日本映画1920-1960年代の備忘録

1920年代の無声映画から1960年代前半の日本映画

刑事部屋 1956年 大映

監督 森一生 脚本 野上徹夫 原作 樫原一郎

出演 北原義郎 細川俊夫 三井弘次 嵯峨三智子 林成年 山形勲 浦辺粂子

 

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角川映画より

 

東映チャンネルで視聴。1956年の刑事ものなので派手なアクションはないけれど地味でも私の好きな映画。

事件が起こると警察官が一軒一軒刑事の家を回り呼びに来るという本当に連絡方法がメンドクサかったのがよーくわかる(笑。

 

大阪の警察がかなり協力したらしい。刑事の奮闘ぶりが描かれている。

 

山形勲は妻をなくし、娘の市川和子と小学生くらいの息子と暮らしている。休みや夜遅くでも呼び出しがあれば出勤していく刑事とその家族のことが途中、途中で理解できるようになっている。よくできている脚本。

また潜入捜査官のひとりに三井弘次が扮している。最後の最後まで彼が刑事であることはわからないように話が進行するのでおもしろい。

 

悪役は細川俊夫。その細さが悪役になんかぴったりだった(笑。

情婦役が嵯峨三智子。山田五十鈴の若い頃を彷彿とさせるスラっとして色気のあるびじーん(美人)(⋈◍>◡<◍)。✧♡

 

林成年は警察官だが、拳銃を奪われてしまいなんとかしようと街をうろつく。

その母親が浦辺粂子。息子の復職を願う母親の必死さの演技に見入った。

 

別の刑事の妻は夫が何日も家に帰ってこないので下着を届けに行ったり、たまたま街で見かけた刑事の夫が容疑者の女と歩いているところを目撃しなんと浮気をしていると勘違いして怒ったり、事件のことばかりでなく刑事の生活の厳しさや家族のことがちょこちょこでてきて楽しめた。

 

主役は北原義郎だがなんだか懐かしい顔。

 

北原は兄の家に兄の家族と同居している。ここでもやはり兄の子供達を動物園に連れていくという約束を果たせなかったことを食事中に子供達に文句を言われている。

 

事件が無事解決し、彼は甥や姪と動物園へ行く。

子供達が動物を見ている。北原はベンチへ。そこへアナウンスがあり、北原が呼び出される・・・するとそれを察知した子供たちがベンチへ・・。北原はそのまま歩いていってしまう。ちょっと恨めしそうに動物園を途中で後にする(であろう)子供達・・・

こんな終わり方も洒落ててよかった。

 

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娘の修学旅行 1956年 大映

監督 水野洽 脚本 高橋二三 池上金男

出演 潮万太郎 市川和子 星ひかる

 

衛星劇場で視聴。衛星劇場東映チャンネル最高♪

 

43分ほどの物語。大変よく出来ている!出演者は上記の3名しか知らないけれど、

潮万太郎が主演てすごいと思った(笑。

 

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角川映画より

銀座のサンドイッチマン、潮万太郎はチャップリンの変装などで人気があり、同僚にも慕われている。彼には田舎に残した娘がいる。妻は亡くなっている。

 

娘が修学旅行で東京に来るという。潮万太郎は娘には社長だと言っていたのだ。

困った潮を助けようと同僚のサンドイッチマンが潮を社長にして娘を旅館まで迎えに行き、銀座を案内するのだ。彼らは色々な工夫をして潮が社長に見えるようにする。

例えば銀座を歩いている潮に車で通りがかった知り合いの偉い人に扮したサンドイッチマンが挨拶し、娘に秘書役のサンドイッチマンが政界の偉い人です。などと言い、娘を感心させる。

 

朝から潮がいないので探し回る広告社の社長。

そこへ潮の会社が見たいと言い出した娘の願いを叶えようと広告社にやってきた潮一行に気づいた社員が「社長、税務署が来ました」といって現像室?へ閉じ込める。

その間、これが父の会社だとやっぱり感心する娘。

 

昼ご飯はいきつけの飲み屋の女将も協力してその店の座敷で親子水入らずの楽しい食事となる。

 

夢のような一日を過ごした娘は旅館へ帰ると同級生が街へ行きましょうと誘われる。担任の先生も一緒だ。

夜、ある住宅設備会社の店先に人が集まっている。サンドイッチマン二人が芸をしているが・・・なんとその一人は自分の父だった・・・気づいた娘は何も言えず夜を迎えた。翌朝、また父が運転手付きの車で迎えに来たが、娘は父とは出かけなかった。

 

がっかりする父。結局娘に社長ではないことが知られてしまったとわかった潮は素直に反省し、娘は田舎へと帰る。

サンドイッチマンとなって相棒とふたり線路の陸橋で汽車を見送るのだった。

 

・・・ちょっと最後の記憶があいまいですが、こんな感じの物語。潮の娘を幻滅させないように奮闘する人達。途中、社長に見つけられるが、その前に事情を知った社長は潮を娘の前では「社長」と呼んだりして悪人はでてこない。

他愛ないけどいい感じ。

潮万太郎の主演てやっぱりすごいな。

ここに星ひかるという人がでているが、この人の母が「朱と緑」にでていた帝劇の女優、東日出子という人だ。

 

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アマゾンより

 

女歌謡シリーズ 女のみち  1973年 東映

エロ続きます(笑。

東映チャンネルで 女歌謡シリーズという映画をやっている。最初は野川由美子がでていた映画を冒頭少しみたけれど、おもしろくなくて途中からみていない。このシリーズ、梅宮辰夫が主役で毎回違う設定、違う女優さんのシリーズのようだ。

 

中島ゆたかという女優さんを私は森雅之の娘、中島葵と勘違いしていて彼女がでるのならと録画。キャストをみるとなんと角梨枝子の名前が!!

