日本映画1920-1960年代の備忘録

1920年代の無声映画から1960年代前半の日本映画

冬構え 1985年 NHK

作 山田太一

出演 笠智衆 沢村貞子 小沢栄 藤原釜足 岸本加世子 金田賢一 せんだみつお

www2.nhk.or.jp

1985年 山田太一/笠智衆NHKドラマスペシャルの老人三部作の2話目。もっぱら日本映画専門チャンネルで過去何回も放映されてます。確か去年?か一昨年も録画したんで見た記憶はありますが、なんだか初めてジワジワ感ずるものがありました。藤原釜足がいう最後のセリフは大いに納得。もっと年齢がすすめば現実感が凄すぎてもう見たくなくなるかもしれない(笑。

にやけた不真面目なキャラをよく演じていた小沢栄(小沢栄太郎)の病院のベッドで死を待つしかない老人、夫の浮気に長年苦しめられた高齢女性(沢村貞子)、家族が出稼ぎでひとり留守番している老人(藤原釜足)、そしてなんとかしてふたりで店をもちたい夢がある若い恋人(金田賢一・岸本加世子)。主人公(笠智衆)は妻を亡くして6年経つが、息子や娘、孫とはうまくいっている。ただそれは彼らとは別居しており、まだ自分に手を煩わせることがないからだと感じている老人だ。

 

NHKアーカイブスより

岡田圭作(笠智衆)は東北新幹線鳴子温泉へ向かう。気ままな一人旅だ。豪華な宿に泊まりたいとタクシーの運転手(せんだみつお)に案内されたホテルに部屋を取る。

そこで部屋を担当した麻美(岸本加世子)に2万円のチップを渡す。こんな大金は受け取れないという麻美だが圭作はかまわないといい、喜んだ麻美は恋人でホテルの板前をしている昭二(金田賢一)に報告する。チップ禁止だった麻美はそのことは知らせずにグレードの高い部屋にするように支配人に話し、圭作はもう一泊することにした。

さらに麻美に3万円のチップを渡す。麻美は圭作の話から昭二と二人の店の開店資金を貸してもらえるかもしれないと考えるようになるが、昭二は仏頂面で取り合わない。

翌朝、旅立つ圭作。ある意味圭作のお金をあてにしていた麻美は昭二が料理長と喧嘩したのを皮切りに二人で圭作の後を追うべく働いていた旅館を後にする。

 

その後、圭作は旅の途中で浅草からひとり旅をしているという高齢女性、アキ(沢村貞子)と知り合い、その夜は同じ部屋で過ごすことになる。風呂からあがったアキだが実は明日、盛岡で夫と待ち合わせしているのだと告白する。夫の浮気には泣かされ、それなら私もと思ったけれどやはりそういうわけにはいかないと言う。

笠智衆沢村貞子

八戸に昔同僚だった男性(小沢栄)を訪ねると病院へ案内される。そこには余命いくばくもない元同僚がいた。彼の妻はもう4年前からこの病院にいるという。いまでいう認知症?らしい。家に帰りたいと言う元同僚に圭作は何もできない。

ここで圭作が死のうとしていることがわかる。近々死ぬ元同僚は必死で圭作に死ぬなというが、彼はまた死にたいのに死なせてくれない病院のことを圭作に愚痴ったりしていたのがなんとも皮肉。

全財産を景気よく使い切ろうと思っていた圭作だが、なかなか散財することができない自分がいる。

 

青森観光をしていると追いかけてきた麻美・昭二が偶然圭作の乗るタクシーとすれ違い、彼らはまた再会する。何かにつけて店のことを切り出そうとする麻美だが昭二は金のことは言わないようにと釘をさす。八戸の駅前でふたりを降ろし際、圭作は新聞紙に包んだ150万円を昭二へ投げてよこし、そのまま去ってしまうが麻美の話からなにかを感じた昭二は能天気に喜ぶ麻美をしり目にその後、また探し出した圭作を連れて実家のある下北へ行くことにする。

金田賢一笠智衆・岸本加世子

家には昭二の祖父(藤原釜足)がひとりで留守番しており皆、青森に出稼ぎに行っていると言う。

昭二は祖父に若い自分が圭作に説教なんてできない、じいちゃんに10万円やるから圭作に「人間は生きているのが一番だ、とかなんとか言っくれないか?」と頼む。

若い二人が外ではしゃいでいる。家には老人二人きり。

孫が「生きていろと言ってくれと言ったが、自分はそんなことは言えない・・」

とポソリ一言。わかる~~。

若い時から老け役をしてきた笠智衆が本当に老けた時の枯れた演技、死を待つだけで死なせてくれないという小沢栄(小沢栄太郎)、藤原釜足の最後の一言、山田太一がこれを書いた時、彼はまだ50歳前後だった。そんな若さでこんなに高齢者の気持ちが想像できたなんて。彼の表現、言いたかったことは現在も解決されていない。それにしても当時の社会は皆、考えもしなかった老人の心中を1980年代にここまで描ける山田太一

今なら麻美と昭二のようなカップルなんていないでしょう。今は下手したら殺されちゃう大金を持ち歩く高齢者。しかも現在は150万円なんてそんな生易しい金額ではないお金を騙し取られる高齢者。騙されるのは高齢者だけじゃなく、若者から中高年に広がった。山田太一ならどういうドラマを書くだろう。

思い出しましたが、藤原釜足沢村貞子って結婚していたんですよね。別れましたが。

藤原釜足はこのドラマが遺作となりました。80歳没。

岸本加世子は当時売れっ子でこのような若い、キャピキャピして元気いっぱいな役ばかりという印象がある女優さん。富士フィルムのお正月のコマーシャルにも登場してましたがいつのまにかあまり見なくなり、しばらくして主婦の脇役のドラマをちょっと見た記憶がありますが、若い時のキャラから抜け切れず・・・眉の当時流行った太系眉のまま。うまく変化できなかった?。金田賢一も当時は流行りの若手でしたが今はどうしているんでしょう。

 

 

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