日本映画1920-1960年代の備忘録

1920年代の無声映画から1960年代前半の日本映画

波 1952年 松竹

監督 中村登 脚本 大木直太郎 中村登 原作 山本有三

出演 佐分利信 淡島千景 津島恵子 桂木洋子 岩井半四郎 笠智衆 坂本武

   石浜朗 北龍二 谷よしの

 

 

山本有三といえば「路傍の石」にいたく感動した子供の頃を思い出す。

この作品は積極的な女性に対する男性の弱さ(つい フラフラとw)そしてこの子は本当に自分の子供か?という疑問にさいなまれる男の物語。大人向けです。

 

三人の女性が登場。

きぬ子(桂木洋子)は家が貧しく、学校を3年遅れで通っていたが芸者に売られてしまう。

きぬ子の担任が見並行介(佐分利信)。彼はなんとかしてきぬ子を学校に通わせたいと思うが、校長(十朱久雄)や同僚の園田(笠智衆)からは皆、最初はそう思うが救うことは難しいと言われ現実の厳しさを知る。

桂木洋子

ある日、芸者になったきぬ子が逃げ出してきたと見並の下宿を訪ねてくる。行くところがないときぬ子は一晩を過ごすが、見並は思わずきぬ子を抱きしめ、結婚。(ここはちゃんとしているw)。

ところがきぬ子は若い医学生瀬沼(岩井半四郎)と駆け落ちしてしまい、逃げた先の伊香保温泉へ行った見並は妻を取り返してくる。

岩井半四郎仁科亜季子のお父さんです。

若い岩井半四郎

その後、十月十日経ってきぬ子は男の子を産んですぐ亡くなってしまった。

男手でひとつで育てるわけにもいかず、窮状を察した同僚の園田の紹介で野々宮昴子(淡島千景)という女性に赤ん坊を預けることになる。

たまに昴子の家を訪ねる見並だが、赤ん坊がゆり籠で寝ている。そばには赤ん坊の衣類が入っている箱があり、どうしたのかと昴子に訊くと若い親戚だという男性が置いていったという・・・。若い男・・・

見並の心の中にふとこの子は自分との間の子供だろうか・・・と赤ん坊を抱きあげて鏡を見るシーンがある。そこから彼の苦悩が始まるのだ!

赤ん坊と自分を見比べるシーン

で第2の女性が昴子(淡島千景)。彼女は結婚しなかった相手の子供を身ごもったがその子も流産?してしまい、ミシンで生計を立てている。

淡島千景

第3の女性が昴子の妹で銀座の洋品店で働く襲子(津島恵子)。古風な姉と違って洋装の現代的な人だ。

津島恵子

見並は昴子に惹かれていたが、積極的な襲子のアプローチで一晩を共にしてしまう

って、男ってなんなの?(笑。

きぬ子と襲子のおもしろい共通点で見並のネクタイが曲がっているといって鏡を差し出すシーン。これ演出ならスゴイ。

きぬ子にネクタイが曲がっていると言われる見並

さらに襲子にもネクタイが曲がっていると言われ・・

ある日、昴子から襲子が妻子ある男性と付き合っているようなのでそれとなく訊いて欲しいと頼まれた見並は銀座で襲子と会い、結婚を申し込む(こーゆー見並は律儀だ)。

ところが襲子は結婚なんかして家のことに追われたくないと断り二人は別れることになる。

銀座の街角のシーンはロケのようで資生堂パーラーとか田屋の看板が見える。

右奥に田屋の看板

資生堂パーラーの角で別れる

一人息子の駿は小学生になったが、ある日、見並の足が悪くてビッコをひいているのを真似して見せて友達と笑っていた。それを知った見並は怒りに震えて家に入れずにいたが外で倒れていた駿は熱を出し、本当に足を引きずるようになってしまう。

そんな息子を見て、見並はなぜかホッとする。足が悪いなら遺伝だから自分の子供だと思えるからだ。しかし、医者は一時そうなっているだけで遺伝ではないという。

そういわれるとまたしても気持ちがモヤモヤする見並(わかる!)。

 

戦争が終わって6年経った。高校生となった駿は野球に忙しい。ある日しばらくぶりに昴子が見並を訪ね、今夜の夜行で神戸に発ち、スウェーデンに行くという。

お別れに海岸へ行き、見並は昴子へとうとう求婚するが・・

淡島千景佐分利信

最後は希望のもてる終わり方でした。

そうそう、松竹なので最後の大部屋女優と寅さん映画で呼ばれた「谷よしの」が伊香保温泉の女中役で出演してました。

セリフは「こちらでございます」でした。

左が北龍二・奥に谷よしの・右の後ろ姿が佐分利信