 

ぴんからトリオのヒット曲、「女のみち」というだけあってぴんからトリオ中島ゆたかがいるクラブ?で唄っている。中島が雨宿りをしている女を傘にいれ、そのまま自分の働くクラブへ誘う。そこに中島ゆたかの兄と紹介された梅宮辰夫がいて・・・

で結局、その女は梅宮辰夫の母が経営するお座敷バー?に売られるのだが、なんとその母役が角梨枝子。

 

ショーッ――――――――――――――――ク!

 

なんて役ひきうけたのだろう・・・・。

 

調べる限り、結婚した様子ではなく、お金が欲しかった?のだろうか・・・。

いくらなんでも酷い脚本、女の裸と梅宮辰夫がやたらとモテる男の夢のような映画で

やっぱり途中で見るのを止めた。

角梨枝子はこの映画を最後に映画出演はないようだ。

キーハンターにも出演とあるが1973年前後で映画界から姿を消したようだ。1928年生まれだからこの映画ではまだ45歳なんだけれど、やはり女優が歳をとると厳しい現実が待っているのだ。

もう映画が女の裸を売りにしないと成り立たなかった時代に突入!

だけれど脱ぐのはその後消える女優さんばかり。

梅宮辰夫ってこういう映画に出演していた時が全盛期だったのね(笑。

エロ事師たちより 人類学入門 1966年 日活

監督 今村昌平 脚本 今村昌平 沼田幸二 原作 野坂昭如

出演 小沢昭一 坂本スミ子 田中春男 ミヤコ蝶々 近藤正臣(新人)

   佐川啓子(新人)中村雁治郎 西村晃 菅井一郎 北村和夫

   殿山泰司 園佳也子 

 

www.nikkatsu.com

 

今村ワールド炸裂のなんだかわからない映画(笑。

このDVDは米アマゾンで5枚組?の一枚として持っている。今村昌平の映画は

なんだか重苦しくて見直す気になれないものが多い。アマゾンプライムで無料視聴できたので見てみたが、内容はすっかり忘れていた。

 

近親相姦?

小沢昭一の父はやっぱり菅井一郎だったが、殆ど顔が映らないのでキャストをみてやっぱりと思った。

 

なんと若い近藤正臣坂本スミ子の息子役出てていたが、しばらくわからなかった。

娘で中学生の佐川啓子という人はその後、経営学入門よりネオン太平記、女番長 仁義破り という映画に出演した後のことはわからない。今村昌平の映画にでた新人の女優さんはほぼ使い捨て?のような気がする。

 

佐藤蛾次郎も出ていた。少年院を一緒に脱走し、佐川啓子の元へ訪れる役。

 

比べると昔のエロってそんな大したことないと思った映画(笑。

 

近藤正臣が結婚するという女性はなぜか下着姿で坂本スミ子のいる病院の廊下を歩いてきてサングラスをとり、最後に笑顔のアップ。

 

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いかにも1966年の若い女性 もう70歳は過ぎているでしょうね

 

洲崎パラダイス赤信号 好きなショット 1956年 日活

昨夜、何十回目か忘れたけれど洲崎パラダイス赤信号を見る。

 

新珠三千代三橋達也勝鬨橋にいる

 

「俺なんか死んじゃえばいいんだ」という三橋に

「二言目には死ぬ死ぬって、人間死ぬまで生きなきゃならないんですからね」

という新珠三千代のセリフが最高

 

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新珠三千代三橋達也

お昼もまだだった・・・・と洲崎橋の袂で言う新珠三千代と座り込む三橋達也

その前に千草の女将、轟夕起子が店の明かりをともす場面があるがセットだと思う。

非常にうまくつないでいてセットとロケの切り替えがすごい。

 

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千草に砂利運びをしている若者と女の子が相談があると夕方来るが、そこへ洲崎の年増、田中筆子が焼酎を飲みにやってくる。

「私なんかこんな年季の入った体で若い娘と一緒に並ばせられるんですからね・・・」

とおかみにこぼす。脇で座って煙草をふかす新珠三千代も良い。

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田中筆子

前にも書いた(と思う)氷やは、あの突貫小僧=青木富夫で、

千草の女将に「今年はあんあmり氷も出ないでしょ」と聞かれ

「なにしろこう梅雨が明けなくちゃねぇ」というセリフだけ。まぁ、氷やだからね(笑

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轟夕起子と青木富夫

新珠三千代扮する蔦枝が神田のラヂオ商、落合(河津清三郎)とすしを食べた後に洲崎弁天内の小屋にいる場面は何度見てもいいなぁと思う。

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河津清三郎の酔っ払い具合が最高なのだ

すっかり真面目になった三橋達也だが、蔦枝がまた千草を訪ねてくる。女将は今蔦枝にあったら、三橋はまた元の生活に戻ってしまうと思い、蔦枝に会わせまいと出前の帰りの三橋に用事があると引き止める。

