日本映画1920-1960年代の備忘録

1920年代の無声映画から1960年代前半の日本映画

母は死なず  1942年 東宝

監督 成瀬巳喜男 脚本 猪俣勝人 原作 河内仙助

出演 菅井一郎 入江たか子 藤原釜足 沢村貞子 轟夕起子 清水将夫

   加藤照子 斎藤英雄 北沢彪 矢口陽子

 

菅井一郎が勤める証券会社が清算され、職を失った。息子はまだ11歳だ。

近所の藤原釜足は過去、菅井に勧められて買った株が暴落?して妻の入江たか子に文句を言っている。入江はコツコツためたお金の半分、200円(今ならいくらくらいか?)を藤原に差し出すが、藤原はそんなお金は受け取れない・・・と言い、逆に入江の行動を賞賛する・・・(え・・・

入江に文句を言いに行ったのになんでお金は受け取らないのか、なにか魂胆があるのかと思ったが、藤原も良い人だった・・・

じゃぁ、文句言いにいったのはなぜ?笑。

 

菅井は床屋の鏡を磨く薬品を売り歩くセールスマンとなる。

そして行く先々で鏡を磨いて(それも一生懸命)お得意先もできた。

そんなある日、入江が病に倒れ、医者に診せたときはすでに遅く(胃がん)床に臥す。

洗濯や料理は藤原釜足の妻、沢村貞子と息子と同い年の娘が面倒をみるが、入江は遺書を残して自殺してしまう。

 

菅井はセールスを辞め、職工としてある工場に勤め始めるが、ある日、誤って軍手を薬品の入ったバケツに落とし、それを乾かすと軍手が固まって硬くなっていた。

不思議に思ってそれを更に研究すると・・・「スガイライト」という製品を作ることができた。それを知った会社の専務、清水将夫が菅井に特許を会社に譲ってくれという。

菅井はお金はいりませんというが、(ここでも!笑)専務はそれでは亡き入江の墓前に供える花代だといって小切手を切る。

 

入江のために御影石の墓石を注文し、新婚旅行で行った中禅寺湖へ息子と行く。

一体専務からいくらもらったのだろう・・・今の300万円くらいだろうか??

 

息子はその後大学へ。菅井はスガイランプの社長となる。

 

息子の幼馴染の轟夕起子はお嫁に行く。

 

大学の仲間から将来の副社長と言われその気になった息子に菅井は世の中はそんな甘くない・・・などと言い、入江が残した遺書を始めて息子に見せる。

戦争が勃発し、菅井の工場も軍需工場として云々と工場の発足式で清水将夫から紹介されたりする。

息子は心を入れ替え、お祝の席で横に座った藤原に自分は朝鮮に行って働きます、父から帰ってこいと言われるまで頑張ります・・などという。

 

成瀬映画だから最初の失業からどれだけ暗くなるのだろう(笑 と思ったが、

さすがに時制には逆らえなかったのかお国のために頑張る日本男児?色が強くなり、

明るい未来?(じゃなかったけど 笑)を予感させる終わりになった。

 

ところで加藤照子が14歳になった息子と親し気に話す場面があるが、彼女、「まごころ」で入江の娘役の女の子だった。その時も可愛かったけれどこの映画でも可愛い+美人だった。

そして入江たか子はお化粧が変わったのか前より美人だった。昔は眉が細くて目元のアイラインが凄かったけれど、この映画では眉は普通になり目元のお化粧も濃くなくて入江たか子ってこんな美人だったっけ?(笑 と思った。

 

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菅井一郎とすきやきを食べる入江たか子

 

菅井一郎は脇役というイメージが強いけれど、この映画では堂々の主役です。

なぜなら入江たか子が前半で死んでしまうからです。

 

 

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証券会社を去る菅井一郎

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息子と中禅寺湖

 

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加藤照子 なんだか高峰三枝子に似ている