日本映画1920-1960年代の備忘録

1920年代の無声映画から1960年代前半の日本映画

乱れる  1964年 東宝

監督 成瀬巳喜男 脚本 松山善三

出演 高峰秀子 加山雄三 三益愛子 草笛光子 白川由美 柳谷寛 中北千枝子

   十朱久雄 佐田豊 浦辺粂子 北村和夫 藤木悠 西条康彦

 

高峰秀子

貧乏性なんで東宝名画座無料視聴期間でどれだけ見れるか・・気が気ではない(笑。

わからないのがアマゾンの管理画面でキャンセルボタンの表示がないから視聴期間が終わったら自動的に有料になるらしいが、それ以降じゃないとキャンセルボタンが表示されないのだろうか(;^_^A・・・・。東宝名画座のサブスクと言っても私が見たい邦画はそんなに多くなく、さらにすでに見ているものが多い。黒澤作品は過去ほぼ全部と言っていいほど見ていて、ブログに記事が殆ど無いのは、もう一度黒澤作品を見るのをためらわせるからだ(笑。その理由は「悪い奴ほどよく眠る」参照(^^)/

 

この作品も過去に数回見ているが、なんといっても最後のデコちゃんの表情が忘れられない。たまに見たくなる作品のひとつ。

 

18歳で嫁ぎ、たった半年でその夫が戦死してしまった酒屋の嫁、礼子(高峰秀子)。

戦後、義母や病に臥せった義父、その娘や息子のためにひとりで酒屋を切り盛りし、18年経った。すでに義父は他界、年老いた義母(三益愛子)と東京の大学へ行き就職したが帰ってきてブラブラしている義弟の幸司(加山雄三)と再建をはたした家で暮らしている。

時代はスーパーができてきた頃で、連日の大安売りで商店街の店主は客をとられ、

食料品を扱っている店主(柳谷寛)は将来を苦にして自殺してしまう。

ここでは商店主が集まって麻雀をして愚痴る場面なんかがあるが、そこで「個人商店がなくなると結局困るのは消費者なんだよね」というようなセリフになんて将来を見通したセリフなんだと松山善三に感心した(笑。実際、地方都市に限らず東京でも商店街は寂れまくり、車で郊外の大型スーパーへ行ける人はいいけど、昨今、高齢者は免許返納しろ圧力やら老いて自転車すら乗れなくなった時、近所の商店は多少値段が高くても頼りになったんだよね。家のそばの商店街も私が小さい頃育った町の商店街もアパートになったりシャッターだらけで寂れまくってます。最近も最後の最後まで頑張っていた八百屋がやめました。もう一軒、おばあさんが店番してた昔の下駄屋もやめたみたいですがそこ、サンダルとか長靴とか買うのに便利だったんだけどね。

 

話がそれました(;'∀')。

 

嫁に行った礼子の義妹(草笛光子)はある日、礼子に見合い話をもってくる。彼女がいうには礼子には自分の人生を出直して欲しいからとのことだが、礼子はそんな気持ちはなく、できれば幸司にお嫁さんをもらって酒屋を継いで欲しいと思っているのだが、義妹は、「将来は母だって死ぬんだし、そうなったら礼子さん、この家に居づらくならないのか?」というダメ押しの一言(なんか納得)

そんな話を訊いても義母はおろおろするだけだ。

 

幸司はいつもの調子で出歩き、礼子は幸司が心配で仕方ない。ある日、幸司を訪ねて若い女浜美枝)が酒屋に来る。応対した礼子に幸司が忘れていったのだといって幸司の腕時計を渡す。どういう娘だろうと彼女と喫茶店に行き話をきくが、彼女は他にもボーイフレンドがいるといい、いい加減な女のようだった。

 

酒屋の従業員(西条康彦)はこんなところにいても仕方がない、ボーイになるんだといって酒屋を辞めてしまい、幸司が急遽配達を手伝うことになる。

そんな折、義妹の夫(北村和夫)が酒屋をやめてスーパーにしないかという話を幸司に持ち掛ける。幸司も乗り気だが、礼子を重役としてスーパーに残して欲しいというと彼は事務員として給料払ってやればよいとにべもない。

