日本映画1920-1960年代の備忘録

1920年代の無声映画から1960年代前半の日本映画

警視庁物語 行方不明 1964年12月 東映

監督 小西通雄 脚本 長谷川公之

出演 神田隆 堀雄二 松本克平 花沢徳衛 今井健二 山本麟一 南廣 須藤健

   加藤嘉 大村文武 中野誠也 岡村文子 小林裕子 伊藤敏孝 水上竜子

   木村淑恵

 

山本麟一、小林裕子、須藤健

 

警視庁物語もこれで最後。なかなかの出来だったが、最後と思って作ったというより

まだ続く・・・といった感じの終わり方。もっと作って欲しかった。

 

 

捜査一課長(松本克平)は訪ねてきた古くからの知人で大和皮革の川原技術部長(加藤嘉)から技師が二人とも行方不明だと相談され、捜査課長から呼ばれた戸川主任(神田隆)。

早速、技師がいた研究室を調べると血痕の跡があり、同僚の村中技師(大村文武)から二人はその夜、残業し、言い争いをしていたという。いなくなった小山技師は大卒で、上司にあたる松井技師は専門学校卒で松井技師はそのことに劣等感があり、また小山技師の態度もほめられたものではなく、日ごろから二人はうまくいっていなかったということを聞き出す。松井技師は妻と離婚?別居?しておりキャバレーのホステス、すみ子(小林裕子)に入れあげていたが、そのすみ子にも小山技師のほうが好きだと言われ、そのことでも小山技師を恨んでいたようだ。

 

ところで・・・殺し専門の捜査一課がたかが二日間ほど行方不明の人を探すんだろうか?いくら捜査一課長の知り合いだからといって・・・これはおかしいんだけど、そのおかしさを忘れるくらいおもしろい映画なんです(笑。

 

 

刑事は松井技師が小山技師を殺して逃亡した・・・と踏んで聞き込みをする。

 

二人がいなくなった夜、松井技師と思われる男を乗せたタクシー運転手を呼んで

彼の写真をみせるが、なんと乗せたのは小山技師であることがわかった・・。

 

小山技師は宮崎県出身で、実家に問い合わせるがなんと彼は日本化薬の東京工場の研究室にいるという・・・。疑問をもちながらもその研究室を訪ねると、なんと大和皮革の小山技師は日本化薬の小山とは大学の同級生であり、苗字は同じだが名前は庄太であることが判明、そして彼は家の事情で大学を中退しているという。小山庄太は小山一郎の名前をかたって大和皮革へ入社していたのだ。

 

戸川主任は大和皮革で肉を溶かすという薬品にネズミを入れてみる・・・数時間後

なんとネズミは溶けて骨になっていた・・・。

そこで大和皮革の工場のある墨田区へ聞き込みをさせるとどうも気になることがあったという。肉を溶かす装置の一つから普段はみられない茶色い液体がもれているというのだ・・・。そしてその装置の中には人骨と腕時計が!その腕時計が松井技師のものであるとわかる。殺されたのは小山技師ではなくて松井技師だったのだ。

 

小山技師の行方を追って同じ社に努める女子事務員のアパートへ行く刑事。

3日前から小山技師が潜伏していたことがわかるが二人とも姿を消していた。

ただアパートに訪ねてくる男性はもうひとりいた。川原技術部長だった・・・。

アパートの住人はその部長はちょくちょく訪ねてきていたという。

 

川原技術部長の元へいった戸川主任。そこへ姿を消した事務員の美代(水上竜子)が給料の前借にくる。事情をきくと小山技師を浅草の喫茶店に待たせてあるというので

そこへ急行するがすでに小山技師の姿はない。

(この喫茶店、実際あった喫茶店のようだ 名前はベル)

 

浅草を探す刑事・・・小山技師がデパートの屋上へ・・・一足違いでエレベーターに乗った二人の刑事・・・やっと屋上へ着くと小山技師はあっという間に飛び降りてしまう・・・。被疑者死亡という結末であった。

 

この小山技師は中野誠也というハンサムな俳優さんなのだが、面白いのは彼は写真と最後に飛び降りた死体として登場する。回想シーンで登場させるのが普通だと思うんだけど、意外な脚本?演出はなかなかであった。

 

中野誠也

日本化薬の東京工場は実在する会社だし、墨田区八広近辺は確かに皮革工場が多い。

これにはモデルがあり、実際同僚を硫酸樽にいれて溶かした事件があった。

犯人は自殺を図ったが、結局懲役6年となったという・・・犯人側の事情はあるのかもしれないが殺人を犯してたったの6年って短いよね・・。