日本映画1920-1960年代の備忘録

1920年代の無声映画から1960年代前半の日本映画

嫉妬 1949年 松竹 

監督 吉村公三郎 脚本 新藤兼人

出演 高峰三枝子 佐分利信 宇佐美淳 河村黎吉 三井弘次 磯野道子

   太田恭二 小宮礼子

 

一言でいうと、妻の浮気を疑った亭主関白な男の話・・・だが、

映画で 喜劇 嫉妬 とでるのが???

 

会社重役(専務)の夫 佐分利信に仕える妻、高峰三枝子

夫 佐分利信は外にダンサー?の女、磯野道子を囲っている。

家では高峰三枝子に興味も示さず、寝床も別で、まるで女中のような扱いだが、高峰はそれでも夫になにも言わず仕えている。

高峰三枝子には妹と弟がいるが、経済的支援を佐分利に受けていて、それも高峰は夫に申し訳ないと思っている。

夫の佐分利も、そんなお金は出したくないらしく、嫌みを言ったりして高峰三枝子を悲しませる。

高峰三枝子は何をするのでも夫に了解をとるのだ。(これで彼女の生き方がわかる)

逗子?で療養している弟の元へお見舞いに行くのも、恐る恐る夫の了解を取り付ける。

 

弟を見舞うとそこには弟の(学校?)先輩で新聞社にいる宇佐美淳がいた。

宇佐美に誘われ、自転車に乗った高峰三枝子は久しぶりに独身時代を思い出し、開放感を味わう。

 

それだけのことだったのだが・・・

 

暫くして宇佐美が高峰の家を訪ねて談笑しているとそこへ夫が帰ってきた。

ふたりの楽しそうな会話を盗み聞きした佐分利は勝手に妻の浮気を疑うのだ。

  佐分利はもう弟を見舞いに行くのはよせ・・・というと高峰は夫に素直に従うのだが、弟のために縫った浴衣?を宇佐美に持って行ってほしいので新聞社を訪ねることにする・・・

自分は愛人を囲っているのにも関わらず、いざ妻が浮気しているのかもしれないと思うと会社へ行くふりをして妻の外出の後を追う・・。

 

f:id:nihoneiga1920-1960:20210331142518j:plain

妻をつけて駅のホームから顔をのぞかせる佐分利が怖い(笑

その夜、佐分利は高峰を責めるのだ。女中にもたせればよかったのになんでわざわざ新聞社を訪ねたのか・・・と。

高峰はお願いをするのに女中を行かせるのは失礼だと自ら行ったと説明するが

嫉妬に駆られている夫は聞く耳をもたない。

お前は自分のものだ!と嫌がる妻を押し倒そうとするが拒否され、ますます怪しいと思ってしまう。

 

佐分利は会社では「夫婦はお互いを尊重し、力を合わせて・・・」なんていうのがここでいう喜劇か?

 

そんなある日、弟が危篤だという電報で慌てて高峰は療養所へ。

その後、佐分利が帰って高峰が療養所へ行ったと女中から聞かされ、自分も療養所へ行くとそこにはすでに宇佐美も来ており、その光景をみた佐分利はやっぱり浮気をしていたのだと怒鳴るのだ。

死にそうな義弟のことなど全く目に入っていない。

あまりのことに宇佐美が失礼だと怒ると、佐分利は宇佐美を殴る。。

高峰はすぐ自分と帰るのだ!という夫の怒りを鎮め、これ以上宇佐美に迷惑をかけまいと夫と家へ帰った・・。

家に帰った高峰に・・・弟が亡くなった知らせが届いていた。。

 

葬式が終わり・・・高峰は佐分利に離婚を切り出す。

佐分利はやっぱり、宇佐美と関係があるのだなと言うが、

潔白な関係の宇佐美とのことを、もうどう言われても結構です!と部屋をあとにする。

 

それを追って佐分利は・・・なんと土下座して出て行かないでくれ!というのだが、

佐分利が出勤中に高峰は家をでるのだ。

そして宇佐美を訪ね、離婚の決心を伝えると、今度は宇佐美から求婚される。

 

高峰三枝子は求婚は否定しなかったが、暫くは経済的にも自立して自分ひとりでやっていきたいと希望に燃えて答えるのだった・・・みたいな。

 

f:id:nihoneiga1920-1960:20210331144848j:plain

夫の付属物ではなく、自分として生きていきたいの という高峰三枝子

その間に佐分利と愛人の磯野道子とのことやその磯野道子のヒモ?である三井弘次の登場がある。三井が佐分利をゆすりに会社を訪れ、佐分利を殴ったりして驚いた部下の河村黎吉が警察を呼ぶ・・・ところなんかも少し喜劇風だが、全体にかなりシリアスで挿入音楽も暗くて重いので喜劇感は全くない。喜劇というより 悲劇(笑。

f:id:nihoneiga1920-1960:20210331150237j:plain

磯野明子のヒモ?役 三井弘次・・・ピッタリ笑

 

 

登場人物の中で知っているのは 4人だけだったが、もうひとり、ノンクレジットで

山内明?ではないのか・・・と思わせる人物。 セリフもない役で、会社に雇われた美人秘書?に惚れて貢いだ社員役で本当は彼女には夫と子供がいるのだが

その話を河村黎吉が佐分利にして「女は嘘をつく、女は信じられませんなぁ・・・」というところで出てくる。

f:id:nihoneiga1920-1960:20210331145202j:plain

弁当を食べる山内明?

そもそも、河村がしたそんな他愛ない話が自分の妻を疑うようになった佐分利に影響を与えた。

 

f:id:nihoneiga1920-1960:20210331145826j:plain

小宮礼子 独身と偽って入社したが夫と子供がふたりいる(笑

「見てくださいよ、あのしおらしい顔・・・それで子供がふたりもいるんですから、

それに夫を兄だとしゃぁしゃぁと紹介したんだそうですよ」という河村黎吉。

しおらしい=自分の妻、高峰三枝子もしおらしい・・・と思ったのか佐分利信!(笑。

 

最後は明るい感じで終わるが、宇佐美の求婚は現実的じゃないですね(笑。

まだ離婚も成立してない(家を出た と高峰は言っている)のに(結婚を前提に)

宇佐美と付き合えば不貞していたと思われて不利でしょう・・・というのが素直な感想でした。

 

脚本家と演出(監督)との意思疎通がうまく言ってないような、ちぐはぐ感がぬぐえなかった映画でした。

高峰三枝子貞淑でおしとやかな日本女性、美しさマックスで良かったですが。

 

f:id:nihoneiga1920-1960:20210331151055j:plain

新聞社で宇佐美を訪ねた 高峰三枝子

f:id:nihoneiga1920-1960:20210331151220j:plain

夫、佐分利信に離婚を切り出す・・