日本映画1920-1960年代の備忘録

1920年代の無声映画から1960年代前半の日本映画

幼きものは訴える 1955年 日活

監督 春原政久 脚本 八木保太郎 佐治乾

出演 加藤嘉 宇野重吉 高野由美 下元勉 安井昌二 北原三枝 田中筆子

   東野英治郎 河野秋武 浅丘ルリ子 多々良純 山岡久乃(山岡比佐乃)

   村瀬幸子 水村国臣(子役)大野佳世子(子役)石橋蓮(石橋蓮司 子役)

   大木功(子役)中村正紀(子役)

 

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南方で戦犯として処刑された将軍の遺児(兄・妹)の物語。

大人同士が恩給のことで喧嘩したり、妹が父親が絞首刑になったことで「首吊り、首吊り」と言われて近所の子供たちからいじめられたり。

 

将軍であった父が処刑され、病弱な母は嫁入り先の家を離れ、兄である勇作(宇野重吉)の家に間借りしていたがその母が死んだ。勝(水村国臣)と清子(大野佳世子)

は二人だけになってしまったが、そこへ鹿児島の祖父(加藤嘉)が子供たちを引き取るといってやってくる。昭和28年に軍人恩給が復活し、将軍であった父には年?10万円!という恩給がもらえるのだ。

伯父の勇作とその妻(高野由美)も病人だった妹の借金もあるし恩給がもらえなくなったら困る。そもそも祖父も恩給目当てなのだ。

結局、勝だけ鹿児島の祖父の家で暮らすことになり、その代わりに清子の分として年に2万5千円を祖父から受け取るということになるが、祖父は入った恩給の約束分を渡そうとはしない。勇作は妻からせっつかれ、鹿児島の家へ行くがそんな約束はした覚えはないと言われふたりは殴り合いを始める。

 

転校先での勝はやはりいじめられるが担任の先生(安井昌二)から今度ふたりで桜島へ行こうと励まされるが勝はそのまま妹のいる伯父の家へ行く。そこでまだ妹をいじめている近所の男の子たちをみて勝は追いかけるがそのうちのひとりがトンネル内へ逃げ込むとやってきた汽車にはねられて大けがを負う。その子の母親(田中筆子)は伯父の家へ文句を言いに行き、お宅は恩給をもらっているのだから賠償しろと言っている・・・。

 

勝はひとり汽車に乗り、家出をするが大阪で彼のことが記事になり、帝塚山に住む篤志家の家へもらわれていくことになった。そこには年ごろの娘(浅丘ルリ子)がおり、

ある日彼女から誘われて心斎橋へ映画を見ようとしているところで勝だけが補導されてしまう。補導係(河野秋武)は勝の顔をみて彼が将軍の息子であることに気づく。そこで勝に自分は部下であったが、勝を引き取ったという篤志家の男(多々良純山岡久乃夫妻)は将軍にすべての罪をかぶせ、将軍も何も言わずに処刑された。彼らは君を引き取ったくらいでその罪が消えるわけではないのだ・・・という。

これ、悲しい。

 

勝は帝塚山には帰らず、鹿児島へ戻るが妹が北海道のカトリック教会は楽園のようなところで働けるというのをきいて妹と北海道へ行く決意をする。留守の祖父の家から父の写真をとり、その際にみつけたお金を少しいただいて彼らは汽車へのる。

そこへキセル乗車しながら新聞を売っている戦災孤児のピカ禿げ(大木功)と遭遇する。ピカ禿げは広島の原爆をうけその時にできた傷が禿げになったのでそう呼ばれている。車掌が切符を改めに来るたびにピカ禿げは姿を消すのがオカシイ。

 

ところが道中家出の捜索がなされていた兄妹は鉄道警察にみつかって途中下車させられる。そこへ少年院から脱走した子が連れてこられるが彼らの仲間がガラスを割って気を引いているうちに子供たちは全員逃げ出す。

浮浪児の一人で勝も知っている黄金虫という少年のおばさんが青森で開拓しており

そこでみんなで働くのだと青森をめざした一行だが、おばさんというのは黄金虫の本当の母親でなんと彼は母親が死んでいたことを知る。

一方、ピカ禿げは鼻血をだし自分のことは探すなと置手紙をおいてどこかへ行ってしまうが近くの川で息絶える。彼は原爆病であった。

 

兄妹は北海道を目指す。ほかの子供たちは少年院へ帰った。

話にきいた教会を訪ねるもシスター(北原三枝)にここは対価を得るところではないと言われ迎えに来た祖父、伯父と共にまた鹿児島へ帰ることになる。

 

青函連絡船で青森へ行き汽車へ乗った4人だが、勝は祖父に「不良」と言われ

「おじいさんは恩給が目当てなんだ」と初めて悪態をつき発車前の汽車を飛び出し・・

 

え?え?え?えええええええーーーーーーーー

で終わる。

 

最後は衝撃だがあの年で〇〇ってよっぽどのことだろうと泣けた。

たくさんの巷の話を凝縮したような映画であながち作り話ばかりではないような気がする。

 

子役で石橋蓮司が登場。

 

こういった場面はない