この実際の洲崎橋の袂と千草の店のショット♪

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三橋達也轟夕起子

三橋のいる「だまされや」という蕎麦屋は女将に言わせると「電車道を渡ってちょっと行ったところ」なのだが、去年、実際歩いてみると(洲崎からだまされやのロケ地)ちょっとどころか徒歩20分はかかる。

 

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だまされやを訪ねた蔦枝が歩く

乾物屋というお店が確かに昔はあった。私も覚えている。まだ巣鴨の地蔵通りには残っているが、最近は行っていないのでまだやっているのかはわからない。

現在の美術館通り

だまされ屋は餃子屋に、生花店はやっていないが、薄くflowerという字が見えるので花屋はやっていたのだろう。隣の乾物屋は政治家の事務所?で貸しているようだ。

映画で見ると随分間口の広いお店のようだが、今はこんな感じ

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左端がだまされや、入船生花店、そして伊豆屋という乾物屋だった

今日は、千草の女将の夫が刺殺された後の梅雨明けのような天気だ。

 

仙台で新聞みてびっくりしたという落合。いなくなった蔦枝の行方を実は聞きに来たのだ。

「女の執念というのは恐ろしいもんだねぇ・・」

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洲崎橋にはいなくなった三橋達也を思うのか、玉子=いづみちゃんが佇む。

そして勝鬨橋で今度は三橋の行きたいところへついて行くという新珠三千代。ふたりは別方向へ行くバスへ乗るために駆けだすのだ。

どうにもならない暗い映画が、最後はわっと明るくなる。

梅雨の時期に観るのに最高な映画です(しつこい)

影なき声  1958年 日活

監督 鈴木清順 脚本 秋元隆太 佐治乾 原作 松本清張

出演 南田洋子 二谷英明 高原駿雄 宍戸錠 金子信雄 芦田伸介 植村謙二郎

   内藤武敏 柳谷寛 近藤宏 初井言栄 

 

www.nikkatsu.com

 

最近見るものが多いが見て忘れるのも多い(笑。

 

新聞社に勤める二谷英明はある日、二谷の社で電話交換手をしていた南田洋子を見かける。彼女は結婚したらしいが随分前と違って所帯やつれしていた。

 

交換手時代に同じ苗字の違う家に電話をかけた彼女。同じ日、偶然にもその電話をかけた質店の店主が殺され、金品を奪われていたのだが電話にでた男がいた。

交換手をしているので耳はよい彼女だが、警察に呼ばれても犯人の特定にはいたらなかったが彼女のことは新聞に載った。

 

彼女の夫、高原駿雄は勤めていた会社を辞め、宍戸錠となにか事業をやるのだと言っているが、実際は宍戸の使い走りのようなことをしている。しかしそのことを妻には言えない。

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二谷英明 高原駿雄 宍戸錠 競馬場で

賭けマージャンをするために高原・南田のアパートを使うことになる。

そこへ集まる客でカモにするのが薬局経営の金子信雄だが・・・・

 

原作が松本清張なのでおもしろい。南田は不甲斐ない夫、高原駿雄に愛想をつかし、二谷の元へでも行くのかと思ったが、そうじゃなかった。

 

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南田洋子

 

峯品子備忘録

 

二谷が聞き込みに行った先にいる野次馬のひとりの峯品子

 

映画の中の昭和30年代 成瀬巳喜男が描いたあの時代と生活 2007年 草思社  片岡義男

片岡義男の「映画を書く」という本を知って図書館で予約した時に、ついでに借りたこの本。

「映画を書く」よりおもしろく、この本に載っている成瀬巳喜男の映画は全て観ている。

彼は成瀬映画では一番は「銀座化粧と「おかあさん」をあげている。

ところどころ、こんな場面あったっけ?な記述があるが、どうもシナリオから抜き出して書いてあったりするので実際の映画だと成瀬監督が撮らなかったのかもしれない・または私の記憶からすっぽり抜けている・・・のどっちかだ(笑。

 

彼はやたらと何を描きたかったのかがぼんやりしていて淡泊だと繰り返し述べているが

そこが成瀬監督の良いところだと私は思う。不幸のドン底でもなく、かといって幸せの絶頂もない・・・という現実的な生活を描くのは一番うまかった監督だ。

シークエンス?ということもよく言っているが、シークエンスって何?

シークエンス 連続、一続き、etcだそうだ。

 

そして「女が階段を上がるとき」というような映画は嫌いだと書いている。

理由は「つまらない」んだそうだ。

 

そしてかならず経済のことが出てくるともあるが、成瀬映画では当然なのです。

 

私のこのブログで間違ったことを書いても絶対許される!となぜか思った本でした(笑。