日本映画1920-1960年代の備忘録

1920年代の無声映画から1960年代前半の日本映画

鐵の兄弟  1939年 東宝

監督 渡辺邦男 脚本 小川正紀 原作 中野実

出演 高田稔 千葉早智子 伊東薫 小杉義男 清川虹子 

 

 

久々の戦前もの。まだアメリカとは戦争していないので劇中、英語で「干物」はなんていうのか・・なんていうセリフがある。

 

東京の鉄を扱う工場に勤める兄弟。両親を亡くし、兄(高田稔)は弟(伊東薫)を夜学に通わせ、兄弟助け合って生きている。兄は弟に学をみにつけてもっと上の学校(大学?)にも通ってもらいたいと願っている。

そんな二人の住むアパートに謎の女(千葉早智子)が引っ越してくる。アパートの女将さん連中は彼女が何者なのか噂話に余念がない。

千葉早智子清川虹子

その女には夫があるが、彼女が赤ん坊を産むと自分の借金200円を女をカフェの女給にすることによって返済させるような男だった。そのために彼女の赤ちゃんは里子にだされた。そんな暮らしが嫌になり、女は男の元から逃げ出してひとりアパートにやってきた。まともな暮らしがしたいと女は仕事を探すがうまくいかない。そこへカフェで一緒だった顔見知りの女(清川虹子)に街で出会った。カフェを渡り歩いたその女は今ここにいるからと名刺?マッチを渡す。

 

疲れてアパートへ帰ると、そこには夫が待っていた。また夫がやってくるかと思うと女は不安でならないが、男は里子に出した赤ん坊にあわせてやると女から50円を無心する。無職の彼女にそんな金はないがたまたまそのやり取りを聞いた兄弟の弟が女のために貯めていた50円を使ってくれと渡すのだった。兄には後で言えば納得してくれるから・・・と思った弟だが・・・

伊東薫

千葉早智子に懇願され、伊東薫は工場を休んで伊藤と部屋で夫を待つが、もちろん夫は現れない。そこへカフェの同僚だった清川虹子が赤ちゃんは前年の秋に死んでいることを知らされて涙にくれる千葉早智子

そこへ高田稔が弟が女に騙されてお金を巻き上げられたと勘違いし、千葉早智子に弟には近づくなと言う。千葉はその夜のうちにアパートを出るという・・・。

 

案の定 赤ちゃんは連れてこない

 

夜、弟に召集令状が。みんな口々に名誉なことだと喜ぶ(さすがに戦前の映画だよね)。アパートのみんなに集まってもらい弟の出征を祝う。そして千葉早智子と弟の件も明確になり、ハレバレとしていると見慣れない男がやってきて高田稔に用があると呼び出される。その男と一緒に倉庫?へ行くと千葉早智子の夫が仲間と一緒に待っていた。ところが夫が呼び出したのは弟のほうで、人違いだから帰れというが高田稔は帰らない。そこで喧嘩となるが高田稔から説得された千葉早智子の夫は一緒にアパートへ行くと、高田稔は弟が出征するから代わりにこの男が工場で働くのだとみんなに宣言し、その横で神妙なおももちで立つ男に念をおす。男はすっかり改心したようでそれをみた千葉早智子も安心する・・・みたいな映画。

 

出征の祝いの席で千葉早智子の夫を連れてくる高田稔

ハンサムな高田稔の弟役が伊東薫という子役からやってきた俳優さんなんだけど彼はハンサムとはいいがたい顔立ちだったw。なんとその後戦争に行って1943年に戦死したという。20歳という若さで戦死ですよ・・・。この映画当時はまだ16歳くらいだから夜学=高校ってことか。

職工姿の高田稔

 

いまいち謎なのは千葉早智子が無職状態ってところ。あの当時、女性ひとりでアパートなんて借りられるんだろうか?さらに収入がない人だ。映画ではひたすら子供を引き取って暮らしたい・・・ような感じだったが今でもシングルマザーとして生きていくのは大変なのに女給は嫌だし、だからといって昼の仕事は見つからないしの人がどうやったって子供と暮らせるのか・・と思った。まして保育園なんてない時代だし・・・。

ちょっとそのところが現実離れなんだけど、まぁ、いつも上流階級の役ばかりなイメージの高田稔が鉄鋼工場?で働く粗野な男性というのが珍しいので可とします(笑。

 

千葉早智子