幸司は自分たちのために酒屋をここまでにしてくれた礼子を追い出すようなことはできないと思うのだ。

それだけでなく、幸司は礼子が好きなのだ。

 

突然の幸司からの告白で礼子はたじろぐ。幸司と結婚するなんてもってのほかで道徳的ではない(当時はね)。しかしそれ以来、礼子の心が動揺していく。

反対に幸司は今どきの(っていうか昭和30年代の若者らしく)なんで礼子がそんなことを気にするのかわからない。

 

ある日、礼子は店を休んで母、義妹ふたり、幸司に話があると集まってもらう。

そこで自分には好きな人があり、これからは自分のためだけに生きていきたいからと家を出るというのだ。突然のことで義母はまたおろおろしだし、娘に礼子を止めて欲しいというが、義妹たちはまるで自分たちが追い出したみたいになるのは嫌だとトットと帰ってしまう(笑。

 

幸司は義姉が言ったことは嘘だと礼子を責めるが、礼子は家をでてひとまず新庄の兄の家へ帰るという。

 

清水から東京行きの列車に乗ると、なんと幸司がいる。山形まで送っていくというのだ。困ったような顔をする礼子をしり目に幸司は屈託ない。

乗り換えの上野で幸司は礼子にハンドバックを買ってくる。

夜行列車が山形を目指す・・・そして礼子は幸司にここで降りようと途中下車。

そして銀山温泉へ行くのだ。

 

自分も幸司が好きなのだと気づいた礼子だが、いざ幸司と部屋に入ると

やっぱり幸司を拒否してしまう。そのまま幸司はおばあさん(浦辺粂子)が一人でやっている食堂?で酒を飲む。お婆さんに年をきかれ、25だというと自分の息子も25だった。戦死した・・・と言われるシーンがあってこれもなんだか忘れられない。

 

幸司から旅館にいる礼子に電話があり、このまま温泉の女の子と一晩過ごすというので礼子は安心して一晩ひとりで過ごす。

朝になり、何気なく外を見るとどうも騒がしい。すると担架で誰かが運ばれている。

顔まで毛布がかぶせられていたが出ていた手の指に巻かれた”こより”を目にした礼子はそれが幸司であるとわかる。昨夜、昔話をして幸司の指に巻いたのだ!!

 

慌てて旅館を飛び出すと番頭がお連れさんが崖から落ちたようだと声をかけられ・・・担架を追って駆けだす~~~。

朝もやの中駆ける

で、あの表情。最後はどんどん担架が運ばれていってしまうが、そのまま立ち止まる・・ってとこで終わり。

いいね~。成瀬巳喜男

殆どの人は幸司が自殺したと思うけど、セリフは「崖から落ちた」としか言っていない。だから自殺したのか誤っておっこっちゃって死んじゃったのか曖昧なんだよね。

(酔ってたし)

そして途中で立ち止まっちゃう礼子。彼女はその後どうするんだろう。

普通なら担架に追いすがって泣く!ってのが定番だけどこれじゃ面白くないでしょう。

その後の礼子がどうするかも見た人によって想像が違う。こういう作品が作れるのって成瀬巳喜男が一番だと思う。

加山雄三は大根だと思うんだけど、なんだかこの大根加減がこの若者の役にうまくはまっている(笑。

 

ところで先日、成瀬巳喜男wikiを読んでいたら成瀬巳喜男をコンビを組んだ名カメラマン玉井正夫があるインタビューで「その発言は、成瀬さんが死ぬ間際に弱気になっていたからこそ出た言葉ですよ。成瀬さんは、高峰秀子を個人的には好きではなかったですよ」という発言をしている。

”その発言”というのは成瀬を見舞った高峰秀子に「白一色の幕を背にして高峰秀子が一人芝居をする」という奇抜な作品の構想を語ったが、(死んじゃったので)実現しなかったということに対してだという。

 

ひゃ~~~~~(笑。

ただ個人的に好きではなかった女優さんっていうのはなんだかわかるような気がする。

(それ以上は言いませんが 笑)

監督って自分からこの女優を使いたいっていうのと、会社からこの女優でいけ!と言われるのと2種類あると想像します(知ってる方教えてください)

 

アマゾンより