな女優さんですが、彼女はアメリカ人と結婚し、戦前に渡米。子供の話だとお金がなくなると「ちょっと稼いでくる」と言って日本で映画に出演したという。

日米開戦後は日本へ帰国したようですが、終戦後はとっとと、渡米(笑。

竹久千恵子

この作品、役名などが載ったサイトが見当たらないので書くのに苦労しました。

 

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